途々みち/\)” の例文
すると辻々に立つてゐる監督がそれを発見めつけるが早いか監督詰所に駆け込むで、その電車が通つて途々みち/\の箱番へ直ぐ電話をかける。
そう云って、父はそれからやかたへ帰る途々みち/\、滋幹と並んで歩きながら次のようなことを語って聞かしたのであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから彼はやゝ足を早めて、途々みち/\「買わない買物」の事を考えながら、新橋を渡り玉木屋の角から右に曲って二丁ばかり行くと、とある横町を左に入ったのであった。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
出所でどこも知れて居りますから上げました、途々みち/\もお定どんに伺いましたが、大層御意にって、黄八丈は旦那様がお召に遊ばすと伺いましたが、少しお端手はでかも知れませんが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「昨日のことは許してくれたまへ権八さん。僕が悪かつたから。」私は途々みち/\云つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
継子と本子ほんこの名には、大抵おぎん小ぎんが用ゐられて居ました。私はもうそれに飽き飽きしました。今日もまたいやな話を聞かされるかと云ふやうな悲みをさへ登校する途々みち/\覚えました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
途々みち/\考へて見ると、自分がかの女を棄てて逃げようとしたのも、自分の思想的生活に無關係になつて來たからである。それがおのれから逃げて呉れるのだ。これほど都合のいいことはない。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
月夜つきよかげ銀河ぎんが絶間たえま暗夜やみにもくまある要害えうがいで、途々みち/\きつねたぬきやからうばられる、と心着こゝろづき、煙草入たばこいれ根附ねつけきしんでこしほねいたいまで、したぱらちからめ、八方はつぱうくばつても、またゝきをすれば
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
途々みち/\そんな風に独語して、天に誓ふ気で唇を噛んだ。
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
途々みち/\車掌に聞いてみた
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
といつて、途々みち/\芸術の談話はなしをするといふでもないが、唯相手のつてないお宝が、うんと自分の懐中ふところにある事だけで面白くて溜らないのだ。
途々みち/\彼は考えた。盗まれた書籍の量は相当大きいから、到底手などで提げられるものではない。必ず車で運び出したものに違いないとすると停車場の車を利用したと見るべきであろう。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
周玄は中々の助平だから先刻から途々みち/\女を見て悦んで居る所へ
校長は市街まちをぶらつきながら、途々みち/\将軍の舅の自慢話を持ち出した。すると、道の曲り角で大きな旅館ホテルの前に出た。校長は慌てて友達を引きとめた。
さうして月の二十一日が来ると、朝早くうちを出て、途々みち/\乞食を見ると、袂から例のをつまみ出して、まるで慈悲深い王様ででもあるやうに反りかへつてゐる。
ついてはお気の毒だが、私と一緒に馬車に乗つて途々みち/\用談を聞いてはくれまいかね。何ならお宅の前で車をとめるから、君の馬車は返したがいゝぢやないか。
そして途々みち/\手紙の封を切らうとして幾度かポケツトに手を突込んだが、その都度女房かないの言ひつけを思ひ出して、それなりポケツトの奥へ押し込んでしまつた。
女中は主人のせなあがつたやうな気持で馬に乗つた。そして途々みち/\何といふ親切な旦那様だらう、こんない方ならいつそ結婚してあげてもいいと思つてるらしかつた。
狩野氏はその日は途々みち/\頭の中で倫理学者を非難けなし続けてゐた。孟子は昨日きのふのいさかひも忘れたやうに、その日は横つちよから、ちよい/\気の利いた助言を言つてくれた。
博士は途々みち/\民族の発展と日本語の普及とを考へてゐた。そしていゝ気になつて繻子張の蝙蝠傘をり廻してゐるうち、傘の先でしたゝか前に歩いてゐる大男の肩を叩いた。
備前の新太郎少将が、ある時お微行しのびで岡山の町を通つた事があつた。普魯西プロシヤのフレデリツク大王は忍び歩きの時でも、いつもにぎふとステツキり廻して途々みち/\なまものを見ると
西洋のある学者はみぞれの降る冬の日に蝙蝠傘かうもりがさをさして大学から帰る途々みち/\、家へ着いたなら、蝙蝠傘を壁にたてかけて置いて、自分は暖炉ストーヴに当つて暖まらうとたのしみに思つてゐるうち、うち辿たどり着く頃には