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びやうしつ
と、
急に
來た
人の
院長だと
解つたので、
彼は
全身を
怒に
顫はして、
寐床から
飛上り、
眞赤になつて、
激怒して、
病室の
眞中に
走り
出て
突立つた。
あの
室は、
今夜だ、
今夜だ、と
方々の
病室で、
然う
言つたのを
五日續けて、
附添ひの、
親身のものは
聞いたんですつて。
隣室には、Aの
夫人、Cの
母堂、
若いTの
夫人等が
集つてゐた。
病室の
方での
忙しさうな
醫員や
看護婦の
動作、
白い
服の
擦音、それらは一々
病人の
容態のたゞならぬ
事を、
隣室に
傳へた。
玄關から
病室へ
通ふ
戸は
開かれてゐた。イワン、デミトリチは
寐臺の
上に
横になつて、
肘を
突いて、さも
心配さうに、
人聲がするので
此方を
見て
耳を
欹てゝゐる。
其が
貴方……
變な
事には、
病室で、
私の
寢臺の
上に、
然うやつて
仰向けに
寢て
居ますんでせう。
恐ろしき
病室を
抜けいでたるわがこころの
院長のアンドレイ、エヒミチは
玄關の
間から
病室の
内を
覗込んで、
物柔らかに
問ふので
有つた。