看破かんぱ)” の例文
しかし近頃ちかごろではもうそんなへた真似まねはいたしません。天狗てんぐがどんな立派りっぱ姿すがたけていても、すぐその正体しょうたい看破かんぱしてしまいます。
眼のさとい李は忽ちにそれを看破かんぱして、揃いも揃った恩知らずめ、義理知らずめと、彼はまず周に対して残虐な仕置しおきを加えた。
女侠伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いきなり横あいからでも組み付いて——と、玄蕃、すきうかがってじいッ——見つめているうちに、かれもまた一かど武芸者ぶげいしゃ、ただちに看破かんぱ出来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すぐ一目で特異性とくいせい看破かんぱし得らるるような、どこにもここにもあるという物品ぶっぴんではないというわけではなく、そこらじゅう
しかし保吉は今日こんにちもなおこの勇ましい守衛の秘密を看破かんぱしたことと信じている。あの一点のマッチの火は保吉のためにばかりられたのではない。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その時はこれはてっきり看破かんぱされたと胸をドキつかせたが、清三のいつもの散歩癖を知っている関さんは、べつに疑うような口吻こうふんをももらさなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
無論これも白蝙蝠団の魔手が伸びたので、彼等は令嬢すり替えを看破かんぱし得るものは、許婚の俊一氏の外にはない。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先年私が初めてこれを看破かんぱし、「日まわり日にまわらず」と題して当時の新聞や雑誌などに書いたことがあった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
今や時代は全く変革せられたりと称すれども、要するにそは外観のみ。一度ひとたび合理のまなこを以てその外皮がいひ看破かんぱせば武断政治の精神はごうも百年以前とことなることなし。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
太郎左衛門の部下の将、辻義助つじよしすけが指揮に立って来たものである。義助は、よくはらもすわっていた侍とみえ、すぐ奇襲の敵が六、七人に過ぎないことを看破かんぱして
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかしじゃの道はへびです。忽ち看破かんぱされてしまって、っ引きならないところを取っ捉まりました」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうしてその理由はすでに小林の看破かんぱした通りであった。だから彼はこの誤解から生じやすい岡本の好意を、できるだけ自分の便宜べんぎになるように保留しようと試みた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
養生法の引札すら既に変てこなるに、その上に引札の末半分は三十一文字に並べられたる養生法の訓示を以て埋められたるを見ていよいよ山師流のやり方なる事を看破かんぱせり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
教祖がちかごろ骨董こっとうを愛すというのは無理がないので、すでに私がその碁に於いて看破かんぱした如く彼は天性の公式主義者であり、定石主義者であり、保守家であり、常識家であって
爆発物は妾の所持品にせんといいたるに、いな拙者せっしゃの所持品となさん、もし発覚せばそれまでなり、いさぎよばくかんのみ、かまえて同伴者たることを看破かんぱせらるるなかれと古井氏はいう。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
吉之丞は安南人やマレー人の水主かこのすることを見ていたが、むかしの御朱印船で水主どもを追いまわした経験けいけんから推して、グッタリと長くなっている連中も、案外、弱っていないことを看破かんぱした。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
もっともそれは皆が皆、本当の赤外線男とは思えず、一寸ちょっと話を聞いただけでにせ赤外線男だと看破かんぱ出来るようなものもあった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「黒トカゲ」の変装をわが娘と信じきって、その隣のベッドに寝ながら、賊のからくりを看破かんぱし得なかったのは、なんといっても岩瀬氏の手落ちであった。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今や時代は全く変革せられたりと称すれども、要するにそは外観のみ。一度ひとたび合理のまなこもってその外皮がいひ看破かんぱせば武断政治の精神はごうも百年以前とことなることなし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
といって、そこまで複雑な人心のけわしさを尊氏がよく看破かんぱしていたというわけのものではなかろう。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云わば Delphi の巫女みこである。道の上の秘密ひみつもとうの昔に看破かんぱしているのに違いない。保吉はだんだん不平の代りにこのふたすじの線に対する驚異の情を感じ出した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一旦ここまで来た以上、鬼仏洞の秘密を看破かんぱするまでは、どんなことがあっても引揚げまいと思った。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もし尾張守高家が上洛途上で、矢作やはぎの事件からすべてを看破かんぱしているとしたら? ——兄高氏は六波羅の内で手もなく逮捕されてしまうにちがいない。そう案じられたのだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
画家や俳人の偽者にせものは、実際絵なり句なりを作らせてみれば看破かんぱするのも容易だが、小説家の偽者にせものは、眼の前で小説を作るなどと云ふ御座敷芸のない為に看破しにくいのに違ひない。
偽者二題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
仮令たとえ人違いを看破かんぱするものがあった所で、まさかそれが、惨殺された筈の山北鶴子だなどと誰が思うものか。広いN市に鶴子を知っている人は、ほんの数える程しかない筈だもの。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とにかく、私が気がつかなかったのにずばりと看破かんぱしたピース提督の科学の眼力のほどを、畏敬しないではいられない。——といって、ここで私が引下がる手はあるまい。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれどもさきに怒り出すのはいつも辰子にきまっていた。広子はそこに彼女自身の優越ゆうえつを感ぜずにはいられなかった。それは辰子よりも人間の心を看破かんぱしていると言う優越だった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はや看破かんぱしていたのである。けれど右馬介を宮方と見たのは、日満の眼違いでもある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或は他人の心中しんちゅう持物もちもの看破かんぱするなど、あらゆる奇怪事を行うことが出来る。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
第二には、偽の足跡をつける場合、往復の逆であることを看破かんぱされないために、足跡の重なることを避けた程綿密な彼が、自分の足癖をそのまま、内輪につけて置いたというのも信じ難いことです
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)