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屑
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いさぎよ
ふりがな文庫
“
屑
(
いさぎよ
)” の例文
太田
蜀山
(
しよくさん
)
などには殊にそれが多い。漢文の大家である人達、和文を書くことを
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかつた人達にも、さうした『随筆』があつた。
西鶴小論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
情のために道を
迂回
(
うかい
)
し、あるいは疾走し、緩歩し、
立停
(
りゅうてい
)
するは、職務に尽くすべき責任に対して、渠が
屑
(
いさぎよ
)
しとせざりしところなり。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美禰子は軽く
笑
(
わら
)
つた許である。三四郎も
黙
(
だま
)
つてゐる。三四郎は
高飛
(
たかとび
)
に
口
(
くち
)
を
出
(
だ
)
すのを
屑
(
いさぎよ
)
しとしない積である。すると美禰子が聞いた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そこは画家の想像力です。幸太郎君は他の同僚とも度々やっていたから具合が悪くなって、
屑
(
いさぎよ
)
く辞表を出したんです」
変人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
自己の政敵にして且つ迫害者たる総督政府から供給を受けることを
屑
(
いさぎよ
)
しとせずして、自らこれを差入れることとした。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
▼ もっと見る
啻に文人——東洋風の——たるを
屑
(
いさぎよ
)
しとしないのみならず、東洋的の政治家、東洋的の実業家、東洋的の家庭の主人、東洋的の生活者たるを欲しない。
二葉亭四迷:――遺稿を整理して――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
してみると今この令息が、先生の下風に立つて、功名の前途を取るを
屑
(
いさぎよ
)
しとせず。三百代言的弁当料を得るの方針を取るも、乃父に譲らぬ人傑じやないか
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
彼は
強
(
あなが
)
ちに死を避けず、又生を
厭
(
いと
)
ふにもあらざれど、
両
(
ふたつ
)
ながらその値無きを、
私
(
ひそか
)
に
屑
(
いさぎよ
)
しと
為
(
せ
)
ざるなり。当面の苦は彼に死を勧め、半生の悔は
耻
(
はぢ
)
を責めて仮さず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
善良なる家庭の人と交る事を
此方
(
こなた
)
から
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかつた。醜業汚辱の巷は私が唯一の公園であつた。ボオドレエルの詩集「惡の花」は私が無上の
福音書
(
ふくいんしよ
)
であつた。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
匹夫野人も
屑
(
いさぎよ
)
しとしないような醜行陋体を、世間憚らず実現しつつ、詩は神聖恋は神聖を歌って居るところの汚醜劣等の卑人が、趣味がどうの、美がどうのと云うてるのに
家庭小言
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
其が、此役者の事らしく思はれます。旧式の演出をなぞるのを、
屑
(
いさぎよ
)
いことゝせなかつたが、新様の技巧を発見せぬ内に挫けて了うた為、どつちつかずの物になつて居ると聞いて居ました。
芝居に出た名残星月夜
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
博士の高弟高田保馬氏は、例の貧乏道徳論的な趣味も手伝ったのだろう、恩師の影を踏むを
屑
(
いさぎよ
)
しとせずと云って文学部の教授になろうとしない。博士も米田先生がなるまではならなかった。
社会時評
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
いつまでも米国人の同情のみに依頼しているのは新島君の
屑
(
いさぎよ
)
しとするところでない。日本人自ら金を出して自国に必要なる人材を作らねばならぬという考えから基金募集に着せられたらしい。
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
壻は
新宿
(
しんじゅく
)
の
岩松
(
いわまつ
)
というもので、養父の
小字
(
おさなな
)
小三郎を襲ぎ、中村楼で
名弘
(
なびろめ
)
の会を催した。いまだ
幾
(
いくば
)
くならぬに、小三郎は養父の小字を
名告
(
なの
)
ることを
屑
(
いさぎよ
)
しとせず、三世勝三郎たらんことを欲した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いやしくも
潔清
(
けっせい
)
無垢
(
むく
)
の
位
(
くらい
)
に
居
(
お
)
り、この腐敗したる醜世界を
臨
(
のぞ
)
み見て、自ら自身を区別するの心を生ぜざるものあらんや。
僅
(
わず
)
かに資産の厚薄、才学の深浅を以てなおかつ他と
伍
(
ご
)
をなすを
屑
(
いさぎよ
)
しとせず。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかしいやしくも国家の大責任を有するものがああした態度に出たことは、そもそも我国の大に恥とするところである。自分は自分の国ながらも愛想がつきて、その国内に住むを
屑
(
いさぎよ
)
しとせぬというた。
真の愛国心
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼は固より英才を詩文の中に
耗
(
へ
)
らすことを
屑
(
いさぎよ
)
しとせざりき。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
何らの躊躇もなく
屑
(
いさぎよ
)
く出発せらるる事になったのだ。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
昔を忘れたのは余り
褒
(
ほ
)
められないが
幇間
(
ほうかん
)
芸人に伍する作者の仲間入りを
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかったのは万更無理はなかった。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼は自ら手を
下
(
くだ
)
して、この身を殺すさへ
屑
(
いさぎよ
)
からずとまでに
己
(
おのれ
)
を
鄙
(
いやし
)
むなるか、余に
辛
(
つら
)
しと宮は
唇
(
くちびる
)
を
咬
(
か
)
みぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「仕方がない。䰗にした。その結果社長に好い方が当った。斯うなると諦めがつく。それに双幅が片一方欠けたんじゃ価値がなくなる。『両方差上げましょう』と
屑
(
いさぎよ
)
く降参した」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
道徳を論ずるものは文芸を談ずるを
屑
(
いさぎよ
)
しとせず、また文芸に従事するものは道徳以外の別天地に
起臥
(
きが
)
しているように
独
(
ひと
)
りぎめで
悟
(
さと
)
っているごとく見受けますが、
蓋
(
けだ
)
し両方とも
嘘
(
うそ
)
である。
文芸と道徳
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
薩長の士族に随従することを
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかったものは、悉く失意の淵に沈んだ。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
氏も写生をその根柢に置いて、芸術——小説を構成することを
屑
(
いさぎよ
)
しとしない。
雨の日に
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
唯珍らし相な主題、伝襲を守るを
屑
(
いさぎよ
)
しとせぬ態度、私の講義は、かうした意義で、若い人気を、倖に占め得た事もあるに過ぎない。兄の理会のない身びいきも、結句、あり難く思はれて来る。
古代研究 追ひ書き
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
ベンサムは再び長文の書を
上
(
たてまつ
)
って、いやしくも金銭上の価格を有する恩賜は自分の受くるを欲せぬところであるといってこれを返戻し、且つ委員らは必ず氏の意見を聴くことを
屑
(
いさぎよ
)
しとせざるが故に
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
終
(
つい
)
に一回の書画会をだも開かなかったというは市井町人の
似而非
(
えせ
)
風流の売名を
屑
(
いさぎよ
)
しとしない椿岳の見識であろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この
身代
(
しんだい
)
を譲られたりとて、
他姓
(
たせい
)
を
冒
(
をか
)
して
得謂
(
えい
)
はれぬ屈辱を忍ばんは、彼の
屑
(
いさぎよ
)
しと為ざるところなれども、美き宮を妻に為るを得ば、この身代も屈辱も何か有らんと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
尚○高御卒業の折承わり候に、貴君御両親より受け継ぐ資産十万円
有之由
(
これあるよし
)
甚だ突飛な申分のように候が、その十万円を
屑
(
いさぎよ
)
く拝辞し、裸一貫として社会の大学に御入学お勧め申上候。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
模擬は事の大小に関せず男児の
屑
(
いさぎよ
)
しとなさざる処古今東西その説を一にす。此に於てか再び言う商品の模造たる其事小なりと雖も亦以て国の恥辱となすに足る。事に大小あるも恥に軽重なし。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
十日一水を画き五日一石を画くというような
煩瑣
(
はんさ
)
な労作は椿岳は
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかったらしい。が、椿岳の画は書放しのように見えていても実は決して書放しではなかった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それよりも嬉しかったのは佳子さんの方が先に認めて
屑
(
いさぎよ
)
くお辞儀をしてくれたことだった。人の心持は咄嗟に顔を合せて取繕う暇のない時によく分る。エレベーターが好い役をしてくれたのである。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
貧乏しても画を売るを
屑
(
いさぎよ
)
しとしなかった。浅草絵は浅草紙に泥絵具で描いたものにしろ、十二枚一と袋一朱ではナンボその頃でも絵具代の足しにもならなかったは明かである。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「
屑
(
いさぎよ
)
く降参します。頭の好い人には
迚
(
とて
)
も
敵
(
かな
)
いません」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
正直にいったら『浮雲』も『其面影』も『平凡』も皆未完成の
出来損
(
できそこ
)
ないである。あの三作で文人としての名を残すのは
仮令
(
たとい
)
文人たるを
屑
(
いさぎよ
)
しとしなくてもまた遺憾であったろう。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「僕は男だ。嫌われているなら、
屑
(
いさぎよ
)
く諦める」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「それじゃ分りません。
屑
(
いさぎよ
)
く兜を脱ぎます」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「君。取消した上は
屑
(
いさぎよ
)
くし給え」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と新太郎君は
屑
(
いさぎよ
)
く立ち上った。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と言って
屑
(
いさぎよ
)
く立ち上った時
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と
屑
(
いさぎよ
)
い覚悟の程を示した。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
“屑”の意味
《名詞》
(くず)こわれて、つかわなくなったもの。
(くず) なんの役にもたたないもの。
(くず) よいところをとったあとにのこったもの。
(出典:Wiktionary)
屑
漢検準1級
部首:⼫
10画
“屑”を含む語句
鋸屑
木屑
鉄屑
屑屋
藁屑
屑鉄
塵屑
削屑
紙屑買
屑買
火屑
紙屑問屋
紙屑
藻屑
鉋屑
屑籠
糸屑
星屑
紙屑屋
大鋸屑
...