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多
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おほく
年頃廿一二の女
惣身に
打疵多して
殺候樣子に相見申候尤も
衣類は
紬縞小袖二枚を着し
黒純子の
龍の
模樣織出の丸
帶を
締面部眉左の方に
古き
疵の
痕相見候
「
南無三。」と
私は
逡巡した。
多の
白晢人種の
間に
人種の
異つた
吾等は
不運にも
彼等の
眼に
留つたのである。
私は
元來無風流極まる
男なので
此不意打にはほと/\
閉口せざるを
得ない。
なし是より三人
連にて丸龜城下なる後藤半四郎の方へと
到りけり又後藤方にては此日は
丁度稽古日にて
多の
門弟聚り
竹刀の
音懸聲等
喧びしく今
稽古眞最中なる所へ三人は
玄關に
懸り
案内を
其他面白い
事も
隨分あつた。
音樂會の
翌々日の
事で、
船は
多島海の
沖にさしかゝつた
時、
多の
船客は
甲板に
集合つて
種々の
遊戯に
耽つて
居つたが、
其内に
誰かの
發起で
徒競走が
始つた。