廿日はつか)” の例文
いま廿日はつかつきおもかげかすんで、さしのぼには木立こだちおぼろおぼろとくらく、たりや孤徽殿こきでん細殿口ほそどのぐちさとしためにはくものもなきときぞかし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
廿日はつか正月も過ぎた或る日の夕方、離れの書斎で新刊の雑誌をめくっているところへ、幸子が何か様子ありげに這入って来てすわったので、不思議そうに顔をもたげると
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
職を致す者は大概正月廿日はつか迄は休みますので、此の金兵衞のうちの内職も十七日迄休みでございます、丁度六日お年越しの朝早く起きて金兵衞は近辺に年始に出ました
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十六日夕より雨ふりいでて廿日はつかに至りてなおやまず。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
花のもとにて廿日はつかへにけり
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
十一月廿日はつか
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
正「アノそれ、いつぞやそれ四年あとの九月の廿日はつか、吉原土手で親方が中へ這入って下すって、侍がエーッてって刀をひッこ抜いた時に助けて下すった親方に違いねえようで」
口惜くちをしげに相手あひてにらみしこともありしがそれは無心むしんむかしなり性來せいらい虚弱きよじやくとて假初かりそめ風邪ふうじやにも十日とをか廿日はつか新田につた訪問はうもんおこたれば彼處かしこにもまた一人ひとり病人びやうにん心配しんぱい食事しよくじすゝまず稽古けいこごとにきもせぬとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頼るものがゞんしねえで、去年の八月廿日はつか此のお屋敷へ尋ねて来て、お父様とっさまやお母様かゝさまはお達者で居るかと御門で聞いて見れば、お国詰になったとの事で、お国は宇都宮だったのがお国替になって
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぐわつ廿日はつか千束神社せんぞくじんじやのまつりとて、山車屋臺だしやたい町々まち/\見得みえをはりて土手どてをのぼりて廓内なかまでも入込いりこまんづいきほひ、若者わかもの氣組きぐおもひやるべし、きゝかぢりに子供こどもとて由斷ゆだんのなりがたきこのあたりのなれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
男「なアにあるじは十日も廿日はつかも帰らぬ事もある、まア上りなさえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かさねて十日とうか半月はんつきさては廿日はつかにつらき卯月うづきすぎたり五月雨さみだれごろのしめりがちのき忍艸しのぶたぐひのきてはかねどいけのあやめのながきおもひにかきらされてそでにもみづかさのさりやすらん此處こゝ別莊べつそう人氣ひとげくなくりの八重やへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)