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鉤
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はり
ふりがな文庫
“
鉤
(
はり
)” の例文
また二間ばかりの竿では、
此処
(
ここ
)
では
鉤先
(
はりさき
)
が好い魚の廻るべきところに達しない。
岸近
(
きしぢか
)
に廻るホソの
小魚
(
こざかな
)
しか
鉤
(
はり
)
には来らぬであろう。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いつものように
黄昏
(
たそがれ
)
の軒をうろつく、嘉吉
奴
(
め
)
を
引捉
(
ひっとら
)
え、
確
(
しか
)
と親元へ預け置いたは、屋根から
天蚕糸
(
てぐす
)
に
鉤
(
はり
)
をかけて、行燈を釣らせぬ分別。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこでホヲリの命が釣道具を持つて魚をお釣りになるのに、遂に一つも得られません。その
鉤
(
はり
)
までも海に失つてしまいました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
小娘は釣をする人の持前の、大いなる、動かすべからざる真面目の態度を以て、
屹然
(
きつぜん
)
として立っている。そして魚を
鉤
(
はり
)
から脱して、地に投げる。
釣
(新字新仮名)
/
ペーター・アルテンベルク
(著)
「
鉤
(
はり
)
がなにかにひっかかったんだろう」益村はそう云った、「心配するな、
餌
(
え
)
のない鉤に魚はくいつきゃあしないから」
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
かねて四郎と二人で用意しておいた——すなわち
田溝
(
たみぞ
)
で捕えておいたどじょうを
鉤
(
はり
)
につけて、家を西へ出るとすぐある田のここかしこにまきました。
あの時分
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
乃公は伯父さんを魚屋の店に吊してある
鮟鱇
(
あんこう
)
と見立て、冗談半分に釣る積りで、口の
辺
(
あたり
)
に
鉤
(
はり
)
を下した。遠くでやる仕事だから、どうせ巧くは行かない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
物置から
鉤
(
はり
)
箱を出してくることであったり、時には庭の梅の木の枝ぶりを
撓
(
た
)
めることであったりした。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そういうのは
鉤
(
はり
)
にかぶさりすぎなくていいんだ。村のミミズはあんまり大きすぎる。
銀魚
(
シャイナー
)
なんか鉤までとどかないうちにそこからひと御馳走いただいてしまうからね。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
鉤
(
はり
)
づれのしてゐない鮎といふものは、全く渓谷の処女で、新らしい、荒い、美しいものである。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
唯だ絲の降りてゐる海底が岩石原であるため、馴れないうちはよく
鉤
(
はり
)
をそれに引つ懸けました。
樹木とその葉:33 海辺八月
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
鮠
(
はや
)
釣りの寄せ餌を投げ込んで、先づ一服する。心の眼に今の寄せ餌に集つて来る愛すべき彼女等を視る。程こそよけれと竿を振る。
鉤
(
はり
)
は思ふ壺に落ちて、続いて
浮子
(
うき
)
が立つ。
健康を釣る
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
カガシラとは獣毛を赤黒黄等に染めたる短きものを小さき
鉤
(
はり
)
につけて金または銀の小さき頭がついてゐる。鮎はこの美しき鉤を見て蚊と思ひあやまりて喰ひつくといふ事である。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
一番味の
佳
(
い
)
いのは友釣で漁ったので
活
(
い
)
きた鮎を水の中へ泳がせると外の鮎が
追駆
(
おいか
)
けて来て
鉤
(
はり
)
に掛ります。それは鮎が充分
餌
(
え
)
を食て
心地好
(
ここちよ
)
く遊んでいる時でなければ決して友を追いません。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
鉤
(
はり
)
のついた
餌
(
えさ
)
を食った魚のように、自分を生命の危難に
打
(
ぶ
)
っつけてしまった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
私の甥はその間中
鉤
(
はり
)
にかかった
鮠
(
はえ
)
も忘れるくらい、聞き耳を立てて居りましたが、この夢の話を聞いている中は、橋の下の涼しさが、何となく肌身にしみて、そう云う御姫様の悲しい御姿を
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この事は人間よりも魚の方によく披露しておき度いものだ。もしか鮎や、鰻のやうな
無益
(
やくざ
)
な魚が、ひよつくり
鉤
(
はり
)
にかからうものなら、露伴氏は腹立紛れに鰻よりもずつと長い詩を作るかも知れない。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
鉤
(
はり
)
を産む風は輝く宝石のごとく私をおさへてうごかさない。
藍色の蟇
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
鉤
(
はり
)
にも似たる爪先の雨にぬれたる岩ばなに
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
爾
(
なんぢ
)
、
海
(
うみ
)
にゆきて
鉤
(
はり
)
を
垂
(
た
)
れよ。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
けれど、
鉤
(
はり
)
を離すと、
直
(
す
)
ぐ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
あとはまた直ぐ
鉤
(
はり
)
をくっつければそれでいいのです。この人が竿を大事にしたことは、上手に段〻細にしたところを見てもハッキリ読めましたよ。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
依つてその大神に詳しく、兄が無くなつた
鉤
(
はり
)
を請求する有樣を語りました。そこで海の神が海中の魚を大小となく悉く集めて、「もしこの鉤を取つた魚があるか」と問いました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
「この秋の初めのことですがね、大滝の上流で釣りをしていたんです」と安宅が云った、「どうしたわけだか
餌
(
えさ
)
をすっかり取られちまいまして、餌なしの
鉤
(
はり
)
だけで釣っていました」
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暫く見つめて居るうち、一尾の魚が彼の
鉤
(
はり
)
にかゝつたらしい。彼は忽ち姿勢を
頽
(
くづ
)
して、腰から小さな手網を拔きとり、竿を
撓
(
たわ
)
ませて身近く魚を引寄せ、
終
(
つひ
)
に首尾よく網の中に收めて了つた。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
十幾本の
鉤
(
はり
)
を
凧糸
(
たこいと
)
につけて、その根を一本にまとめて、これを
栗
(
くり
)
の木の幹に結び、これでよしと、四郎と二人が思わず星影寒き大空の一方を望んだ時の心持ちはいつまでも忘れる事ができません。
あの時分
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
宿へ帰ると間もなく、新太郎君の室の窓下で鶏が
喧
(
けたたま
)
しく騒ぎ出した。顔を出して見ると釣竿が転んで動いている。
鉤
(
はり
)
にゴカイをつけたまゝにして置いたら、それを鶏が喰べて引っかゝったのだった。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
鉤
(
はり
)
の
尖
(
さき
)
に虫を附けて
雑魚
(
ざこ
)
一筋を釣るという
仙人業
(
せんにんわざ
)
をしまするよ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
独語
(
ひとりごと
)
を言ひ言ひ、
鉤
(
はり
)
を合はせてぐつと引揚げた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そのかかりにはとかくに魚が寄るものであります。そのかかりの前へ出掛けて行って、そうしてかかりと
擦
(
す
)
れ擦れに
鉤
(
はり
)
を打込む、それがかかり前の釣といいます。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
釣りあげて、
鉤
(
はり
)
から外すと、そのまま水の中へ放してやり、放された鮠が、白い腹をひらめかせながら、すばやく、流れの中へ消えてゆくのを、甲斐は楽しげに見まもるのであった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
但し此奴釣りあげてから厄介で、私などの細指をば唯だの一噛みで噛み切らうといふ鋭い齒を持つてゐるので、
鉤
(
はり
)
をはづすが大難澁、私など大抵一匹ごとに
鉤
(
はり
)
を切つて新たなのを用ゐました。
樹木とその葉:33 海辺八月
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
縄というのは長い縄へ短い糸の著いた
鉤
(
はり
)
が著いたもので、此鉤というのは「ヒョットコ鉤」といって、絵に書いたヒョットコの口のようにオツに曲って居る鉤です。
夜の隅田川
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は鯊を
鉤
(
はり
)
から外してバケツに入れ、新しい餌を付けて、また糸を投げた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自分が
魚餌
(
えさ
)
を
鉤
(
はり
)
に
装
(
よそお
)
いつけた時であった。偶然に少年は自分の方に
面
(
おもて
)
を向けた。そして
紅桃色
(
こうとうしょく
)
をしたイトメという虫を五匹や六匹ではなく沢山に鉤に装うところを
看詰
(
みつ
)
めていた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は鯊を
鉤
(
はり
)
から外してバケツに入れ、新しい
餌
(
えさ
)
を付けて、また糸を投げた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
竿釣にも色〻ありまして、明治の末頃はハタキなんぞという釣もありました。これは舟の上に立っていて、
御台場
(
おだいば
)
に打付ける
浪
(
なみ
)
の荒れ狂うような処へ
鉤
(
はり
)
を
抛
(
ほう
)
って入れて釣るのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
続いてまた二
尾
(
ひき
)
、同じようなのが
鉤
(
はり
)
に来た。少年は
焦
(
あせ
)
るような緊張した顔になって、
羨
(
うらやま
)
しげに、また少しは自分の鉤に何も来ぬのを悲しむような心を蔽いきれずに自分の方を見た。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
恰も
鉤
(
はり
)
の
鐖
(
もどり
)
の如く、薔薇の刺の如く、人をして右せんとすれば右する能はざらしめ、左せんとすれば左する能はざらしむるものであるが、此が一回轉して暴ぶ氣になれば、狠毒苛辣を極めて
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
“鉤”の解説
鍵
鉤・鈎(かぎ、こ、こう、はり、ち、はぜ、つる)は、先が曲がった棒状の、もっぱら金属製の器具である。曲がった部分を何かに引っ掛けて使う。フック(en: hook)。もっぱら「かぎ」と読むが、分野によっては他の読みをする。
(出典:Wikipedia)
鉤
漢検準1級
部首:⾦
13画
“鉤”を含む語句
鉤形
自在鉤
釣鉤
鉤裂
鉤金
鉄鉤
鉤鼻
鉤縄
鉤爪
鉤穴
鉤曳
手鉤
鉤手
蚊鉤
鉤索
銀鉤
鉤繩
鉤針
鉤素
鉤殿
...