もも)” の例文
つくろわねどもおのずからなるももこびは、浴後の色にひとしおのえんを増して、おくれ毛の雪暖かきほおに掛かれるも得ならずなまめきたり。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
この時貫一は始めて満枝のおもてまなこを移せり。ももこびを含みてみむかへし彼のまなじりは、いまだ言はずして既にその言はんとせるなかばをば語尽かたりつくしたるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
にまのあたりに見奉りしは、二四紫宸ししん清涼せいりやう御座みくら朝政おほまつりごときこしめさせ給ふを、もも官人つかさは、かくさかしき君ぞとて、みことかしこみてつかへまつりし。
「もちろんです、総監閣下。メリー号の竜骨りゅうこつをつかむためには、ももひろの底へもぐってもいいと思っています」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よぶ たらちねの 母のみことか ももらず 八十やそちまたに 夕占ゆふげにも うらにもぞ問ふ 死ぬべき我がゆゑ
伊勢物語など (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
千たびももたびおしやるとも、なるまじものをうつつなの其方そなたや、われにぬしある、思ひとまれよ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
ももつた磐余いはれいけかも今日けふのみてや雲隠くもがくりなむ 〔巻三・四一六〕 大津皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
丘には橄欖かんらんが深緑りの葉を暖かき日に洗われて、その葉裏にはもも千鳥ちどりをかくす。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここを以ちてももつかさまた、天の下の人ども、みな輕の太子に背きて、穴御子みこ一五りぬ。ここに輕の太子畏みて、大前おほまえ小前をまへの宿禰一六大臣おほおみの家に逃れ入りて、つはものを備へ作りたまひき。
「えみしをひとり、ももなひと」とあるものも、夷人の勇猛なるその一人に対して、我ら天孫民族の百を以てするの義で、異族たるエミシに対して、天孫民族にヒトの語が用いられているのである。
「ケット」と「マット」 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
彼はよく六十斤にあまる大刀を使い、千里の征馬に乗ってもなお鉄胎てったいの強弓をひき、身には二箇の流星ついを秘し持って、一放すればいかなる豪敵も倒し、ももたび発してももたびはずすことがありません。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜑の子はももの千鳥か頬のかぶりひかり移らひ海朶ひびの間にをる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ももの泉が八方から集まって7280
ああ、穎割葉かひわればももの種子
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
只富貴をもて論ぜば、信玄しんげんがごとく智謀はかりごとももが百あたらずといふ事なくて、一三九一生の威を三国にふるふのみ。しかも名将の聞えは世こぞりてしやうずる所なり。
ただ僕が住所すみかは、天つ神の御子の天つ日繼知らしめさむ、富足とだる天の御巣みすの如一五、底つ石根に宮柱太しり、高天の原に氷木ひぎ高しりて治めたまはば、もも足らず一六八十坰手やそくまでに隱りてさもらはむ一七
「百伝ふ」は枕詞で、ももへ至るという意で五十に懸け磐余いわれに懸けた。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さて彼神は己が姿をももの形に
ももにあまれる年を経て
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)