トップ
>
呟
>
つぶ
ふりがな文庫
“
呟
(
つぶ
)” の例文
音はしずかにしずかに
呟
(
つぶ
)
やくようにふるえています。けれどもいったいどっちの方か、わたくしは呆れてつっ立ってしまいました。
ポラーノの広場
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
弁之助はその夜、自分の寝所へはいって燈を消すと、闇の空間をみつめながら、
呟
(
つぶ
)
やくような声で「お母さま」と、呼んでみた。
日本婦道記:おもかげ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
はじめのうちは、往来のあとさきを見廻して、だれもいないのを見とどけてから、こんにゃはァ、と小さい声で、そッと
呟
(
つぶ
)
やいたものだった。
こんにゃく売り
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
呟
(
つぶ
)
やいたまま、うっとりとして、三叉の銀波、
佃
(
つくだ
)
の
芦
(
あし
)
の洲などに眼を取られて、すぐ桟橋へ上がろうともしなさらない。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
呟
(
つぶ
)
やいた。
銃弾
(
たま
)
に当った時計の針が一時半で止まっていたらしい。刑事がそうして死体を調べている間に、警部はボーイを招いて訊問を初めていた。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
と
呟
(
つぶ
)
やいた。彼の周囲のものも、
僅少
(
きんしょう
)
な
家禄
(
かろく
)
放還金をみんな老爺さんの硫黄熱のために失われてしまっているのだということを、あたしたちも段々に
悟
(
さと
)
った。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は腹の中でこう
呟
(
つぶ
)
やいた。断然面会を謝絶する勇気を
有
(
も
)
たない彼は、下女を見たなり
少時
(
しばらく
)
黙っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「だめだ! まだあの高慢
狂気
(
きちがい
)
が
治
(
なお
)
らない。梅子さんこそ
可
(
い
)
い
面
(
つら
)
の皮だ、フン人を馬鹿にしておる」と薄暗い
田甫道
(
たんぼみち
)
を
辿
(
たど
)
りながら
呟
(
つぶ
)
やいたが胸の中は余り
穏
(
おだやか
)
でなかった。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
呉羽之介は今更ながら、自分の美貌に気がついて、吐息と一緒に心の奥で
呟
(
つぶ
)
やいたのであります。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
霧がぴちゃぴちゃ
呟
(
つぶ
)
やきながら、そそいで来ると、何とも言われない
陰欝
(
メランコリイ
)
な暗い影が、頭蓋骨の中にまでさして来る、かとおもうと、霧が散って冴えた空が、ひろがるときは
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
のように
呟
(
つぶ
)
やきつつ、キョロキョロと左右を見廻わさずにはおられなくなった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
村でも「佛樣」と仇名せらるる好人物の小使——忠太と名を呼べば、雨の日も風の日も、『アイ』と返事をする——が、厚い脣に何かブツ/\
呟
(
つぶ
)
やき乍ら、職員室に這入つて來た。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そうでなかった日にや、おれもハイネのようにこう
呟
(
つぶ
)
やきながら
嘆
(
なげ
)
いてばかりいなきゃなるまい。——おまえの眼の菫はいつも綺麗に
咲
(
さ
)
くけれど、ああ、おまえの心ばかりは
枯
(
か
)
れ果てた……
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「ああ、もう行ッてしまッた」と、
呟
(
つぶ
)
やくように言ッた吉里の声は顫えた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
それでは私たちはそのために父に
呟
(
つぶ
)
やく感情を抱いているか? 否。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
僕はこういう種類のことを次々と胸の中で
呟
(
つぶ
)
やく。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
卯平
(
うへい
)
は
口
(
たゞ
)
獨
(
ひと
)
りで
呟
(
つぶ
)
やくやうにぶすりといつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
母は飯を食べなかった事を何度も
呟
(
つぶ
)
やいた。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
こう
呟
(
つぶ
)
やき出すものなどもあった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
呟
(
つぶ
)
やける「夢」のくちばみ。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「こういう推定は危険なんですが」と、やがて医者はひじょうな努力を要するもののように、重苦しい
呟
(
つぶ
)
やき声で云った
四年間
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ね、あたしどんな
所
(
とこ
)
へ行くのかしら。」一人のいてふの女の子が空を見あげて
呟
(
つぶ
)
やくやうに云ひました。
いてふの実
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
洗面器のことで
呟
(
つぶ
)
やいていた
年増
(
としま
)
の女中は杉戸の外にしゃがんでいたが、秋田さんが気附いたように
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「なるほどこいつは
益々
(
ますます
)
解りにくいぞ」と松木は
呟
(
つぶ
)
やいて岡本の顔を穴のあくほど
凝視
(
みつめ
)
ている。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と、
呟
(
つぶ
)
やきながら、大七は、
朱
(
あか
)
い横笛を持って、城下の辻で、ひゃらひゃらと吹き初めた。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この時露月は
漸
(
よう
)
やく最後の一
刷毛
(
はけ
)
を入れてわれながら、満足したように画面を眺めましたが、やがて疲れ切ったように絵筆をぽんとほうり出して、うめくように
呟
(
つぶ
)
やきました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それを見ると田村氏と刑事部長は顔を見合せて感嘆した様に「似ている」と
呟
(
つぶ
)
やいた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女は健三に聞えよがしに
呟
(
つぶ
)
やいた。健三は死んじまえといいたくなった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女中奉公しても月に賄附で四圓貰へるから、お定さんも一二年行つて見ないかと言つたが、お定は唯俯いて
微笑
(
ほゝゑ
)
んだのみであつた。
怎
(
どう
)
して私などが東京へ行かれよう、と胸の中で
呟
(
つぶ
)
やいたのである。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
えいくそっ、権衛殿はこう
呟
(
つぶ
)
やかれた、こいつは代官より欲が深そうだ、残念だが十両ふんぱつしなければならんだろう
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(たうとう
窂
(
らう
)
におれははひつた。それでもやつぱり、お日さまは外で照つてゐる。)山男はひとりでこんなことを
呟
(
つぶ
)
やいて無理にかなしいのをごまかさうとしました。
山男の四月
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
鉄ぶちの眼鏡をかけたその若い牧師さんが、小さな本を開いて、なんだかブツブツ言うと、みんな頭を垂れていて、
終
(
しま
)
いにアーメンと
呟
(
つぶ
)
やいて額と胸とに三度十字をきる。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「何のことだか解らない!」と綿貫は
呟
(
つぶ
)
やくように言った。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「たしかにそのほかに方法はない」眉をしかめながら、半三郎はこう
呟
(
つぶ
)
やいた。「それで
破綻
(
はたん
)
が避けられるなら、それだけの努力を払う値打ちはある」
合歓木の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(とうとう
窂
(
ろう
)
におれははいった。それでもやっぱり、お日さまは外で照っている。)山男はひとりでこんなことを
呟
(
つぶ
)
やいて無理にかなしいのをごまかそうとしました。
山男の四月
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と
呟
(
つぶ
)
やきくらしていた。ある夜、石井氏と一緒に綾之助のかかる席へゆくと、綾之助は石井氏を木戸口に待ち迎えていて、氏の好みを聞いてその夜の語りものを改ためたりした。
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
信三はそう
呟
(
つぶ
)
やいた。なんどもそう思ったのだが、待っている昌子の姿を思いだすとどうにも帰れなかったのだ
四年間
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おれはあした戦死するのだ。」大尉は
呟
(
つぶ
)
やきながら、
許嫁
(
いひなづけ
)
のゐる杜の方にあたまを曲げました。
烏の北斗七星
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
あの寝ざめの、麗音をなつかしみながら私は
呟
(
つぶ
)
やいた。町中に生れ育った私は、
籠
(
かご
)
に飼われない小禽が、障子のそとへ親しんで来てきかせてくれる
唄声
(
うたごえ
)
を、どれほどよろこんでいたかしれない。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
歯がみをしてから
呟
(
つぶ
)
やいた、「人にさんざん気をもませておいて、ゆうべは
木偶
(
でく
)
を抱かせるし、今日はまたあんな、——ああくやしい、どうしてやろう」
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おれはあした戦死するのだ。」大尉は
呟
(
つぶ
)
やきながら、
許嫁
(
いいなずけ
)
のいる杜の方にあたまを曲げました。
烏の北斗七星
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それでも不安心なところもあったかして、その隣地の背面の
空地
(
あきち
)
を買っておこうと
呟
(
つぶ
)
やいていた。けれど誰れがそのおり須磨子の心のどん底に、死ぬことを考えてもいたと思いつく道理はなかった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それが本当の大三郎さまなのだ、あきつはそっと心のなかで
呟
(
つぶ
)
やいた。お母上もあの子は思い遣りの深い、細かいところへよく気がつく性質だと仰しゃった。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「もう
藁
(
わら
)
のオムレツが出来あがった
頃
(
ころ
)
だな。」と
呟
(
つぶ
)
やいてテーブルの上にあった
革
(
かわ
)
のカバンに白墨のかけらや講義の
原稿
(
げんこう
)
やらを、みんな
一緒
(
いっしょ
)
に投げ込んで、
小脇
(
こわき
)
にかかえ
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と、
呟
(
つぶ
)
やきながら、もいちど、せいぜい小猫らしくやって見た。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と
呟
(
つぶ
)
やいた。彼の
足許
(
あしもと
)
へ身を寄せるようにして、色紙で
貼交
(
はりま
)
ぜの
手筐
(
てばこ
)
のような物を作っていたさえは
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ところが
獅子
(
しし
)
は白熊のあとをじっと見送って
呟
(
つぶ
)
やきました。
月夜のけだもの
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
誰いうとなく
呟
(
つぶ
)
やきかわすと
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「間に合うかしら、間に合うかしら」と
呟
(
つぶ
)
やきながら、こんどこそ狂人そのままの勢いで、——三人の悪漢は「へえお疲れさま」と、番所へ声をかけながら右へ曲がる
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なつかしさうに
呟
(
つぶ
)
やいた。
楢ノ木大学士の野宿
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
呟
漢検1級
部首:⼝
8画
“呟”を含む語句
呟々
打呟
呟呻
呟呻許
呟払
御呟