釣竿つりざを)” の例文
太くたくましい物干竿ものほしざをを外して、洗濯物を縁側へ投り出したまゝ、ためつすかしつ釣竿つりざを屋が釣竿を試すやうなことをして居りました。
もしかしてざるのかはりに釣竿つりざををかついで、なにかもつとほかさかなをもりたいとおもときには、ぢいやにたのんで釣竿つりざをつくつてもらひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くと、それがボズさんとのちつた老爺ぢいさんであつた。七十ちかい、ひくいが骨太ほねぶと老人らうじん矢張やはり釣竿つりざをもつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
与兵衛はギクリ! として釣竿つりざをつゑについたまゝ立つて居ると、猿が何疋も枝から枝へ跳びあるいてゐるのです。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
それよりも、見事みごとなのは、釣竿つりざを上下あげおろしに、もつるゝたもとひるがへそでで、翡翠かはせみむつつ、十二のつばさひるがへすやうなんです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕の叔父をぢは十何歳かの時に年にも似合はない大小を差し、この溝の前にしやがんだまま、長い釣竿つりざををのばしてゐた。すると誰か叔父の刀にぴしりと鞘当さやあてをしかけた者があつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「庭石の上から、釣竿つりざをを伸ばせば、刀架の刀はコトリと音をさせずに取れるよ——それを植込の陰の犬の糞の上へ投り出しただけのことさ」
木曾きそひとむかしからお伽話とぎばなしきだつたとえますね。いはにも、いけにも、釣竿つりざをにも、こんなお伽話とぎばなしのこつて、それをむかしからつたへてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぬまふち追迫おひせまられる、とあしかふ這上はひあが三俵法師さんだらぼふしに、わな/\身悶みもだえするしろあしが、あの、釣竿つりざをつた三にんのやうに、ちら/\とちういたが、するりとおとして、おびすべると
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうさう、いつか見た古備前こびぜんの徳利の口もちよいと接吻せつぷん位したかつたつけ。鼻の先に染めつけの皿が一枚。藍色あゐいろの柳の枝垂しだれた下にやはり藍色の人が一人ひとり莫迦ばかに長い釣竿つりざをを伸ばしてゐる。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「近所の子供が見付けて大騷ぎになつたんです。綾瀬川寄りの三尺ほどの流れの岸で、釣竿つりざをいたまゝ死んでゐるのです」
寢覺ねざめには、浦島太郎うらしまたらう釣竿つりざをといふものがりました。それも伯父をぢさんのはなしてれたことですが、浦島太郎うらしまたらうつりをしたといふいはもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
釣竿つりざをの方が忙がしくて、たまにかいを任せると、水すましのやうに、船をグルグル廻してばかりゐましたよ
そこで與助の釣竿つりざをを持出して、朝のうちに路地へそつと忍び込み、格子の外から煙草入を釣つたのさ——煙草入は格子から一間以上離れたところに轉がつて居るから
釣竿つりざをなんか擔いで、これから横川筋へ釣に行くんだが潮時が少し早いからと仰しやつて、一杯つけさして、さう、一刻位經ちましたか知ら、申刻なゝつ(四時)少し前、ほろ醉機嫌で
「船の中に抛り出してあつた釣竿つりざをには、かなり大きな鯉が付いて居たんだ相で」
「まあ宜い、お前は店口へ行つてもう一度怒鳴どなれ、今言つた通りで宜い——昨日釣竿つりざをを持つて路地へ入つた人間が解りましたよ——とな——町内へ響き渡るやうな大きな聲でやるが宜い」
釣竿つりざをで捕物は始めてですね」