そう言われると、女を負うて渡した禅僧が恬然として答えるよう、おれはもう女を卸してしまったが、貴様はまだ女を背負っている!
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自らおのれをごまかしながらしかもおそらくはまじめに、いかに恬然として天職の名を容易に僣することであるか!
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻―― (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
旧のごとくに恬然として坐っておられるのは、威儀あるものとは、すべての人類からは見られえないであろう。
天皇:誰が日本民族の主人であるか (新字新仮名) / 蜷川新(著)
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
将来の日本:02 序 (新字新仮名) / 田口卯吉(著)
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一言にして言えば、地震の予言に耳を傾けるほど人間が聡明であったならば、大火に対してなんの防備もない厖大な都市を恬然として築造して行くほどの愚は、決してしなかったであろう。
べろり舌なめずりをして恬然と答えました。
右門捕物帖:02 生首の進物 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
メフィストフェレス(恬然として。)
ファウスト (新字新仮名) / ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(著)
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恬然、また冷然、否むしろ揚々として自得の色あるはどうか、文壇に著名なる氏が、一身に負える醜名は、小説壇全体の醜声悪名とならざるを期せざるなりと責め、——いわゆる実験とは如何
風葬というのは、犬か鷲に食わせることで、岩山の平らなところへ担ぎあげ、肉は肉、骨は骨にして、石で叩いて手で捏ね、すさまじい肉団子をこしらえ、手も洗わずに恬然たる顔で茶を飲んでいる。
天下に一人のそれを理解してくれる人がなくたって、己はそれに安んじなくてはならない。それに安んじて恬然としていなくてはならない。それが出来ぬとしたら、己はどうなるだろう。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そばには竹屋三位卿、恬然として控えている。啓之助の目と有村の目が、重喜をはずして時々妙にからみあった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)