おり)” の例文
おりたつ後姿うしろすがた見送みおくものはお八重やへのみならず優子いうこ部屋へや障子しようじ細目ほそめけてはれぬ心〻こゝろ/\を三らう一人ひとりすゞしげに行々ゆく/\ぎんずるからうたきゝたし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
登る時には長い時間と多くの汗水とをついやさせた八溝山も、そのおりる時はすこぶる早い。しかしり道も決して楽ではなかった。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
今朝、豊次のお神さんが、階下したおりるなり彼の来てゐることを知らせてくれたのだが、その時は、たゞ「へえ、あの人が」と思ふくらゐの驚き方であつた。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
性理字義せいりじぎ』に曰く、『生死をもって論ずれば、生は気のしん、死は気のくつ。死の上について論ずれば、すなわち魂ののぼるは神となり、魄のおりるは鬼となる。 ...
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
身体の重サと落て来る勢いでメリ/\と凹込めりこむ、上から血眼でおりて来て抱起すまでには幾等いくらかの手間が有る其中に血が尽きて、膨上ふくれあがるだけの勢がきえたのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
見返柳を後にして堤の上を半町ばかり行くと、左手へおりる細い道があつた。此が竜泉寺町りゆうせんじまちの通で、「たけくらべ」第一回の書初めに見る叙景の文は即ちこの処であつた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
『そうね、一寸ちよつと待つて下さい。』と急いで二階へあがつたがもなくおりて来て
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
十段ばかりおりると、小さい小さい一つの部屋があります。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
おや車をおおりになる。なんと云う御様子でしょう。
絶頂から一里ほどおりると、はたして急流矢のごとくに走っている。急流の岸には一軒の水車小屋もさびし気に立っている。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
とうさんの田舍ゐなか信濃しなの山國やまぐにからたひら野原のはらおほ美濃みのはうおりたうげの一ばんうへのところにあつたのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
見返柳を後にして堤の上を半町ばかり行くと、左手へおりる細い道があった。これが竜泉寺町りゅうせんじまちの通で、『たけくらべ』第一回の書初めに見る叙景の文は即ちこの処であった。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さあ、おおりなさい。もうそこへ来たのだ。
最早もうおりるぞ!」と叫けんだ。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「勝手にしろ。山を降りれば何かあるに相違ない。何かに付いておりれば、どこかの村につくきまっている。汝等なんじらごとき懦弱漢はかえって手足てあしまといだ。帰れ帰れ」
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
おりる人も、乗る人もない。車は電車通から急に左へ曲り、すぐまた右へ折れると、町の光景は一変して、両側ともに料理屋待合茶屋の並んだ薄暗い一本道である。下駄の音と、女の声が聞える。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
灯火とうくわのつきはじめるころ、銀座尾張町の四辻で電車をおりると、夕方の澄みわたつた空は、真直な広い道路に遮られるものがないので、時々まんまるな月が見渡す建物の上に、少し黄ばんだ色をして
町中の月 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)