誓文せいもん)” の例文
乳母 またしてもお干渉せっかひやしゃります、さゝ、お就褥やすみなされませ。誓文せいもん明日あす病人びゃうにんにならしゃりませうぞえ、此夜こよひやしゃらぬと。
この年八月二十六日に市川権十郎は芸道にはげみ、贔屓に負かぬと云う誓文せいもんを書き、父七代目団十郎の寿海老人に奥書をさせて香以に贈った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うなづたまひ、卷返まきかへしてたか右手めてさゝげられ、左手ゆんでべて「もく、」「は」とまをして御間近おんまぢか進出すゝみいづれば、くだん誓文せいもんをたまはりつ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしも一と身代しんだいつくるつもりだ。……え、品の納入先おさめさきはどこかって。そいつは、いえない。熊野牛王くまのごおう誓文せいもんにかけて、これだよ
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この誓文せいもんを書き残したおさよは源十郎が棟梁伊兵衛を殺して奪った金……内いくらかは松平出羽守お作事方の払い金と、大部分はたらぬとはいい条
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五ヶ条の誓文せいもんが天から下る、藩主が封土を投げ出す、武士が両刀を投出す、えたが平民になる、自由平等革新の空気は磅礴ほうはくとして、その空気に蒸された。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ぶたるゝ程憎まれてこそ誓文せいもんかけて移り気ならぬ真実をと早速の鸚鵡おうむ返し、流石さすが可笑おかしくお辰笑いかけて、身を縮め声低く、この手を。離さぬが悪いか。ハイ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
末の松山浪越さじとの誓文せいもん悉皆しっかい鼻の端の嘘言一時の戯ならんとせんに、末に至って外に仔細もなけれども、只親仁の不承知より手に手を執って淵川に身を沈むるという段に至り
小説総論 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
やれ、それまことか。誓文せいもんか。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「天地に誓文せいもんして」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「それなればなぜ、そちは早くも約束をやぶったのか。忠円僧正を介しての、そちの上書、誓文せいもんとは、事ごとに約がたごうているではないか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
をとこらしうもをなごらしうもえて、獸類けだものらしうもゆるともない振舞ふるまひ! はてさて、あきてた。誓文せいもんわし今少もすこ立派りっぱ氣質きだてぢゃとおもうてゐたに。
ふさいで考えますと、おゆるしがないのに錠前を開けるのは、どうも心が済みません。神様、仏様に、誓文せいもんして、悪い心でなくっても、よくない事だと存じます。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
方様かたさまに口惜しい程憎まれてこそ誓文せいもん移り気ならぬ真実を命打込うちこんで御見せもうしたけれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一人の山法師は、大講堂のえんに立って、吉水から法然上人以下百九十余名の名をもって送ってきたという誓文せいもんを、朗々と、高声こうせいで読み初めた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……(婦人連に對ひ)あァ、はァ、姫御前ひめごぜたち! 舞踏をどるをいやぢゃと被言おしゃひとがあるか? 品取ひんどって舞踏をどらッしゃらぬひとは、誓文せいもん肉刺まめ出來できてゐるンぢゃらう。
... さるからに御老職ごらうしよく諸役人しよやくにんいづれもがたそれがしことばそむかざるやう御約束おやくそくありたくさふらふ」とはゞかところ申上まをしあぐれば、御年役おんとしやくきこし、「道理もつとも言條いひでうなり」とてすなはち一同いちどう誓文せいもんちようせらる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をみるなかれ」の誓文せいもんをやぶったとがで、加賀見忍剣かがみにんけんはその神刑しんけい山毛欅ぶなの高い上にしばられていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老公ご一代にかなわねば、三代四代幾代かけても、かならずそうせずにはおかないわれわれの誓文せいもんのために……お次さん、おれは捨石すていしになる覚悟だ。それが江戸に来たわしの望みだ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「誓約。ふウむ……じゃあ、やらせてみようか。おい林冲とやら、誓文せいもんなんざ、書けとはいわんよ。その代りに、この王倫の命じることを、三日のうちに、きっとやってみせられるか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直義は、帰降の誓文せいもんをさしだした。それには北朝の年号を用いず、南朝年号の「正平五年十二月」と書いた。そしてただちに挙兵にかかった。いまは師直のみが相手ではない。兄と戦うのだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして前夜、大友貞宗や少弐筑後守などをも説き伏せて「——菊池とは手を切る」という一約破棄の誓文せいもんまで取っていたほどなので、あけがた諸所にあがッた火の手にも、いまさらな仰天はせず
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)