裏道うらみち)” の例文
ある日かれは豆腐とうふおけをかついで例の裏道うらみちを通った、かれの耳に突然異様の音響が聞こえた。それは医者の手塚の家であった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ある、おじいさんはいつものように、ちいさな手車てぐるまきながら、そのうえに、くずかごをのせて、裏道うらみちあるいていました。すると、一けんいえから、んだのであります。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
この裏道うらみちをくるのにも、とちゅう、一、二ヵしょ山関やまぜきがあったが、小人数こにんずう関守せきもりや、徳川家とくがわけの名もない小役人などは、この一こうのまえには、鎧袖がいしゅうしょくあたいすらもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
介抱かいはうせよと言置て尻引からげ馳行はせゆきけりなきだに白晝ひるさへ人通りなき相良の裏道うらみち殊に夜中なれば人里遠く麥搗歌むぎつきうたとり宵鳴よひなき遙かに聞え前は名におふ大井川海道かいだう一の早瀬にて蛇籠じやかご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むら人達ひとたち——ことをんな人達ひとたちとほ裏道うらみちならんだ人家じんかふてむら裏側うらがはほそくついてました。とうさんのおうち裏木戸うらきどから、竹籔たけやぶについてまはりますと、そのほそ裏道うらみちました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うつくしいまなじり良人をつとはらをもやはらげれば、可愛かあいらしい口元くちもとからお客樣きやくさまへの世辭せじる、としもねつからきなさらぬにお怜悧りこうなお内儀かみさまとるほどのひとものの、此人このひと此身このみ裏道うらみちはたら
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このあたり裏道うらみちけて、松村まつむら小松こまつ松賀町まつかちやう——松賀まつかなにも、鶴賀つるかよこなまるにはおよばないが、町々まち/\もふさはしい、小揚連中こあげれんぢう住居すまひそろひ、それ、問屋向とんやむき番頭ばんとう手代てだい、もうそれ不心得ふこゝろえなのが
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
打殺し胴卷の金を取て頭割あたまわりにせんとて彼是二十人ばかり呼集め何でも奴は恐い早足はやあしだと云ひおつたからもう餘程よほどゆきし時分なれ共未々まだ/\三里の松原までは懸る氣遣ひなし本海道を追駈おひかけるより裏道うらみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やがて、その三人も、雷神らいじんたき岩頭がんとうをおりた。そして、裏道うらみちをめぐって、敵のまわしものにさとられぬように、ひそかに寒松院かんしょういん並木なみきにかくれ、うでをさすッて、合図あいず狼煙のろしを、待ちうけていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)