説諭せつゆ)” の例文
「よしよし、万事貴様に任せてやる、貴様からこの者共をよく説諭せつゆしてやるがよい、拙者も今日のところは特別の穏便おんびんを以て聞捨てにしてつかわす」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そういう次第なら、警察へ訴えて、かの男に説諭せつゆして貰うという方法が、この際もっとも常識的かと思われますが」
断層顔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「もうお説諭せつゆはたくさんだ。頼朝公の時代とは時がちがう。あのころは後醍醐の御代でもなし、朝廷でも、王政一新などを世にいてはいなかった」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当人が承諾しなければ自儘じまゝに人身売買をしてはならん。ところでお部屋からは噛んでふくめるように花里へ説諭せつゆしますが、何うしてもうんとは申しません。
「源太郎や、絹子さんはね、隆鼻術と美眼術びがんじゅつ義歯ぎしをしたくておいでになったんだそうですよ。説諭せつゆをして下さいって伯父さんからお手紙が来ていますのよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがてわたくし祖父じじ……わたくしより十ねんほどまえ歿なくなりました祖父じじれてて、わたくし説諭せつゆおおせつけられました。
間もなく和声学の先生アントン・ルービンシュタインに説諭せつゆされて、気の乗らない仕事と縁を絶ち、音楽の研究に没頭するようになったのは十九歳の年であった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
高等学校時分の事でした、親友に米山保三郎という人、夭折ようせつしましたが、この人が説諭せつゆしました。その説諭に曰く、セントポールのような家は我国にははやらない。
おはなし (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし後に戻るならば必ずしもその処分をせねばならんというのではないといってだんだん説諭せつゆしたので、その後半日程経てとうとう帰るということになったけれども
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
午後、我がせし狼藉ろうぜき行為こういのため、はばかる筋の人にとらえられてさまざまに説諭せつゆを加えられたり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ついぞ叱言をいったことのない父と母とがねんごろに説諭せつゆしたのでさすがの春琴も返す言葉がなく道理に服したていであったがそれも表面だけのことで実際は余り利き目がなかった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が、多分先生に説諭せつゆを願った手紙だろうと途々みちみち私は思った。が、何と考えても私は、それほどわるいことをしたとは思えなかった。修身の本には友達と仲善なかよくしろと書いてある。
巧みに義眼をめれば、普通の眼と殆ど見分けがつかぬことなどを懇々こん/\説諭せつゆして、なおその言葉を証拠立てるために、義眼を入れた患者を数人、患者の前に連れて来て示したので
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
以て御説諭せつゆし下され候樣願ひ奉つり度候と申立ければ大岡殿篤と是を聞れ其方の申たて相違も有間敷あるまじきなれど右口上の趣き書面しよめんに致し差出すべしと有しかばすけ十郎がう右衞門の兩人口書こうしよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よしりたりとも再縁さいゑんするひとさへにはおほし、何處どこはゞかりのあることならねばとて説諭せつゆせしに、おそのにこやかにわらひて口先くちさき約束やくそくくにとかれもせん、まことあいなきちぎりはてヽ再縁さいゑんするひとあるべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
説諭せつゆされましたので、勝五郎はの尋ねてまいったお若と伊之助、それにせがれの岩次をつれて参りました。高根晋齋は三人の親子を奥へしょうじて対面に相成りまする。
つまり新聞屋にかかれた事は、うそにせよ、本当にせよ、つまりどうする事も出来ないものだ。あきらめるより外に仕方がないと、坊主の説教じみた説諭せつゆを加えた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この上は、夜に入って、五郎造親方が帰宅するところをとらえて、これを説諭せつゆするほかない。お前も日本人だろうが、某大国に雇われているのを知らないわけじゃなかろう。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「呼び止めたか。では、ここへ連れて来い。ここへ。——説諭せつゆしておかぬと癖になる」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「コン/\説諭せつゆを加えた後、『お前の辞表ぐらいでビクともする我輩じゃない。以来こんなものを書くと承知しないぞ』と凄まじい権幕さ。仕方がないらか、あやまってしまった」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それだから建築家になったら、私も門前市をなすだろうと思いました。丁度ちょうどそれは高等学校時分の事で、親友に米山保三郎よねやまやすさぶろうという人があって、この人は夭折ようせつしましたが、この人が私に説諭せつゆしました。
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むろん女優の写真を持っていた件で説諭せつゆを受けるのである。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ただし、後刻、説諭せつゆ申しつける。……また、近隣の者どもは、おとがめなし。……西門慶の家族らも、同様なれど、あるじ西門慶の生前の非道は人みな憎むところ。供養くようなど派手はで派手しくせず、追善の施行せぎょうに心がけたがよい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山嵐は might is right という英語を引いて説諭せつゆを加えたが、何だか要領を得ないから、聞き返してみたら強者の権利と云う意味だそうだ。強者の権利ぐらいならむかしから知っている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
説諭せつゆである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)