重苦おもくる)” の例文
「さう云ふわけでもないが……」と三四郎は弁解する。与次郎のへら/\調と、三四郎の重苦おもくるしいくちの利き様が、不釣合で甚だ可笑おかしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どうなったろう?」という、好奇心こうきしんこって、なんだか、そのやぶのちかくになると、重苦おもくるしいようなさえしました。
犬と古洋傘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんの秋のようにあんなつめたい風のなかなら仕事しごともずいぶんひどかったのですけれども、いまならあんまり楽でただ少しかた重苦おもくるしいのをこらえるだけです。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
千八百八十三ねん、ペテルブルグの師範学校しはんがっこう卒業そつぎょうしたソログーブは、各地かくちうつみながら、教師きょうしつとめ、かたわつくっていたが、もなく長篇小説ちょうへんしょうせつ重苦おもくるしいゆめ
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
給油管は全開となり、喞筒ポンプはウウーンと重苦おもくるしいうなりをあげ激しい勢いで重油がエンジンにきこまれて行った。ビューンとタービンは、甲高い響をあげて速力を増した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
重苦おもくるしい圧迫が壮助の頭に上ってきた。もし果して羽島さんの推察の如く腹部に重い疾患があるとすれば、既に肺を結核に冒されている身体は到底助かる見込みはあるまい。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
二三にちなんこともなかつた。たゞわたしあたま重苦おもくるしいばかりであつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何處どことなくしめつぽくあたまおさへるやうに重苦おもくるしいかんじがする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞかたから脊筋せすぢけて全體ぜんたい重苦おもくるしいやうかんじがあたらしくくははつた。御米およねなんでもせいけなくてはどくだといふかんがへから、一人ひとりきておそ午飯ひるはんかるべた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助には、平岡の凡てが、恰も肺の強くない人の、重苦おもくるしい葛湯くづゆなか片息かたいきおよいでゐる様に取れた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
柘榴ざくろはなは、薔薇ばらよりも派出はでに且つ重苦おもくるしく見えた。みどりあひだにちらり/\とひかつて見える位、強い色をしてゐた。従つてこれも代助の今の気分には相応うつらなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さつき三千代がげて這入はいつ百合ゆりの花が、依然として洋卓テーブルうへつてゐる。あまたるいつよ二人ふたりあひだに立ちつゝあつた。代助は此重苦おもくるしい刺激を鼻のさきに置くに堪へなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其代り、如何いかめづらしいものに出逢つても、やはり待ち受けてゐた様な眼付めつきで迎へるかと想像される。だから此女にふと重苦おもくるしい所が少しもなくつて、しかも落ち付いた感じが起る。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)