ごく)” の例文
また辻々のはり札で軍艦四十せきが大阪から五十万ごくの米を積んで急航する、というふうな報知をよむと全身に嬉しさの身ぶるいが走った。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
百万ごくの城下町に、いかにもふさわしい漬け物であって、それぞれ自分の家のかぶらずしを、自慢にしたものである。
かぶらずし (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ぼくらはそこの土性どせいもすっかりしらべた。水さえ来るならきっと将来しょうらい反当たんあたりごくまではとれるようにできると思う。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのほうの手柄てがらは忘れはおかぬぞ。この宝物に伊那丸の首をそえてさしだせば、いかにけちな家康いえやすでも、一万ごくや二万ごく城地じょうちは、いやでも加増するであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からずむかしをいはば三千ごく末流まつりうなりといふ、さらば旗下はたもと娘御むすめごにや、親御おやごなどもおはさぬか、一人ひとりみとはいたはしきことなりと、はやくもそのひと不憫ふびんになりぬ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昭和七年の晩秋に京浜に大暴風雨があって、東京市内はつぼ当り三ごくの雨量に、谷窪の大溝も溢れ出し、せっかく、仕立て上げた種金魚の片魚を流してしまった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こゝ長門國ながとのくに阿武郡あふのごほりはぎは江戸より路程みちのり二百七十里三十六萬五千ごく毛利家の城下にてことにぎはしき土地なり其傍そのかたはらに淵瀬ふちせといふ處ありむかし此處このところはぎの長者といふありしが幾世いくよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みやから舟でへ上がる。藤堂和泉守とうどういずみのかみどの、三十二万九百五十ごくとは、ばかにきざんだもんだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その金はわずかなもので、総理大臣その人でも年に麦が六百ごく内外、大蔵大臣が麦三百六十石、それもきっちり貰うかというに余程みょうです。貰わずに打ち棄てて置くのもある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ごくとまではならないような何百石というような小さな身分の人たちが住んでおりました。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これらの疲労した川筋を通して一年に七千四百万貫の塵芥じんかいを吹き、六十万ごく糞尿ふんにょうて、さらに八億立方しゃくにも余る汚水を吐き出す此の巨大な怪獣の皮腺ひせんかられる垢脂こうしに過ぎないのだから。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
安政あんせいころ本所南割下水ほんじよみなみわりげすゐんで、祿高ろくだかごくりやうした大御番役おほごばんやく服部式部はつとりしきぶやしきへ、おな本所林町ほんじよはやしちやう家主惣兵衞店いへぬしそうべゑたな傳平でんぺい請人うけにんで、中間ちうげん住込すみこんだ、上州じやうしう瓜井戸うりゐどうまれの千助せんすけふ、とし二十二三のせなあ
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「冗談言っちゃいけない。金沢かなざわだよ。百まんごくだ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
武田たけだ御曹子おんぞうしを生けどって、徳川さまへさしだせば、一万ごくや二万ごく恩賞おんしょうはあるにきまっています。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さしずめ、その恩賞おんしょうとして、一万ごくや二万ごくのご加増はあってしかるべしであろうといわんばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)