豪傑ごうけつ)” の例文
しかしそのも出来る事なら、生みの親に会わせてやりたいと云うのが、豪傑ごうけつじみていてもじょうもろい日錚和尚の腹だったのでしょう。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
可児才蔵かにさいぞうという豪傑ごうけつでござる。わたくしじまんの家来、ちかごろのほりだし者と、ひそかに鼻を高くしておるほどの者でござりまする」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千束町に店を出している、俗に豪傑ごうけつ床屋といわれる大山理髪店の主人が、愛犬の土佐犬を連れて、人気のない浅草公園へ運動にやってきた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが、王さまは、まえにした約束のことを後悔こうかいして、どうしたらこの豪傑ごうけついはらえるだろうかと、またまた考えていたところでした。
「ばか、貴様は、女の尻にいつくだけが、得意なんだな」とののしり、豪傑ごうけつ笑いしてから、上原なんかと行ってしまいました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
のみならず、十歳から十六歳までの少年である、胃袋いぶくろはおとなよりもすこやかに、食うことにかけてはことごとく豪傑ごうけつぞろいだからたまらない。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
英治さんは兄弟中で一ばん頑丈な体格をしていて、気象も豪傑ごうけつだという事になっていた筈なのに、十年振りで逢ってみると、実に優しい華奢きゃしゃな人であった。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日本の外には亜細亜アジア諸国、西洋諸洲の歴史もほとんど無数にして、その間には古今ここん英雄豪傑ごうけつ事跡じせきを見るべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かく覚禅房は出家として、武芸を後に残すことを好まれなかったが、門下には錚々そうそうたる豪傑ごうけつがおったじゃ。
『俺はあの時辱しめを受けたのだ、俺は憤るべきだったのだ。』と懊悩呻吟おうのうしんぎんのあまり、遂に喘息ぜんそくを惹き起して一週間寝込んじまったという豪傑ごうけつでね、一事が万事
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
ヒーローの豪傑ごうけつにばたばたと一瞬のうちに斬り殺される武士たちの中の一人に、大チャンを発見した。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
みずから古今の英雄や豪傑ごうけつを批評するにつけて、小さなる感情よりすることをたびたび恥ずかしく思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もう其話そのはなしはめ/\といひながらたちあがるときおもてとほ兵兒帶へこおびの一むれ、これ石川いしかはさん村岡むらおかさんおりきみせをおわすれなされたかとべば、いや相變あひかはらず豪傑ごうけつこゑかゝり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よくあんなものを食って、あれだけに暴れられたもんだ。それで晩飯を急いで四時半に片付けてしまうんだから豪傑ごうけつちがいない。飯は食ったが、まだ日がれないからる訳に行かない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先年板垣伯いたがきはくの内務大臣たりし時、多年国事に奔走ほんそうせし功をでられてか内務省の高等官となり、爾来じらい内閣の幾変遷いくへんせんつつも、専門技術の素養ある甲斐かいには、他の無能の豪傑ごうけつ連とそのせんことにし
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ところが法王は少しもひるむ気色なく、いつでも我が国では英国と合戦をやるというような意気込いきごみで、誠に愉々快々ゆゆかいかいとして豪傑ごうけつの本色を表わして居ったというて、感心して居った人がありました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「社長は本当に見せかけているほどの豪傑ごうけつか知ら?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そういう往年の豪傑ごうけつぶりは、黒い背広せびろに縞のズボンという、当世流行のなりはしていても、どこかにありありと残っている。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちびの仕立屋したてやさんは狩人かりゅうどたちをよびよせて、このえものをよく見せてやりました。それから、この豪傑ごうけつは王さまのところへもどっていきました。
トロッコ様の箱車はこぐるまの座席が三段にわけてあり、まえに豪傑ごうけつの虎さんと色男の有沢さんが乗り、真中にぼくと清さん、うしろに柴山と村川が乗りました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
なんというおあつらえ向きな話であろう。この男、豪傑ごうけつ青年にも似合わない、うまい智恵を出したものだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは天性英雄えいゆう豪傑ごうけつならぬものが、英雄豪傑を気取り、傍若無人ぼうじゃくぶじんてらい、なに彼奴きゃつらがという態度をすることは、あるいはこの方法で成功するものもあるか知らぬが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私たちはよく鳥羽伏見とばふしみの戦いで薩長方の鉄砲に手を焼いた新撰組しんせんぐみ豪傑ごうけつのような口をきいた。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
いかなる現下の梟雄きょうゆうでも、手におえない豪傑ごうけつたちでも、かれと談笑のうちに、ふと、眼をカチ合わせるときは、十人が十人とも、その視線を、横にそらすか、伏せるかして、よく秀吉の正視にえて
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼく達のクルウでも、豪傑ごうけつ風な五番の松山さん迄が、見知り越しのシャ・ノアルの女給とテエプをかわしています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
けれどもそれよりはやく、このすばしっこい豪傑ごうけつは、そばにあった礼拝堂れいはいどうにとびこんで、すぐまた上のまどからピョンとひととびでそとへとびだしました。
僕「なるほどシャツ一枚の豪傑ごうけつが一人、自作の野菜を積み上げた前にそんな演説をしていましたよ。」
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これを読む諸君なかんずく聖人、君子、英雄、豪傑ごうけつらは、僕の言の幼稚なるにふきだすであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
むかし、武蔵坊弁慶むさしぼうべんけいという豪傑ごうけつは、あらゆるいくさの道具を、すっかり背中にせおって歩いたのだそうですが、それを、「弁慶の七つ道具」といって、今に語りつたえられています。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私が相手をうながす様に云っても、彼は表情も変えず黙り込んでいた。何かしら妙なものがあった。日頃の東洋豪傑ごうけつ風な、無造作な彼が、こんな深い感動を示すというのは、ひどく意外に思われた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
医科の和田といった日には、柔道の選手で、賄征伐まかないせいばつの大将で、リヴィングストンの崇拝家で、寒中かんちゅう一重物ひとえもので通した男で、——一言いちごんにいえば豪傑ごうけつだったじゃないか? それが君、芸者を知っているんだ。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蘭子は毎日の送り迎えで、この豪傑ごうけつ青年とは仲よしになっていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)