瑣細ささい)” の例文
躬恒のは瑣細ささいな事を矢鱈やたらに仰山に述べたのみなれば無趣味なれども家持のは全く無い事を空想で現はして見せたる故面白く被感候。
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
只興奮しているために、瑣細ささいな事にも腹を立てる。又何事もないと、わざわざ人をいどんで詞尻ことばじりを取って、いかりの動機を作る。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
始よりその人を怪まざらんにはこのとがむるに足らぬ瑣細ささいの事も、大いなる糢糊もこの影をして、いよいよ彼がうたがひまなこさへぎきたらんとするなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その瑣細ささい道理だうりふのはたとへば、眞赤まツかけた火箸ひばしながあひだつてると火傷やけどするとか、またゆび小刀ナイフごくふかると何時いつでもるとかふことです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
世の中のことというものはなかなかうまくゆかないものであって、運命の神のいたずらとでも云おうか偶然が作った瑣細ささいな出来ごとから、その年の十月
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
瑣細ささいな事のようだが、心理論理の学論より政治外交の宣伝をすにこの辺の注意が最も必要で、回教徒に輪廻りんねを説いたり、米人に忠孝を誇ってもちっとも通ぜぬ。
大家の秘密は形式によって内容を滅却するにあるとシルレルがいったように、秀れた魂はいかに瑣細ささいに見える事柄にも深い意味を見出すふしぎな力をもっておる。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
瑣細ささいな心持ではありますが、改まった客席にこういうことのあるのはいい心持のしないものであります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そして人間の歴史が、そういう瑣細ささいな盲点のために著しく左右されるようなこともありそうである。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
こうして、その出世は眼前にある時、彼は瑣細ささいのことから激しく立腹して、かの家僕をち殺した。
もし、見聞を広くし、経験を重ねたる人ならば、そんなに妖怪が瑣細ささいのことにまであるべき道理なく、なにか他にしかるべき原因のあることと思っておればよいのである。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
瑣細ささいな凶事がおこる時などは、まるで何か爪の先でく様な微かな音がする、他人がもしはたればその人にも聞えるそうだ、私はこういう仕事をしているから、もしそういうひびきを聞けば
頭上の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
御意ぎょいかなわぬとなると瑣細ささいの事にまで眼を剥出むきだして御立腹遊ばす、言わば自由主義の圧制家という御方だから、哀れや属官の人々は御機嫌ごきげんの取様にまごついてウロウロする中に、独り昇はまごつかぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
僕の心臓は瑣細ささいな事にあつても氷のさはつたやうにひやひやとしてゐる。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
躬恒のは瑣細ささいな事をやたらに仰山に述べたのみなれば無趣味なれども、家持やかもちのは全くない事を空想で現はして見せたる故面白く被感かんぜられ候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そう云ふ風に忠之と下役のものとが、直に取り計らふ件々は、最初どうでも好いやうな、瑣細ささいな事ばかりであつたが、それがいつの間にかやゝ大きい事に及んで來た。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかし毛の締め方の研究では、学位は貰えないので、短年月のうちに、とにかく論文を書いてという場合には、どうしても、そういう「瑣細ささいな点」に拘泥してはおられない。
科学は役に立つか (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
殊にこの年の正月、木挽町こびきちょう山村座やまむらざの木戸前で、水野の白柄組と幡随長兵衛ばんずいちょうべえの身内の町奴どもと、瑣細ささいのことから衝突を来したのが根となって、互いの意趣がいよいよ深くなった。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いゝえ、てから、其上そのうへどく」かどくでないかをたしかめなくては』とひました、それとふのもあいちやんが、友達ともだちからをしへられた瑣細ささい道理だうりおぼえてなかつたため、野獸やじうころされたり
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
躬恒のは瑣細ささいなことをやたらに仰山ぎょうさんに述べたのみなれば無趣味なれども、家持やかもちのは全くないことを空想で現わしてみせたるゆえ面白く被感かんぜられ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
水晶管に針金を封じ込むことは、真空技術一般からみれば、ほんの瑣細ささいなことである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
Toutツウ ceシヨ quiキイ brilleブリユ, n'estネエ pas orパアゾオル」と云ったので、始てなる程と悟った事や、それからベルリンに著いた当時の印象を瑣細ささいな事まで書いてあって
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
献酬の風習などは、瑣細ささいなことであるが、問題はその基調をなしている合理的精神の欠如である。こういう風潮が社会を支配している国では、待合政治はいつまでも無くならないであろう。
無知 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)