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へら
ふりがな文庫
“
箆
(
へら
)” の例文
陶戸
(
すえど
)
の中の久米一は、
素地
(
そじ
)
を寄せて一心不乱に
箆
(
へら
)
をとった。ミリ、ミリ、彼の骨が鳴って、
箆
(
へら
)
の先から血が
滴
(
したた
)
りはしまいかと思われる。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と手真似で知らせますると、島人は
頷
(
うなず
)
き、
箆
(
へら
)
のような物を出しまして、ギュウ/\と漕ぎ始めました。只今の
短艇
(
たんてい
)
のようなものと見えます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
乾漆の際、
箆
(
へら
)
でやると谷が丸くなるので、平鑿のような仕事は出来ないが、それが乾漆像に非常に柔い感じを出し得た。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
女学校で
用
(
つか
)
う手芸用の
箆
(
へら
)
だよ、此奴が裏の塀の根元を掘て手紙を埋めたり掘出したりした奴さ、塀の
内外
(
うちそと
)
は夜なら誰にも知れず一仕事やれるからね
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
箆
(
へら
)
を執って飯粒を練った経験をあまり持合せていないけれども、昔の家には必要に応じて糊を作るため、続飯用の板と箆とが備えてあったものであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
その
肝腎
(
かんじん
)
なものを
箆
(
へら
)
で
掬
(
すく
)
ったように根こそぎ
殺
(
そ
)
がれて、そこが平べったい赤い傷口になっているのだから、並みの
醜男
(
ぶおとこ
)
の顔よりも尚醜悪で、滑稽であった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
(5)ferule ——学校で、懲罰として児童を、とくにその
掌
(
てのひら
)
を、打つためにつくられた木の
箆
(
へら
)
。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
後から
箆
(
へら
)
や鉋で削った跡は土がザラザラしているから、釉掛けに当ってぴったりと釉がくっつかない。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
で、ワトソン君指先が
箆
(
へら
)
のように平べったくなっているだろう、——これがこの二つの職業には、共通の特徴なんだが、しかしこちらは表情に、霊感的なところがある
自転車嬢の危難
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
彼はある日、その妻と共に食事をしていると、あたかも来客があると報じて来たので、小さい金の
箆
(
へら
)
を肉へ突き刺したままで客間へ出て行った。妻も続いてそこを
起
(
た
)
った。
中国怪奇小説集:13 輟耕録(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は彼の貝殻、小さな木のかたまり、及び彼がピシャッと机を叩いて話に勢をつける扇形の木
箆
(
へら
)
を更によく見ようと思ったので、彼のこの演技に対して十セント支払った。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
職工が煉瓦の型に固めあげた粘土を、崩れないように陽で乾しながら、
箆
(
へら
)
で敲き固めるのだった。煉瓦を縛る縄を
綯
(
な
)
って売る者もあった。馬を持っている男達は駄賃に出た。
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そう言って、高い
木沓
(
きぐつ
)
を脱ぐと、なかから、それは異様なものが現われた。双方の
足趾
(
あし
)
は、いずれも外側に
偏
(
かたよ
)
っていて、大きな
拇趾
(
おやゆび
)
だけがさながら、大
箆
(
へら
)
のように見えるのだった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
他の女給仕人のように白粉もさして濃くはせず、髪も縮らさず、
箆
(
へら
)
のような櫛もささず、見馴れた在来のハイカラに結い、鼠地の絣のお召に横縦に縞のある博多の夏帯を締めていた。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その時は
糊
(
のり
)
を盆に
溶
(
と
)
いたり、
箆
(
へら
)
を使って見たり、だいぶ本式にやり出したが、首尾好く乾かして、いざ元の所へ建てるという段になると、二枚とも
反
(
そ
)
っ
繰
(
く
)
り返って敷居の
溝
(
みぞ
)
へ
嵌
(
は
)
まらなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いわゆる今日の外科道具で銀色の小刀、同じ色の
鋏
(
はさみ
)
、象牙の
箆
(
へら
)
、鹿の
鞣
(
なめ
)
し
革
(
がわ
)
、
鵠毛
(
くぐいげ
)
の
刷毛
(
はけ
)
、鋭い鉄針、
真鍮
(
しんちゅう
)
の輪、それと並べて大小の箱が、粉薬水薬を一杯に満たせ、整然として置かれてある。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「だが、さうなつたら、
俺等
(
わしら
)
はどういふ事になるんだ?」と、最初皺嗄声の男と話し合つてゐた
中央
(
まんなか
)
の男が、
麻紐
(
あさひも
)
で腰へ下げてある竹の
箆
(
へら
)
で
餅
(
もち
)
のやうにへばり着いてゐる鍬の土を払ひ落しながら
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
やがて、銀盤を竹の
箆
(
へら
)
で摩擦する音のような、いわゆる
呱々
(
ここ
)
の声がきこえました。私は思わず、赤ん坊を見つめました。然し、生れた子には夫人の予期したような異常現象は認められませんでした。
印象
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
夜の池にうごきて
繊
(
ほそ
)
き
月形
(
つきがた
)
はかがやく
箆
(
へら
)
のゑぐれる如し
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
眞鍮
(
しんちう
)
の
箆
(
へら
)
で
其
(
その
)
藥
(
くすり
)
を
紙
(
かみ
)
へ
塗抹
(
ぬ
)
つて
患部
(
くわんぶ
)
へ
貼
(
は
)
つてやつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
箆
(
へら
)
の秘伝、
釉薬
(
くすり
)
の合せ、彼が今日までおくびにも出さない秘密を、みなブツブツとひとりごとに
説
(
と
)
き
明
(
あか
)
し、そして
増長天王
(
ぞうちょうてんのう
)
の仕上げにかかっていた。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それがあんまり深く傷をつけ過ぎてもいけないし、浅過ぎてもいけないし、呼吸物なんで、その傷口から
松脂
(
まつやに
)
のようにどろりと
滲
(
し
)
み出て来る汁を
箆
(
へら
)
ですくって竹の筒へ入れる。
紀伊国狐憑漆掻語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一例として、
団扇
(
うちわ
)
屋は節と節との間に穴をあけた長い竹を団扇かけとして使用する。穴に団扇をさし込むのである。台所でも同じような物に木製の
匙
(
さじ
)
や
箆
(
へら
)
や串等をさし込む(図15)。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
それは、堅い紙がいったん折り曲げられて紙折り
箆
(
へら
)
で押えられ、そのもと折られた同じ折目のところから反対に折り返されたときにできる折れぐあいなんだよ。これを発見すれば十分だった。
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そして雲形の働きは、その主体の
箆
(
へら
)
ごしらえが下部より上部へ行くに従って、削りの度を荒くしている気脈と、何やら相通ずるものがあって、その景観に一層の必然性を持たせているかの如く見ゆる。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
象牙の
箆
(
へら
)
ででも擦るような、滑らかな音が聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かれの道中差が
箆
(
へら
)
の如く鳴ったのは、釘勘の十手の
鍵
(
かぎ
)
にねじられたか、あるいはたたき交わされたものでしょう。あっと、横に泳いで草の穂を切ったところを
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軟い
石膏
(
せっこう
)
でも練るような、
箆
(
へら
)
の音が聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
笠の
裡
(
うち
)
で、苦笑して見ていた。彼は、
先刻
(
さっき
)
からその軒つづきの
陶器師
(
すえものし
)
の細工場の前に立ち、子供のように何事も忘れて、
轆轤
(
ろくろ
)
や
箆
(
へら
)
の仕事に
見恍
(
みと
)
れていたのであった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——では、いい尽くせませんが、いいましょう。この
箆
(
へら
)
ですぱっと切ってある土の
痕
(
あと
)
ですが……」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、その一人のほうの六十ぢかい
翁
(
おきな
)
が、
箆
(
へら
)
と指のあたまで、今、一個の茶碗になりかけている
粘土
(
つち
)
をいじっているのを見ると、武蔵は、自分の不遜な気持がたしなめられた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——
箆
(
へら
)
の
痕
(
あと
)
を、武蔵どのは、どう思いますか」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“箆”の意味
《名詞》
(へら):竹・木・プラスチックなどで作った細長い薄い道具で、印を付けたり、物を練ったりするのに使う。
(出典:Wiktionary)
箆
漢検準1級
部首:⽵
14画
“箆”を含む語句
竹箆
竹箆返
箆棒
箆深
箆棒奴
靴箆
箆棒様
青竹箆
箭箆
箆麻子油
箆頭肆
箆臺
箆竹
箆目
一竹箆
箆台
白磨箆鳴鏑
木箆
寸箆坊
大箆柄