大納言だいなごん)” の例文
重喜のすぐ先代をみても、一女は花山院大納言だいなごんの正室に、また鷹司家たかつかさけ醍醐大納言だいごだいなごん中院中将ちゅういんちゅうじょうなどとも浅からぬ姻戚いんせきの仲であった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中山大納言だいなごん菊亭きくてい中納言、千種少将ちぐさのしょうしょう(有文)、岩倉少将(具視ともみ)、その他宰相の典侍てんじ命婦能登みょうぶのとなどが供奉の人々の中にあった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
田舎のおぢいさんのことですから、それが大納言だいなごんの冠であることは知りません。たゞ頭にかぶるものとだけ知つてをりました。
拾うた冠 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
身は、大納言だいなごん藤原道綱ふじわらみちつなの子と生れて、天台座主慈恵てんだいざすじえ大僧正の弟子でしとなったが、三業さんごうしゅうせず、五戒ごかいも持した事はない。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その人にとっては堪えがたいような苦しい雰囲気ふんいきの中でも、ただ深い御愛情だけをたよりにして暮らしていた。父の大納言だいなごんはもう故人であった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大伴おほとも大納言だいなごんにはたつくびについてゐる五色ごしきたま石上いそのかみ中納言ちゆうなごんにはつばめのもつてゐる子安貝こやすがひひとつといふのであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
上赤坂喰違かみあかさかくいちがい、大手よりは二十三丁、そこに広大な屋敷がある。五十五万五千石、紀州名草群なぐさぐん和歌山の城主、三家の次席大納言だいなごん、紀伊頼宣卿よりのぶきょうのお館である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それならばこちらでいうこと、かりにも加賀大納言だいなごんさまお声がかりの御用商人でござんす。あいさつもなく飛び込んできて、何を横柄おうへいなことをおっしゃりますかい」
「いや、突然つかぬことをお聞きするようだけれど、あの、そち大納言だいなごんきたかたな?………」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
正徳四年に成る『山姥帷子記やまうばかたびらき』という文に、天正のころ下見村の富人大納言だいなごんなる者の下僕木棉綿もめんわたを袋に入れてこの日の市に売りに出で、途中に仮睡して市の間に合わなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何しろ、豊臣大納言だいなごん様のもとの奥方に思われて……命がけでお救い申し上げた殿御を、振りつけて、そうして思う存分に、絵に描いた美男美女の御夫婦仲……それに天樹院様のお化粧料が十万石……
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
文麻呂 (りんたる声)大納言だいなごん大伴おおとも宿禰御行すくねみゆき
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
この正月の二十一日には、大坂にいる幕府方の名高い医者を殺して、その片耳を中山大納言だいなごんやしきに投げ込むものがある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
みなくらゐたか身分みぶんたふとかたで、一人ひとり石造いしつくりの皇子みこ一人ひとり車持くらもちの皇子みこ一人ひとり右大臣うだいじん阿倍御主人あべのみうし一人ひとり大納言だいなごん大伴御行おほとものみゆき一人ひとり中納言ちゆうなごん石上麻呂いそのかみのまろでありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
何かの折、すでに太閤たいこうとなった秀吉と、大納言だいなごん家康とが、小牧のいくさ語りに、その日のことを回顧しあって
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命婦は故大納言だいなごん家に着いて車が門から中へ引き入れられた刹那せつなからもう言いようのない寂しさが味わわれた。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今出川いまでがわ大納言だいなごん様の御屋形から、御帰りになる御車みくるまの中で、急に大熱が御発しになり、御帰館遊ばした時分には、もうただ「あた、あた」と仰有おっしゃるばかり、あまつさえ御身おみのうちは
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いかにも」と徳大寺大納言だいなごん家は、それを聞くとまたもやうなずいてみせたが
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
杓子はこれを要するに主婦のスタッフ、大臣・大納言だいなごんなどのしゃくに該当し、また楽長の指揮棒のごときもので、すなわち家刀自の権力のしるしであった。だから女房を山の神と謂うのだとの説もある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
四番よばんめの大伴おほとも大納言だいなごんは、家來けらいどもをあつめて嚴命げんめいくだし、かならたつくびたまつていといつて、邸内やしきうちにあるきぬ綿わたぜにのありたけをして路用ろようにさせました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
帝は命婦にこまごまと大納言だいなごん家の様子をお聞きになった。身にしむ思いを得て来たことを命婦は外へ声をはばかりながら申し上げた。未亡人の御返事を帝は御覧になる。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ついては、大納言だいなごん様(利家)へ、おふた方から、折入っておとりなしの儀を仰げますまいか)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなと出発以来、婦人の身でずっと陣中にある大納言だいなごん簾中れんちゅうも無事、山国親子も無事、筑波つくば組の稲右衛門、小四郎、皆無事だ。一同は手分けをして高島陣地その他を松明たいまつで改めた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平家へいけ高平太たかへいだ以下皆悪人、こちらは大納言だいなごん以下皆善人、——康頼はこう思うている。そのうぬれがためにならぬ。またさっきも云うた通り、我々凡夫は誰も彼も、皆高平太と同様なのじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
加賀の大納言だいなごん利家としいえから二百石ぐらいの仕送りをうけているのだと人はうらやんでよく噂にいう。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はその晩は父の大納言だいなごんの家へ行って泊まろうと思っていたのです。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大納言だいなごんに任ぜられたのはつい先頃であったが、近くまた右大将に官位を進められた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
使いは「——吉田ノ大納言だいなごん定房卿さだふさきょうから」と告げたのみで、姿を消した。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かねて伊勢衆は、北畠大納言だいなごん殿という長袖ながそでの家中、およそは柔弱ぞろいならんと存じていたが、この一城の堅固な御意志、織田方にても、さすがに伊勢にも武士ありと、みな感じ合って、お噂は高うござる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)