仔馬こうま)” の例文
そう言えば、かささぎは、弾機ばね仕掛けのような飛び方をして逃げて行く。七面鳥は生垣のなかに隠れ、初々ういういしい仔馬こうまかしわ木蔭こかげに身を寄せる。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
私の父は歓迎の意志表示でせうか、口汚く山羊やぎや豚を追ひ立てて、そのかはりうまやから自慢の仔馬こうまを引き出して先生に見せました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「いいとも。お前たちはみんなぼく大佐たいさにする。ぼくんだら、きっとかけて来ておくれ」といいました。仔馬こうまよろこんではねあがりました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
母馬おやうまうるささにがつかりして歸路きろにつきました。まちはづれまでくると、仔馬こうまきふあるきだしました。はやくいへへかへつておちゝをねだらうとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
田地もあったが、種馬を何十匹となく飼っておいて、それから仔馬こうまを取って、馬市へも出せば伯楽ばくろうが買いにも来る——。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あいつのこと考えてるうち、うっかり足をすべらしちゃっただ。話さなかっただが、あいつあれでも仔馬こうま産ませやがってな。邑内の江陵屋んとこの雌馬にさ。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
貢君は余等の毛布や、関翁から天幕へみやげ物の南瓜とうなす真桑瓜まくわうり玉蜀黍とうもろこし甘藍きゃべつなぞを駄馬だばに積み、其上に打乗って先発する。仔馬こうまがヒョコ/\ついて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
木茅きかやに心を置く落人おちうどのつもりでいるのか、それとも道草を食う仔馬こうまの了見でいるのか、居候から居候へと転々して行く道でありながら、こし方も、行く末も
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あゝ、ロバァト! 今日は。よく憶えてゐますよ。あなたはヂョウジアァナさんの栗毛くりげ仔馬こうまに時々私を
が、蜘蛛というのは当たらないかもしれない。若松屋惣七は、蜘蛛のように陰険ではないのだ。人物は、むしろ仔馬こうまのようにほがらかなのだ。ただ剃刀かみそりみたいに切れる。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
仔馬こうまの様に精悍せいかんで、すらりと引き締った肉体を持ち、あるものは、蛇の様に妖艶ようえんで、クネクネと自在に動く肉体を持ち、あるものは、ゴムまりの様に肥え太って、脂肪と弾力に富む肉体を持ち
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仔馬こうま牝馬めうまを曳いて人ごみの真ん中を通って来たので、往来の人たちは市の両側へ避けたが、頭巾ずきんのうえに塗笠ぬりがさをかぶって、眼もとばかり出して歩いて来た武家は、けることを知らなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水槽みづぶねの水に先を争うて首を突き出す牧場の仔馬こうまのやうでもあつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
友がは小米ざくらのこぼれ花けふあはれなり仔馬こうま跳ねゐて
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やがてまちにつきました。仔馬こうまにぎやかなのにはじめはびつくりしてゐましたが、なにをみてもめづらしいものばかりなので、うれしくつてたまりませんでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
またある時、須利耶さまは童子をつれて、馬市うまいちの中を通られましたら、一ぴき仔馬こうまちちんでおったと申します。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かささぎは、それでも、弾機ばね仕掛けのような飛び方をして逃げて行く。七面鳥は生籬いけがきの中に隠れている。そして、弱々しい仔馬こうまが、柏の木蔭に身を寄せている。
後から仔馬こうまがひょこ/\いて行く。時々道草を食っておくれては、あわてゝけ出しおっついて母馬はは横腹よこはらあたまをすりつける様にして行く。関翁と余と其あとから此さまを眺めつゝ行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「馬から落ちたの。お父さんは馬マニヤなの。いい種馬にかけて、仔馬こうまから育てて競馬に出そうというんだけれど、一度も成功したことないわ。何しろ子供はどうなっても馬の方が可愛かわいいんだそうだから。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
栗毛くりげ仔馬こうま走らせし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この時こうから仔馬こうまが六ぴき走って来てホモイの前にとまりました。その中のいちばん大きなのが
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
の夏休み中で、一番面白おもしろかったのは、おじいさんと一緒いっしょに上の原へ仔馬こうまれに行ったのと、もう一つはどうしても剣舞けんばいだ。とりの黒いかざった頭巾ずきんをかぶり、あのむかしからの赤い陣羽織じんばおりた。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「驢馬はってません。ただ仔馬こうまならあります。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)