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こうさく
ふりがな文庫
“
交錯
(
こうさく
)” の例文
ああできたらさぞ好かろうという感じと、いくら年をとってもああはやりたくないという感じが、彼女の心にいつもの通り
交錯
(
こうさく
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一つの文字を長く
見詰
(
みつ
)
めている中に、いつしかその文字が解体して、意味の無い一つ一つの線の
交錯
(
こうさく
)
としか見えなくなって来る。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
見上げると、天井に
交錯
(
こうさく
)
した
丸太棒
(
まるたんぼう
)
の上を、さいぜんの笑い声のぬしが、一匹の
黒猫
(
くろねこ
)
のように、眼にも見えぬ早さで走っていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
交錯
(
こうさく
)
した十字火の中に、彼女は微笑んではいっていった。矜持! そういった気持が動いた。自分の商品の価値を知ってる商人の誇だ。
操守
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
頑丈な
棟木
(
むねぎ
)
が
交錯
(
こうさく
)
して、奇怪な空間を
形作
(
かたづく
)
っている。と、十間ばかりの彼方に、
正
(
まさ
)
しく俯臥せに倒れている屍骸が認められた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
(合唱につれて、背後の灰色の上下幕に様々な色彩の光が、異様な幻想風のイメージとなって
交錯
(
こうさく
)
し、やがて一面に
鮮
(
あざや
)
かな緑が占領して行く)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
たいていは、
交錯
(
こうさく
)
している枝をつたって、一本の木から、隣りの木へと渡って行くので、地面へ降りなくても、かなりの移動が出来るようである。
ウィネッカの秋
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
どこかにミールダアル城の昔時を
偲
(
しの
)
ばせるものが多分にあり、地下の通路はさながら
迷路
(
メエズ
)
のように
交錯
(
こうさく
)
している。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
栄転にはちがいないが、任地の
南昌
(
なんしょう
)
へ行ってみると、ずっと文化は低いし、土地には、新任の太守に服さない勢力が
交錯
(
こうさく
)
しているし——もっと困った問題は
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朝倉先生は、みんなの緊張した視線の
交錯
(
こうさく
)
の中でこたえた。わざとらしくない、おちついた答えだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それでも時には、前の坊主山の頂きが白く曇りだして、羽毛のような雪片が互いに
交錯
(
こうさく
)
するのを恐れるかのように
条
(
すじ
)
をなして、昼過ぎごろの空を斜めに吹下ろされた。……
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
なるほど、小屋の
隅々
(
すみずみ
)
から、母親たちの
啼
(
な
)
き声が
交錯
(
こうさく
)
し、授乳の時刻を告げている。それが、にんじんの耳には
一律単調
(
いちりつたんちょう
)
であるが、仔羊にとってはどこかに違いがあるのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
この病気特有の喜怒哀楽の感情が
交錯
(
こうさく
)
して、
持前
(
もちまえ
)
の重吉らしくもない
癇癪
(
かんしゃく
)
に青筋を立て、自分の言葉の通じないことよりも、実枝がそれを聞き分けてくれないことの方に腹を立てて
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
この二つのものは、まことに現代政治の
交錯
(
こうさく
)
し背反する二大要因である。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
その車は外を青「ペンキ」にて塗りたる木の箱にて、中に乗りし十二人の客は
肩
(
かた
)
腰
(
こし
)
相触れて、膝は
犬牙
(
けんが
)
のように
交錯
(
こうさく
)
す。つくりつけの木の
腰掛
(
こしかけ
)
は、「フランケット」二枚敷きても膚を破らんとす。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
透明
(
とうめい
)
清澄
(
せいちょう
)
で黄金でまた青く
幾億
(
いくおく
)
互
(
たがい
)
に
交錯
(
こうさく
)
し光って
顫
(
ふる
)
えて燃えました。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
歩兵の列は平原のうちにうねり、狂うがごとく疾駆する騎兵の列は地平を過ぎる。心乱れたその
瞑想
(
めいそう
)
の旅客は見る、サーベルのひらめきを、銃剣の火花を、破烈弾の火災を、雷電の驚くべき
交錯
(
こうさく
)
を。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
音楽が
交錯
(
こうさく
)
して、聞こえて来る。
五彩
(
ごさい
)
の照明の美しさ、それは建物を照らしているだけではなく、大空にも照りはえて
虹
(
にじ
)
の国へいったようだ。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
テントのすぐ下には、
荒縄
(
あらなわ
)
でくくった
丸太棒
(
まるたんぼう
)
が縦横無尽に
交錯
(
こうさく
)
していた。その丸太棒の一本に、ポッツリと
雀
(
すずめ
)
のようにとまっている人の姿があった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おのずから誰が総指揮官かわからないような空気が
醸
(
かも
)
された。命令は二途どころでない。諸所の部将から発しられる。そして時には、その
交錯
(
こうさく
)
から混乱が起ったりした。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
光の
交錯
(
こうさく
)
は決して闇の原因にはならない。それどころか、それはあらゆる場所から闇を退散させる力なのだ。人間は、だから、それぞれの位置において真実であればいい。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
三には彼の
真面目
(
まじめ
)
さが疑がわれた。反抗、
畏怖
(
いふ
)
、軽蔑、不審、馬鹿らしさ、
嫌悪
(
けんお
)
、好奇心、——雑然として彼女の胸に
交錯
(
こうさく
)
したいろいろなものはけっして一点に
纏
(
まと
)
まる事ができなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして姉妹にまで
体裁
(
ていさい
)
を作らねばならない境遇の中で、気ばかりつかって暮しているカヤノに、同情と反感の
交錯
(
こうさく
)
した気持で、背中をどやしつけてやりたいようなもだもだしたものを持たされた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
彼はこの眼まぐるしい色彩の
交錯
(
こうさく
)
に、頭もしびれ、眼もくらんで、もう恐怖を感じる力さえ失っていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
二つの真黒な怪球は、二条の赤い光を宙に
交錯
(
こうさく
)
させつつ、もつれあうようにクルクルと廻りだした。
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
奥殿と中殿とのあいだを渡してある
唐橋
(
からはし
)
の
欄
(
らん
)
に立って望むと、無数の舞扇を重ねたような天守閣の五層の
廂
(
ひさし
)
と、楼門の
殿閣
(
でんかく
)
の
大廂
(
おおびさし
)
とは、見事な曲線を
宙
(
ちゅう
)
に
交錯
(
こうさく
)
させている。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「運命」と「愛」と「永遠」との
交錯
(
こうさく
)
の中に描こうとしているかぎり、私は、この半年ばかりの彼の生活についても、そう無造作に筆を
省
(
はぶ
)
くわけにはいかなかったのである。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
やみと光りの
交錯
(
こうさく
)
のなかで先生と奥さんは歌いかわしていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
すると、通路の天井の
交錯
(
こうさく
)
した
梁
(
はり
)
の上に、一人の男がひっかかって、長くのびているではないか。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
威圧
(
いあつ
)
されるような気持ちと、よりかかりたいような気持ちとがたえず
交錯
(
こうさく
)
していたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
この無気味の因をなすものは、前にいったような、複雑極まる勢力と勢力の
交錯
(
こうさく
)
にあるのであって、これは戦争が行われているときよりも、人間の心を悪くし、また疲らせた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、星の光と草履の音との
交錯
(
こうさく
)
する中を、默りこくって老人のあとについて歩いた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
封をひらいて、読み下していた官兵衛の
面
(
おもて
)
には、驚きと、涙とが、
交錯
(
こうさく
)
していた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
水平線が、きらきらと、
交錯
(
こうさく
)
した水車の車軸のようにみえる。奇妙なことだ。
三重宙返りの記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
派手
(
はで
)
模様の
袂
(
たもと
)
や藤いろの
褄
(
つま
)
、
緋
(
ひ
)
のけだしやら花色の
股引
(
ぱっち
)
やら、
塗
(
ぬ
)
りの下駄だの
紅緒
(
べにお
)
の
草履
(
ぞうり
)
だのが風にそそられて日傘の下にヒラヒラと
交錯
(
こうさく
)
し、列に
挟
(
はさ
)
まれた
駕
(
かご
)
一
挺
(
ちょう
)
、一人の美女がのっている。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不意に
消魂
(
けたたま
)
しい女の叫びが、如意輪寺裏の
幽寂
(
ゆうじゃく
)
の梅林につんざいた。——もう散り際にある
脆
(
もろ
)
い
梅花
(
うめ
)
は、それに
愕
(
おどろ
)
いたかのようにふんぷんと
飛片
(
ひへん
)
を舞わせて、
香
(
かぐ
)
わしい夕闇に
白毫
(
はくごう
)
の光を
交錯
(
こうさく
)
させた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たちまち鳴りはためいた
雷
(
いかずち
)
が、かれの耳もとをつんざいた一せつな、
下界
(
げかい
)
にあっては、ほとんどそうぞうもつかないような
朱電
(
しゅでん
)
が、ピカッピカッと、まつげのさきを
交錯
(
こうさく
)
したかと思うまもあらばこそ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“交錯”の意味
《名詞》
交 錯(こうさく)
幾つかのものが入り交じること。
(出典:Wiktionary)
交
常用漢字
小2
部首:⼇
6画
錯
常用漢字
中学
部首:⾦
16画
“交錯”で始まる語句
交錯線