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鋸屑
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おがくず
ふりがな文庫
“
鋸屑
(
おがくず
)” の例文
第三の函からこれもまた
鋸屑
(
おがくず
)
とも
鋼鉄
(
はがね
)
屑とも見分けの付かぬ、例の詰物を取り出して、マクドナルド博士とともに掌で揉んでみたり
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一軒一軒
虱潰
(
しらみつぶ
)
しに出所を調べてまわっても構わない覚悟で、飯田町一帯の材木置場の隅から隅まで
鋸屑
(
おがくず
)
を掻きまわしたもんだ。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は
鋸屑
(
おがくず
)
を
膠
(
にかわ
)
で練っていたのだ。万豊の桐畑から仕入れた材料は、ズイドウ虫や
瘤穴
(
こぶあな
)
の
痕
(
あと
)
が
夥
(
おびただ
)
しくて、下彫の
穴埋
(
あなうめ
)
によほどの手間がかかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
錠前がはずれて
鋸屑
(
おがくず
)
がばらばらと落ちた。クリストフは室の中に駆け込み、窓に駆け寄ってそれを開いた。冷たい空気がどっと流れ込んできた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
従ってこの集の中には「
鋸屑
(
おがくず
)
は
移徙
(
わたまし
)
の夜の蚊遣かな 正秀」とか、「
踏
(
ふむ
)
人もなきや
階子
(
はしご
)
の夏の月 臥高」とか、「
上塗
(
うわぬり
)
も乾や床の夏羽織 探芝」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
彼はテーブルの上にあった吸墨用の箱から
鋸屑
(
おがくず
)
を機械的につまみ出しながら、ちょっと考え込んだ、そしてつけ加えた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
薊の
匕首
(
あいくち
)
は彼の
脾腹
(
ひばら
)
にふかく入った儘離れなかった。狂う程かまきりは自ら血をしぼって。その血は、月に青光りして、あたりの
鋸屑
(
おがくず
)
に斑々とこぼれた。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雨降がつづいて、
木片
(
きぎれ
)
や
鋸屑
(
おがくず
)
の散らかった土間のじめじめしているようなその店へ、二人は移りこんで行った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
製板所の構内だということはもくもくした新らしい
鋸屑
(
おがくず
)
が
敷
(
し
)
かれ、
鋸
(
のこぎり
)
の音が気まぐれにそこを
飛
(
と
)
んでいたのでわかりました。鋸屑には日が
照
(
て
)
って
恰度
(
ちょうど
)
砂
(
すな
)
のようでした。
イギリス海岸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
トロカデロ宮前を通り過ぎると、小さいキャフェには昔風に床へ
鋸屑
(
おがくず
)
を厚く
撒
(
ま
)
いているのが匂った。トロカデロ宮を裏へ
廻
(
まわ
)
った広庭はセーヌの河岸で、緩い傾斜になっていた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
小屋の
中
(
うち
)
には
単
(
ただ
)
こればかりでなく、
両傍
(
りょうわき
)
に
堆
(
うずたか
)
く偉大な材木を積んであるが、その
嵩
(
かさ
)
は与吉の
丈
(
たけ
)
より高いので、
纔
(
わずか
)
に
鋸屑
(
おがくず
)
の
降積
(
ふりつも
)
った上に、小さな
身体
(
からだ
)
一ツ入れるより他に余地はない。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木骨混凝土
(
もっこつコンクリート
)
の二枚の間に、
鋸屑
(
おがくず
)
や畳の古床を詰めて絶縁体にしてあるんです……ところで、豚のやっこさん、あんなところへおしこめられて、食うものがなくなり、苦しまぎれに
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
乃公は草の上に坐って弁当を開けた。今日は玉子焼かと思ったらパンだった。道理で少し軽いと思った。それではバターか、ジャムか、と思って
破
(
わ
)
って見たら、
鋸屑
(
おがくず
)
が入っていた。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
葉子は
鋸屑
(
おがくず
)
を塗りこめてざらざらと手ざわりのいやな壁をなでて進みながらようやく事務室の戸の前に来て、あたりを見回して見て、ノックもせずにいきなりハンドルをひねった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と、エミリイは今までにないうつろな眼をして、
鋸屑
(
おがくず
)
を詰めた手足を棒のように投げ出しているのです。たった一人のエミリイまでこんなでは——セエラはがっかりしてしまいました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「マネキン人形は
鋸屑
(
おがくず
)
と紙を型にはめて、そとがわにビニールを塗るのですか」
悪霊物語
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
材
(
き
)
を
釿
(
はつ
)
る
斧
(
よき
)
の音、板削る
鉋
(
かんな
)
の音、
孔
(
あな
)
を
鑿
(
ほ
)
るやら
釘
(
くぎ
)
打つやら丁々かちかち響き
忙
(
せわ
)
しく、
木片
(
こっぱ
)
は飛んで疾風に木の葉の
翻
(
ひるが
)
えるがごとく、
鋸屑
(
おがくず
)
舞って晴天に雪の降る感応寺境内普請場の
景況
(
ありさま
)
賑
(
にぎ
)
やかに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
歯の浮くような・やにさがった調子で「人形は美しい玩具だが、中味は
鋸屑
(
おがくず
)
だ」などという婦人論を弁じなければ気が済まぬのか? 二十歳のスティヴンスンは、気障のかたまり、
厭味
(
いやみ
)
な
無頼漢
(
ならずもの
)
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その穴の口に何か色のついた粉か
鋸屑
(
おがくず
)
を持っていき、一方牧場の泉の上に濾過器を仕掛ければ、水の流れによってはこばれる粉粒がそれに引っかかるだろうからそれで判る、と提案した人があった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
窓の下、畳の上にわずかばかり残った
鋸屑
(
おがくず
)
を見付けたのです。
銭形平次捕物控:117 雪の夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
鋸屑
(
おがくず
)
をこしらえて、それを隠れ
家
(
が
)
の入口のところに
撒
(
ま
)
く。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
間に
鋸屑
(
おがくず
)
を詰めた客用の寝室がありました。
斧を持った夫人の像
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そっと覗いてみると、暗い、微かな光線の中に一面に散らばった
鋸屑
(
おがくず
)
の上に、百
斤入
(
きんいり
)
と見える新しい味噌桶が十個、行儀よく二行に並んでいる。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、ほんとうの値打ちというものはむしろ、皆さんが
洟
(
はな
)
も引っかけずにいられるそこにある函や、
鋸屑
(
おがくず
)
のような詰物、絵やこの巻物なぞの方にあるのですよ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
毛脛
(
けずね
)
が、出ている。
鋸屑
(
おがくず
)
だらけな
髷
(
まげ
)
が、そッくり返っている。二寸ほど
鞘辷
(
さやすべ
)
りしている大刀の刀身も、賭場で、勝負をしてしまったのか、あわれにも、竹である。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それ見い。云わんこっちゃないわい。百斤入の桶が十個に味噌がタッタ三百五十斤……底の方に
鋸屑
(
おがくず
)
と小判が沈んどるに、きまっとるやないか」
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
次いで私共は、函の中に納められた諸物品を調べ始めましたが、まず第一に
鋸屑
(
おがくず
)
とも付かず、
鋼鉄
(
はがね
)
屑とも付かず、またセロファン屑とも付かぬ、この軽い綿のごときものであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
鋸屑
(
おがくず
)
を着けている材木屋、上方流れの
安芸人
(
やすげいにん
)
、
肩肱
(
かたひじ
)
を突ッ張っている無法者、井戸掘りらしいひとかたまりの労働者、それとふざけている売笑婦、僧侶、虚無僧——そして武蔵のような牢人者。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
男は
切尖
(
きっさき
)
鋭く万平を松板の間に追詰めながら、
隙
(
すき
)
があったら逃げよう逃げようとしたので、万平は足元の
鋸屑
(
おがくず
)
を掴んでは投げ掴んでは投げ防ぎ戦った。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
十個の味噌桶の底にそれぞれ
擬
(
まが
)
い小判を平等に入れて、上から
鋸屑
(
おがくず
)
を
被
(
おお
)
いかぶせ、その上から味噌を詰込んでアラカタ百斤の重さになるように手加減をした。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
担
(
かつ
)
いでいた杉皮の束を、
鋸屑
(
おがくず
)
の山盛りの上に置くと、ハテナという思い入れ宜しくあって抜足さし足も半分、芝居がかりに壁のように並んだ松板の蔭に近寄った。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
暗黒の底に
水飴
(
みずあめ
)
のように流れ拡がる夥しい平炉の白熱鉱流は、広場の平面に落ち散っている紙屑、
藁屑
(
わらくず
)
、
鋸屑
(
おがくず
)
、塗料、油脂の類を片端から燃やしつつグングンと流れ拡がって行く。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
飯田橋の停車場の方へ抜けて行く途中の、
鋸屑
(
おがくず
)
のフワフワ積った小径の上に、コロリと
俯伏
(
うつぶ
)
せに倒れている……材木の蔭から躍り出た兇漢に、アッという間もなく脳天を喰らわされたんだね。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
拳固
(
げんこ
)
を固めてポカリと頭をたたき割ったら、
鋸屑
(
おがくず
)
の脳味噌がバラバラと崩れ落ちて来た。胴を掴み破ると、ボール紙の
肋骨
(
ろっこつ
)
が飛び出した。その下から又、薄板の隔膜と
反故紙
(
ほごがみ
)
の腸があらわれた。
微笑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鋸屑
(
おがくず
)
だらけの道を
転
(
こ
)
けつまろびつ逃げて行った。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“鋸屑”の意味
《名詞》
鋸で製材する際に出る木材の屑。おがくず。のこぎりくず。
言葉がよどみなくすらすら出るさま。
(出典:Wiktionary)
鋸
漢検準1級
部首:⾦
16画
屑
漢検準1級
部首:⼫
10画
“鋸屑”で始まる語句
鋸屑譚