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鬩
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せめ
ふりがな文庫
“
鬩
(
せめ
)” の例文
見ると
幸
(
さいわい
)
小家の主人は、まだ眠らずにいると見えて、
仄
(
ほの
)
かな
一盞
(
いっさん
)
の
燈火
(
ともしび
)
の光が、戸口に下げた
簾
(
すだれ
)
の隙から、軒先の月明と
鬩
(
せめ
)
いでいた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
されば
他国
(
かのくに
)
の
聖
(
ひじり
)
の教も、ここの
国土
(
くにつち
)
にふさはしからぬことすくなからず。
且
(
かつ
)
八三
詩
(
し
)
にもいはざるや。
八四
兄弟
牆
(
うち
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐとも
外
(
よそ
)
の
侮
(
あなどり
)
を
禦
(
ふせ
)
げよと。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
なんでも片方が「本家」で片方が「元祖」だとか言って長い年月を
鬩
(
せめ
)
ぎ合った歴史もあったという話を聞いたことがある。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
矛盾と矛盾が複雑に
鬩
(
せめ
)
ぎ合つてゐた。それを整理することは困難であつた。何から手を著けていゝか判らなかつた。
芭蕉と歯朶
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
我が先へ
汝
(
そなた
)
は後にと兄弟争ひ
鬩
(
せめ
)
いだ末、兄は兄だけ力強く弟を終に投げ伏せて我意の勝を得たに誇り高ぶり、急ぎ其橋を渡りかけ
半途
(
なかば
)
に漸く到りし時
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
下の方から見る見るうちに
涌
(
わ
)
いて来て、それが互に
鬩
(
せめ
)
ぎ
合
(
あ
)
ってはどちらとへともつかず動かされながら、そこいら一面を物凄いほど立ちこめ出していた。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
が、その顔にはお吉に対する、愛慕の心とそれに抗する、義理心とが
鬩
(
せめ
)
ぎ合い、苦悶となって表われていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かつまた、文脩まれば武備もしたがって起り、仏人、
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
げども外その
侮
(
あなどり
)
を
禦
(
ふせ
)
ぎ、一夫も報国の大義を誤るなきは、けだしその
大本
(
たいほん
)
、脩徳開知独立の文教にあり。
学校の説:(一名、慶応義塾学校の説)
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その時分、私の胸には失望と愛慕と、互に矛盾した二つのものが
交
(
かわ
)
る交る
鬩
(
せめ
)
ぎ合っていました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は私の内部に絶えず
鬩
(
せめ
)
ぎ合い、
啀
(
いが
)
み合い、相反対し、相矛盾する多くの心を
見出
(
みいだ
)
すのである。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
この世界にあっては時間と空間という着物を着て万物は千差万別、個体として
鬩
(
せめ
)
ぎ合ってる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その理由如何、曰く、「兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐも外その
侮
(
あなどり
)
を防ぐ、大敵外にあり、
豈
(
あ
)
に国内相攻るの時ならんや」。これ明かに彼が一個の国民的論者たることを自白するものに
非
(
あら
)
ずや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
是非の心偏すれば、民或は兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぎ父子相
訟
(
うつた
)
ふ者有り。凡そ情の偏するや、四
端
(
たん
)
と雖遂に
不善
(
ふぜん
)
に
陷
(
おちい
)
る。故に學んで以て中和を
致
(
いた
)
し、
過不及
(
かふきふ
)
無きに
歸
(
き
)
す、之を
復性
(
ふくせい
)
の學と謂ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
小猿雪山に登りて大薬王樹という樹の枝を伐って、帰り来りて酔い臥したる猿どもを
撫
(
な
)
ずるに、たちまち
酔
(
えい
)
醒
(
さ
)
め心
猛
(
たけ
)
くなって竜を責む。竜王光を放って
鬩
(
せめ
)
ぎけるを大王矢を射出す。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
長崎へ行って新しい文化に目が開くと、更に日本の現状が
嫌
(
あきたらな
)
くなってくる。世界の大勢を知らずに同胞
墻
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
いでいる京阪の中心地に於ける闘争が、どうしても黙って見ておれない。
青年の天下
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
財産を分ち兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐようになっては、たちまちにして家号というものが明白に樹立して、二条殿と九条殿と一条殿と近衛殿とは、別の家のような気がしてしまったのであります。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかも、骨肉互いに
鬩
(
せめ
)
ぎ合っている空気は
徒
(
いたずら
)
に私を息づまらせるばかりであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
相反する条件が社会全般にわたって渦巻き
鬩
(
せめ
)
いでいた時代である。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぎ、相殺し
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
蘆
(
あし
)
の向うには一面に、高い松の木が茂っていた。この松の枝が、むらむらと、互に
鬩
(
せめ
)
ぎ合った上には、
夏霞
(
なつがすみ
)
に煙っている、陰鬱な山々の
頂
(
いただき
)
があった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
我が先へ汝は後にと兄弟争い
鬩
(
せめ
)
いだ末、兄は兄だけ力強く
弟
(
おとと
)
をついに投げ伏せて
我意
(
がい
)
の勝を得たに誇り高ぶり、急ぎその橋を渡りかけ
半途
(
なかば
)
にようやく
到
(
いた
)
りし時
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
或は言を大にして
墻
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐの禍は外交の策にあらずなど、百方
周旋
(
しゅうせん
)
するのみならず、時としては身を
危
(
あやう
)
うすることあるもこれを
憚
(
はばか
)
らずして
和議
(
わぎ
)
を
説
(
と
)
き、ついに江戸解城と
為
(
な
)
り
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
共に人心を導くに足りぬ! 因果経よ、
涅槃
(
ねはん
)
経よ、仏教こそは
讃美
(
ほむ
)
べきかな。……恥ずべきは人の世だ。戦国の世の浅ましさ、一夫多妻、叔姪相婚、父子兄弟相
鬩
(
せめ
)
ぎ、骨肉互いに
啄
(
ついば
)
もうとしている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
利己的である一方、自分の息のかかったものを
泥
(
どろ
)
に
塗
(
まみ
)
れさせたくないという気持もあった。それは
鬩
(
せめ
)
ぎ合うほど極端なものでもなかった。いずれも人間にありがちな感情だと言うよりほかなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
眼にみえぬ
怒濤
(
どとう
)
となってあい
鬩
(
せめ
)
いでいる。
日本婦道記:忍緒
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その高慢と欲との
鬩
(
せめ
)
ぎあうのに苦しめられた彼は、今に見ろ、
己
(
おれ
)
が鼻を明かしてやるから——と云う気で、何気ない
体
(
てい
)
を装いながら、油断なく、斉広の煙管へ眼をつけていた。
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
または
兄弟
(
けいてい
)
墻
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐのその間に、商売の権威に圧しられて国を失うたるものなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかもこの事業を成し得て、国中の
兄弟
(
けいてい
)
相
鬩
(
せめ
)
ぐにあらず、その智恵の鋒を争うの相手は外国人なり、この智戦に利あればすなわちわが国の地位を高くすべし。これに敗すればわが地位を落とすべし。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
鬩
漢検1級
部首:⾾
18画
“鬩”を含む語句
争鬩
相鬩
小鬩合
爭鬩
鬩乎
鬩合