含蓄がんちく)” の例文
久吉の言葉は妙に含蓄がんちくがありますが、小判を一枚持つて居たからと言つて縛る譯にも行かず、平次は其儘隣の浪人の家へ行きました。
「近頃含蓄がんちくのある教えを承った。この後も、何かと指示を与えられよ。曹操も業を遂げたあかつきには必ず厚くお酬いするであろう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日曜は一日ゴルフで重役連中に魚交ととまじりをする。奥さんが社交の修業を必要とするように言ったのもその辺に含蓄がんちくがある。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
という句はむしろ実況であるが、何だか殺気があって含蓄がんちくが足りなくて、口に浮かんだ時からすでに変な心持がした。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それはおかしさとかなしさと、あたたかさが同時にこみあげてくるような、そしてもっと含蓄がんちくのあることばであった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
流暢りゅうちょうさの代りに、絶対に人に疑をいだかせぬ重厚さを備え、諧謔かいぎゃくの代りに、含蓄がんちくに富む譬喩ひゆつその弁は、何人なんぴとといえども逆らうことの出来ぬものだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
枕許まくらもとに吹き入れて来たという意であるが、表現の技巧が非常に複雑していて、情趣の深いイメージを含蓄がんちくさせてる。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
しかして進化というはすでに発芽すべき力がもともと含蓄がんちくされているものが、漸々ぜんぜんに働くことを称するとおなじく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
当時とうじ言語ことば含蓄がんちくふかいともうしますか、そのままではとてもわたくしどものちかぬるところがあり、わたくしとしては、不躾ぶしつけりつつも、何度なんど何度なんどいかえして
してれば原始虫げんしちゅうごと我々われわれに、せめて苦難くなんちょうものがかったならば、まった含蓄がんちく生活せいかつとなってしまう。からして我々われわれ病気びょうきするのはむし当然とうぜんではいか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
従ってそこには弟子たちの人物や性格、その問答の行なわれた境遇などが、ともに把捉はそくせられている。それが言葉の意味の裏打ちとなり、命題に深い含蓄がんちくを与えることになる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
個性的な含蓄がんちくのふかいために、早くから公衆に対して、成熟した巧妙な腕を見せていた。
畢竟ひっきょうこれを率ゐて行く先輩がないのと少年に学問含蓄がんちくがないのとに基因するのであらう。幾多の少年に勧告する所は、なるべく謙遜に奥ゆかしく、真面目に勉強せよといふ事である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そこに何物も達しがたい高い芸術的な匂いが含蓄がんちくされてあると思います。
無表情の表情 (新字新仮名) / 上村松園(著)
この思想中には後日ごじつの将軍たる、徳川政府最後の将軍慶喜よしのぶ公すら含蓄がんちくしたるものにして、烈公、藤田の徒は申すにも及ばず、その散じて、天下の尊攘家を喚起し、その流れて薩摩に入りたるもの
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「無用の用」という言葉になかなかの含蓄がんちくが感ぜられる。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この言葉は一応奇矯ききょうに聞こえるが、静かに考えると、非常に含蓄がんちくの深い、適切無比な形容詞であることに気がつくだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
同時に秀才だから方々から狙われているという含蓄がんちくもあった。早くお定めにならないと御損をしますということになる。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だが、夏侯惇は、曹操の言なので、何か含蓄がんちくのある命令にちがいないと呑みこんでしまい
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる姿と思う。動けばどう変化するか、風雲ふううん雷霆らいていか、見わけのつかぬところに余韻よいん縹緲ひょうびょうと存するから含蓄がんちくおもむき百世ひゃくせいのちに伝うるのであろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
プシキンはさきだつて非常ひじやう苦痛くつうかんじ、不幸ふかうなるハイネは數年間すうねんかん中風ちゆうぶかゝつてしてゐた。してれば原始蟲げんしちゆうごと我々われ/\に、せめ苦難くなんてふものがかつたならば、まつた含蓄がんちく生活せいくわつとなつてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
含蓄がんちくせしむることが出来ると同じである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「そこに皮肉があるじゃないか? 君達年寄は禿げていて見っともないから、僕達若いものは将来禿げないようにして見せるという挑戦的ちょうせんてき含蓄がんちくがある」
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お紋のハキハキしたのに比べて、喰ひ足らなさはあるでせうが、この含蓄がんちくの多い柔順さと、成熟しきつた肉體が案外夫の溺愛の的だつたかもわかりません。
「どうか先生の含蓄がんちくをもって、不備な点は、遠慮なく指摘してもらいたい」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒屋の亭主藤七は氣の毒さうには言つて居りますが、伜又吉の非業の死を、隣りの千本家のせゐにして居るらしく、なか/\に含蓄がんちくの深いことを言ふのです。
庶民たちの臆測おくそくにも、時によって、ばかにならない含蓄がんちくがある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白粉おしろいつ氣のない、眞珠のやうに含蓄がんちくのある顏の色、細い長い眼、低くて少し太い聲に特色があります。
もう二十七八にもなるでしょうが、若くて、粋で、美しくて、何となく心ひかれる含蓄がんちくがあります。
もう二十七八にもなるでせうが、若くて、意氣で、美しくて、何となく心ひかるゝ含蓄がんちくがあります。
小八郎は含蓄がんちくの深い笑ひを殘して、平次の思惑おもわくに構はず、サツと向うへ行つてしまひました。
小八郎は含蓄がんちくの深い笑いを残して、平次の思惑に構わずサッと向うへ行ってしまいました。
平次はうながしました。一向つまらない話ですが、お靜の語氣には妙に含蓄がんちくがあるのです。
お春の言葉は含蓄がんちくがありました。母親だけが感ずる恐怖、娘の命が狙はれてゐるといふ、手のつけやうのない豫感、お春はそれを言葉を超えて、平次に感じさせようとするのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次は含蓄がんちくの多いことを言つて、伊賀屋の女房の顏を見るのでした。
平次は含蓄がんちくの多いことを言って、伊賀屋の女房の顔を見るのでした。
少し脂下やにさがりに銀煙管を噛んで、妙に含蓄がんちくの多い微笑を送ります。
下男猪之松は、何やら含蓄がんちくの深い笑ひをらしました。
平次の言葉には、何やら深い含蓄がんちくがありました。
平次の言葉には、何やら深い含蓄がんちくがありました。
友吉の言ふことは、なか/\含蓄がんちくがあります。
友吉の言うことは、なかなか含蓄がんちくがあります。
圓三郎の話はなか/\の含蓄がんちくのあるものです。
何と言ふ簡單な、が含蓄がんちくの多い言葉でせう。
八五郎の話は、妙に含蓄がんちくがありさうです。
平次の話は、含蓄がんちくの深いものです。
平次の話は、含蓄がんちくの深いものです。
平次の言葉には含蓄がんちくがあります。
平次の言葉には含蓄がんちくがあります。
平次の答には含蓄がんちくがあります。