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病葉
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わくらば
ふりがな文庫
“
病葉
(
わくらば
)” の例文
病葉
(
わくらば
)
も若葉も、
塵
(
ごみ
)
のように舞って、人々の鎧へ吹きつけて来るし、炊事している
兵站部
(
へいたんぶ
)
の、薪のけむりが風圧のために地を低く這って
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さながら人なき家の如く堅くも表口の障子を閉めてしまった土弓場の
軒端
(
のきば
)
には折々時ならぬ
病葉
(
わくらば
)
の
一片
(
ひとひら
)
二片
(
ふたひら
)
と
閃
(
ひらめ
)
き落ちるのが殊更に
哀
(
あわれ
)
深く
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山の紫は
茄子
(
なすび
)
の紫でもない、山の青は天空の青とも違う、秋に
殞
(
いん
)
ずる
病葉
(
わくらば
)
の黄にもあらず、多くの山の色は大気で染められる、この山々の色の変化は
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
私がここに書こうとする小伝の主
一葉
(
いちよう
)
女史も、
病葉
(
わくらば
)
が、霜の
傷
(
いた
)
みに
得
(
え
)
堪
(
たえ
)
ぬように散った、世に惜まれる
女
(
ひと
)
である。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
なお
焚火
(
たきび
)
はトロトロと燃え、土釜からは湯気が薄白く立ち、風に
煽
(
あお
)
られて
病葉
(
わくらば
)
が、ひっきりなしに、散って来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
井戸のなかの水は、朝のとほりに、静かに円く
漾
(
たた
)
へられて居る。それに彼の顔がうつる。柿の
病葉
(
わくらば
)
が一枚、ひらひらと舞ひ落ちて、ぼつりとそこに浮ぶ。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
風が出たらしく、しめきった雨戸に時々カサ! と音がするのは庭の柿の
病葉
(
わくらば
)
が散りかかるのであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
弱い葉や既に枯れかかつた
病葉
(
わくらば
)
は一溜もなく八方に飛び散り、木は根から大揺れに揺れる。
愛の詩集:02 愛の詩集のはじめに
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
弱い葉や既に枯れかかつた
病葉
(
わくらば
)
は一溜もなく八方に飛び散り、木は根から大揺れに揺れる。
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
その白楊の中には、枝が引き裂けたまま、幹からすっかり離れもせずに、
病葉
(
わくらば
)
と一緒にだらりと下へ垂れさがっているものもあった。一言にしていえば、何もかもが素晴らしかった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
病葉
(
わくらば
)
が
彼方
(
あちら
)
にも此方にもはらはらと
散
(
ちっ
)
ている。青い煙は一面に渓の隅々を
鎖
(
とざ
)
した。黒く頭の見えた小屋も
黄昏
(
たそがれ
)
となって分らなくなった。日はいつしか落ちて、大空は青々と澄み渡った。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この時ならぬ花見の催しに、あたり近所が急に春めいてきて、
病葉
(
わくらば
)
の落ちかかる晩秋の桜の枝に花が咲いたようです。折柄、参詣の人の足もとどまり、近所あたりの人もたかって来る。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
太い桜の
幹
(
みき
)
が黒ずんだ色のなかから、銀のような光りを秋の日に射返して、
梢
(
こずえ
)
を離れる
病葉
(
わくらば
)
は風なき
折々行人
(
こうじん
)
の肩にかかる。足元には、ここかしこに枝を辞したる古い
奴
(
やつ
)
ががさついている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あれは底が浅いし、あのように桃の枝がさしかかっているので、落ちこむのは花ばかりではなく、
病葉
(
わくらば
)
も腐った桃の
果
(
み
)
も、毛虫もある。たいていは流れだしてゆくが沈んで底に
溜
(
たま
)
るものも多い。
日本婦道記:桃の井戸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
病葉
(
わくらば
)
や石にも地にも去年のやう
普羅句集
(新字旧仮名)
/
前田普羅
(著)
○桜並木
病葉
(
わくらば
)
の下犬二匹
日記:13 一九二七年(昭和二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
土手へ
上
(
あが
)
った時には葉桜のかげは
早
(
は
)
や
小暗
(
おぐら
)
く水を隔てた人家には
灯
(
ひ
)
が見えた。吹きはらう
河風
(
かわかぜ
)
に桜の
病葉
(
わくらば
)
がはらはら散る。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
庭造師
(
にわつくり
)
が入って、古枝を刈ったり、
病葉
(
わくらば
)
をふるい落したり、五条西洞院の別荘は、きれいな川砂に、
箒
(
ほうき
)
の
目
(
め
)
が立っていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
枝葉が揺れ、
病葉
(
わくらば
)
が舞い落ち、焚火が靡き、草が
翻
(
ひるがえ
)
り、そうして姥の白髪と白衣とが、白い
熖
(
ほのお
)
のように
閃
(
ひらめ
)
いた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その振りがようやく
収
(
おさま
)
ったと思う頃、
颯
(
さっ
)
と音がして、
病葉
(
わくらば
)
はぽたりと落ちた。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ゆりの木の
病葉
(
わくらば
)
黄なり。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
土手
(
どて
)
へ
上
(
あが
)
つた時には
葉桜
(
はざくら
)
のかげは
早
(
は
)
や
小暗
(
をぐら
)
く水を
隔
(
へだ
)
てた
人家
(
じんか
)
には
灯
(
ひ
)
が見えた。吹きはらふ
河風
(
かはかぜ
)
に
桜
(
さくら
)
の
病葉
(
わくらば
)
がはら/\散る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
窓から部屋の中へ差し出されている楓の、血のように
紅
(
あか
)
い
病葉
(
わくらば
)
が、吹き込んで来た風に揺れたばかりであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ついに左馬介も怒って、こう叱りつけたとき、人が来たのか、
病葉
(
わくらば
)
が散るのか、かすかな
気配
(
けはい
)
が庭に聞えた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そろそろと掛けて行ってその穴のあとを足では踏めなかった。
病葉
(
わくらば
)
を掻き寄せて来て、そこらにかぶせた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
病葉
(
わくらば
)
がサラサラと降って来た。二本の剣の間を潜り、重り合って地へ散り敷く。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
昨日の嵐にふるい落とされた
病葉
(
わくらば
)
が、道一面に散りしいていて、そこを踏みしめてゆく大勢の足音の前に、
山小禽
(
やまことり
)
が腹毛を見せてツイツイとおどろき飛ぶ——。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
向かい合った三人の空間を、
病葉
(
わくらば
)
が揺れながら一葉二葉落ちた。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
信長のまわりから、近習がしきりに
噪
(
さわ
)
いでいる。
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
もはたと止むばかりだった。当の信長は、馬頭観音堂の濡れ縁に
病葉
(
わくらば
)
や塵も払わず腰かけて、ひとりの小姓に金扇で風を送らせていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
色づいた
病葉
(
わくらば
)
が微風にあおられ体の上へ落ちて来たりした。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
梅雨
(
つゆ
)
があがって、山には
病葉
(
わくらば
)
がしとどに落ちていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
色づいた楓の
病葉
(
わくらば
)
が、泉水の中へ散ったらしい。
五右衛門と新左
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
病葉
(
わくらば
)
が風に散るのだろう、肩の上へ落ちて来た。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
病
常用漢字
小3
部首:⽧
10画
葉
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
“病”で始まる語句
病
病気
病人
病院
病氣
病臥
病床
病躯
病褥
病室