片附かたづ)” の例文
『なあに、柳川君やながはくんには片附かたづけるやうな荷物にもつもないのさ。』と濱島はまじまこゑたかわらつて『さあ。』とすゝめた倚子ゐすによつて、わたくしこの仲間なかまいり
いほりのなかはさつぱりと片附かたづいてゐました。まんなかに木の卓子テーブルがあつて、椅子いすが四つ並んでゐました。片隅かたすみにベッドがありました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
藥種屋 (藥瓶を渡しながら)これをばおこのみの飮料いんれうれてませられい。たとひ二十人力にんりきおじゃらしませうとも、立地たちどころ片附かたづかッしゃりませう。
ないものはないので、座敷ざしきると、あとを片附かたづけて掃出はきだしたらしく、きちんとつて、けたてのしんほそめた台洋燈だいらんぷが、かげおほきくとこはして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この某国大使館の、いろいろある始末機関をそれからそれへと動員して使ってみたが、どういうわけか、たった一人の博士を片附かたづけることは仲々容易よういに成功しなかった。
はい、あの死骸しがい手前てまへむすめが、片附かたづいたをとこでございます。が、みやこのものではございません。若狹わかさ國府こくふさむらひでございます。金澤かなざは武弘たけひろとしは二十六さいでございました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もどしと餘震よしんとの混同こんどうたん言葉ことばうへあやまりとして、其儘そのまゝこれを片附かたづけるわけにはゆかぬ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「おじいさん。今のうぢに草片附かたづげで来るべが。」と達二の兄さんが云いました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
便箋びんせん片附かたづけて二階のバルコニイに行ってみると、きのうの深夜、旧館の鳴沢イト子とかいう若い女の塾生が死んで、ただいま沈黙の退場をするのを、みんなで見送るのだという事であった。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
海苔とると浜片附かたづきてゆく舟の目馴れし不二は見ずて榜ぐらむ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
残りの奴は酒と悪魔が片附かたづけた——
はい、あの死骸は手前の娘が、片附かたづいた男でございます。が、都のものではございません。若狭わかさ国府こくふの侍でございます。名は金沢かなざわの武弘、年は二十六歳でございました。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ジョバンニは立って窓をしめお皿やパンの袋を片附かたづけると勢よく靴をはいて
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おばさんは店を片附かたづけながらいいました。
市郎の店 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしはをとこ片附かたづけてしまふと、今度こんどまたをんなところへ、をとこ急病きふびやうおこしたらしいから、てくれとひにきました。これも圖星づぼしあたつたのは、まをげるまでもありますまい。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「うんうん。そうが。さあ弁当べんとう食ってで草片附かたづげべ。達二。弁当食べろ。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)