奥様おくさま)” の例文
旧字:奧樣
のおこゝろせないうちはや小刀こがたなをおりなさいまし。……そんなことをおつしやつて、奥様おくさまは、いまうしてらつしやいます。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此婆に迄頭を下げぬばかりの御依頼おたのみなんで御座います——此婆にしましてが、せんの奥様おくさまにお乳を差上げ、又た貴嬢あなたさまをも襁褓むつきの中からお育て申し
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おくでは殿様とのさま手襷掛たすきがけで、あせをダク/\ながしながら餡拵あんごしらへかなにかしてらつしやり、奥様おくさまは鼻の先を、真白まつしろにしながら白玉しらたまを丸めてるなどといふ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
父は最初、なにかと弁解していたが、やがてカッとなって、しっぺ返しに、『どうやら奥様おくさまのお年のことで』
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
シネクネと身体からだにシナを付けて、語音に礼儀れいぎうるおいを持たせて、奥様おくさまらしく気取って挨拶するようなことはこの細君の大の不得手ふえてで、めてえば真率しんそつなのである。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すそ曳摺ひきずりて奥様おくさまといへど、女はついに女なり当世たうせい臍繰へそくり要訣えうけついわく出るに酒入さけいつてもさけ、つく/\良人やど酒浸さけびたして愛想あいそうきる事もございますれど、其代そのかはりの一とくには月々つき/\遣払つかひはらひに
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
前様めえさま湯治たうぢにござつて、奥様おくさま行方ゆきがたれなくつたは、つひごろことではねえだか、坊様ばうさま何処どこいて、奥様おくさまことづけをたゞがの。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
口頭こうとうをもって、わたしの母は力のおよぶ限りいつ何時なんどきでも奥様おくさまのお役に立ちたいと存じているむねを述べ、十二時過ぎに御光来ごこうらいをお待ちすると伝えるように言いつけた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
いえ/\これさだまる約束やくそく。……しかし、なつかしい。奥様おくさま思切おもひきり、てゝもわたしそばいのちをかけてやうとおつしやる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「どうぞ今後とも、よろしくお力添ちからぞえのほどを、奥様おくさまにも旦那様だんなさまにもお願いしますよ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
⦅あゝ、奥様おくさまわたくしけだものになりたうございます。あいら、みんな畜生ちくしやうで、このさるめが夥間なかまでござりましやう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにね、いまから、二三ねんうだねえ、れこれ四ねんにはるづらか。東京とうきやうからなさつたな、そりや、うも容子やうすたら、容色きりやうたら、そりやうもうつくしわか奥様おくさまがな。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)