由来ゆらい)” の例文
旧字:由來
一口にも二口にも言うことのできない——つまり主として私の性格境遇から由来ゆらいした種々雑多な悲しい思い、味気ない思いもした。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
何、莫迦莫迦ばかばかしい遠慮ばかりしてゐる?——東京人と云ふものは由来ゆらいかう云ふ莫迦莫迦しい遠慮ばかりしてゐる人種なのだよ。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と記し、つづいて「黄金の塔」の由来ゆらいや、二十面相の従来の手口、明智名探偵の訪問記事などを、ながながと掲載けいさいしました。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
むかしむすめいけちてんだはなし由来ゆらいむらひとたちはっていますから、はばかって、おんな子供こどもかねつきどうへはけっして近寄ちかよせないことになっています。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
是を火車落とて宝物とする由来ゆらいは、むかし天正の頃雲洞庵十世北高和尚といひしは学徳全備がくとくぜんびの尊者にておはせり。
由来ゆらい、洛内攻めには、いつも近江路と大津の中間、瀬田川の瀬田ノ大橋、また宇治川が、攻守決戦の境になる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな由来ゆらいや伝説の発生地にふさわしい古雅なおちついた境地でして、そのままに謡の中の修行僧が出て来ても、一向不思議はないくらいの静けさを見せております。
女の話・花の話 (新字新仮名) / 上村松園(著)
又さうした芸術観のある程度まで文学の上に成り立つかも知れない。しかし日記であることは確かである。由来ゆらい『ほととぎす』派の写生は、さういふ処から発達して来た。
自他の融合 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
この遊びをする日が、特に正月のまつうちとなっているのは、由来ゆらいの久しいことかと思う。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その昔、国内麻の葉のごとくみだれた戦国の世に、スペインよりわたってきた、一宣教師によって建てられたという伝説以外、誰もこの、ヘクザ館の由来ゆらいを知っているものはない。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
最終日に「良弁杉りょうべんすぎ由来ゆらい」の一部分を見て、夕飯後明治座めいじざへ行ったそうである。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
巡錫じゅんしゃくの打ち合せなどを済ましたあと、しばらく雑談をしているうちに、老師から縁切寺えんきりでら由来ゆらいやら、時頼夫人の開基かいきの事やら、どうしてそんな尼寺へ住むようになった訳やら、いろいろ聞いた。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞く大阪市民は由来ゆらい政治の何物たるを解せざりしに、この事件ありてより、ようやく政治思想を開発するに至れりとか、また以てしょうらの公判が如何いかに市民の耳目じもくを動かしたるかを知るに足るべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
また、彼の話しっぷりそのものが、咳やうなずき工合と同じに突拍子もなくて、黒竜会の壮士だったというのも、いくらかそういうこともあったのだろうが、彼の話しぶりにも由来ゆらいしているのだろう。
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
ファイトから七代の孫にあたるヨハン・セバスティアン・バッハが、その生涯をルーテル派の信仰にゆだね、清貧に甘んじて敬虔けいけんな生活を続けた由来ゆらいはきわめて深いものがあると言わなければならない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
だい一、ごんごろがねという名前なまえ由来ゆらいだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
是を火車落とて宝物とする由来ゆらいは、むかし天正の頃雲洞庵十世北高和尚といひしは学徳全備がくとくぜんびの尊者にておはせり。
本来ほんらい蛾次郎がじろうは泣いてもえてもここでその首を、侠党きょうとうにもらわれなければならないのであるが、独楽こま由来ゆらいの話から、いくぶんそのじょう酌量しゃくりょうされて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正雄まさおは、金魚きんぎょりのおじさんに、あおいボタンの由来ゆらいはなしたのです。すると、金魚きんぎょりは
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
由来ゆらい保吉の勤めている海軍の学校の教官は時代を超越したこんサアジ以外に、いかなる背広をも着たことはない。粟野さんもやはり紺サアジの背広に新らしい麦藁帽むぎわらぼうをかぶっている。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小児は全体に木切きぎれを持って遊ぶを好み、それを持つとかならず少しばかり昂奮こうふんする。なんでもないことのように我々は考えがちだが、実は隠れたる由来ゆらいのあったことかも知れぬのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
蓉岳ようがくも書画をよくし文事ぶんじもありて好事かうずものなればこれをきゝてひざをすゝめ、菓子は吾が家産かさんなり、ねりやうかんを近来のものといふ由来ゆらいしめし玉へといふ。
三木城は由来ゆらい、毛利加担の旗頭はたがしらといってもよい程、明白なる反信長の旗幟きしを立てていたが、黒田官兵衛の熱烈な信念と誠意の弁は、ついに城主の長治をして
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蓉岳ようがくも書画をよくし文事ぶんじもありて好事かうずものなればこれをきゝてひざをすゝめ、菓子は吾が家産かさんなり、ねりやうかんを近来のものといふ由来ゆらいしめし玉へといふ。
その奇蹟きせきを、地蔵行者じぞうぎょうじゃの菊村宮内は、竹生島神伝ちくぶしましんでん独楽こま火独楽ひごま水独楽みずごまをめいめいがふところに持っていた功力くりきであるといって、その由来ゆらいをつぶさに話した。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由来ゆらい、この京都には常時たくさんな兵は置けぬ。事あるたび、諸国の大名や家人どもへめしを発して呼び集めるのがならい。むずかしいことではある。おまえは尊氏の子でも尊氏ではない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由来ゆらい信州人は、智慾はさかんなるも、争気に富み、郷党和せず、という欠陥けっかんがあるのと、痩地の十万石で、貧乏財政をやりくりしてる藩役人は、狡策こうさくけ、一揆の対抗にはれきっているし
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ戦雲のつばさはどんなのりの山だろうがけてはいない。——ついみねの南、大津の三井寺みいでらは、由来ゆらい、叡山とは何事につけても反目していた。幾世にわたって対峙してきた宗門と宗門だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また盲人たちを総括する職屋敷の土地とを与えられたことに由来ゆらいする。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由来ゆらい、お人のよい殿様です。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)