そね)” の例文
熊「ヘンそねめ、おたんちん、だがな八公、若大将にゃア気持が悪くなるてえことよ、阿魔でれ/″\しアがって、から埓口らちくちアねえ」
建てゝやるとえゝ。直ぐ側に親類が並んでると、よけりやよし、惡けりや惡しで、そねんだりけなしたりし合つて煩いものぢや。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
そちをそねみ憎しむ者が、こうがいが失せたといっては猿が盗んだといい、小刀こづか印籠いんろうが紛失したと申しては、猿の仕業しわざよと、つげ口の絶え間がない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
放蕩ほうとう懶惰らんだとを経緯たてぬきの糸にして織上おりあがったおぼッちゃま方が、不負魂まけじだましいねたそねみからおむずかり遊ばすけれども、文三はそれ等の事には頓着とんじゃくせず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
手振り身振りのあざやかさと、眼鼻立めはなだちのキリヽとして調とゝのつたのとは、町中の人々を感心さして、一種のそねみとにくしみとを起すものをすら生じた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そのうち噂は清武一郷に伝播でんぱして、誰一人怪訝せぬものはなかった。これは喜びやそねみの交じらぬただの怪訝であった。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それ以来、セエラをそねんでいる少女達は、何か辱しめてやりたい時に限って、セエラを『宮様プリンセス』といいました。
それゆえにエホバの性格は、怒る神、そねむ神、赦す神、憐む神、愛する神として、表現されるのである。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
無くなると有る奴をそねんで、あんな騒ぎを持ち上げる、あんなのを増長させた日には、真面目まじめかせいでいる者が災難だ、わしは鐚一文びたいちもんもあんなのに出すのは御免だ
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へへへ、雀ら、そねめ嫉め、師匠の側にくっついてるから羨ましいのだろうよ。もそっと、くっつくか」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
十七番は於宮おみやの前なり云々、太閤深くそねみ思はるゝとかや。最後の体、おとなしやかに念佛して
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
霙の中に二時間余りさらされていても、脳病院の裏には人っ子一人来ないのです。そこで始めて、あの電報が、私の幸福をそねんだ悪党の仕業だったと云うことが判りました。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なぜと云ふに、イワンは不断人をそねむ男で、めつたにこんな事を言ふ筈はないからである。
よろしい訳でしたが、どうも世の中というものはむずかしいもので、その人が良いから出世するという風にはきまっていないもので、かえってほかの者のそねみや憎みをも受けまして
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すると、その連中の中に、この事を口惜くやしがり、富五郎の芸をそねむものがあって、ひそか湯呑ゆのみの中に水銀をれて富五郎に飲ませたものがあったのです。そこは素人の悲しさに、湯くみがない。
そねみを買わないように、またこうもいう——「美しい夕陽だ」——。
悪い人にそねまれて殺されたのです。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
国府こう住居すまいには、幾人もの側女そばめがいて、その人々が、めいめい、年景のちょうを争うので、そねみぶかい女同士の争いが、絶えたこともございませぬ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは皆怪訝かいがするとともに喜んだ人たちであるが、近所の若い男たちは怪訝するとともにそねんだ。そして口々に「岡の小町が猿のところへ往く」と噂した。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
死を許す深い仲を、そばで見てそねむのではない、死の運命に落ち行く男女の粗末な命をあざけるのであろう。
自分の不幸を悲しむ心は、往々にして他人の幸福をそねむ心と裏表になっている。みずから希求するような道徳的状態に、自分の心の現実はなっておらず、またなることができない。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
辛抱次第で行々ゆく/\暖簾のれんを分けて遣る、其の代り辛抱をしろ、かりそめにも曲った心を出すなと熟々つく/″\御意見下すって、あんまり私を贔屓ひいきになすって下さいますもんだから、番頭さんがそねんでいやな事を致しますから
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
人を憎んだりそねんだりすることは、日常、人一倍烈しいたちの又八であるが、呪咀じゅそするほどの強い意力は、人を恨むことにすら出来ないたちの又八であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声色屋こわいろやがおひねりを貰うのをうらやんでみたり、新内語りが座敷へ呼び上げられるのをそねんだり、たまにおいらんの通るのを見て口をあいたりしながら、笠鉾かさほこの間を泳いでいましたが
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしまた、浄土門を、呪詛じゅそするがわの他宗の僧は、いっそう、彼を悪罵あくばし、彼をそねんだ。わけても播磨房はりまぼう弁円は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別物でも、おんなじ物でも何でもかまいませんから、そうして置いて上げてくださいまし、そのお稲荷様がそねむなら嫉まして上げようじゃありませんか、ね、そうして置いてお話を
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのこともなく、殿が、御出仕あれば、ちょうを示され、公卿輩くげばらが、そねみ出すと、見えすいた陰謀も、知らぬお顔というのでは、殿が、生殺なまごろしというものだぞやい
こりゃあ必定てっきり、船の中に見込まれた人があるのだ、その見込まれたというのはほかじゃねえ、船ん中でたった一人の女のお客様を、海の神様がそねんでいたずらをなさるに違えねえのだから
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こういう頭脳あたまが、奉公人たちの中にじっていたら、奉公人には目まぐるいであり、憎まれそねまれるのは当然である。——嘉兵衛は、そう思って苦笑をうかべた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんなそねんでそういうことをするんだな、おれが美い女房を持っているものだから、それをけなれがって、寄ってたかって、あんまりひでえことをしやがら、だから承知ができねえ、さあ
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その功を奪われてしまったようなそねみが、胸のどこかでにじみ出していたのだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そねんだりにくがったりしているではございませんか
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……それ程そちは、人のそねみをうけるたちじゃ。ようく心得て人中で働けよ
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)