爺様じいさま)” の例文
旧字:爺樣
「むむ、じゃ何だ、腰に鈴をつけてけまわるだ、帰ったら一番、爺様じいさまと相談すべいか、だって、おあしにゃならねえとよ。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爺様じいさま御指導ごしどうのおかげ近頃ちかごろのあなたはよほど立派りっぱにはなりましたが、まだまだあきらめがりないようにおもいます。
『ふウ……む。あの爺様じいさま。このごろまた、やって来るのか』
……ただし窮してまで虎の皮代用の申訳をした、というので、浅間山の麓の茶屋の亭主は語り、六部の爺様じいさまは聞いて、世に伝えたのは事実らしい。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『そなたの、そのみぐるしい姿すがたなんじゃ! まだ執着しゅうじゃく強過つよすぎるぞ……。』わたくし何度なんどみぐるしい姿すがたをお爺様じいさまつけられてお叱言こごと頂戴ちょうだいしたかれませぬ。
太平記を拾いよみに諳記そらでやるくらい話がおもしろい爺様じいさまだから、日が暮れるまで坐り込んで、提灯ちょうちんを借りて帰ることなんぞあった馴染なじみだから、ここへ寄った。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのお爺様じいさまむかしから産土神うぶすなのお神使つかいとして、あらたに帰幽きゆうしたもの取扱とりあつかうことにかけてはこのうえもなくお上手じょうずで、とてもわたくしなどの足元あしもとにもおよぶことではありませぬ。
村長の爺様じいさまが、突然七八歳ななやッつ小児こどものような奇声を上げて、(やあれ、見やれ、ねずみが車をいて来た。)
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うちばかりじゃない、今でも盆にはそうだろうが、よその爺様じいさま婆様ばあさま、切籠持参は皆そうするんだっけ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せた鬱金うこんの風呂敷、真中まんなかを紐でゆわえた包を、西行背負さいぎょうじょいに胸で結んで、これも信玄袋を手に一つ。片手につえいたけれども、足腰はしゃんとした、人柄のいお爺様じいさま
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暗い舞台で、小さな、そして爺様じいさまの饂飩屋は、おっかな、吃驚びっくり、わなわな大袈裟おおげさに震えながら
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてさてねじるわ、ソレそこが捻平さね。勝手になされ。さあ、あの立ったり、この爺様じいさまに遠慮は入らぬぞ。それ、何にも芸がないと云うて肩腰をさすろうと卑下をする。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上端あがりばなに客を迎顔むかえがお爺様じいさまの、トやつた風采ふうさいは、建場たてばらしくなく、墓所はかしょ茶店ちゃみせおもむきがあつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
新盆にいぼんに、切籠きりこげて、父親おやじと連立って墓参はかまいりに来たが、その白張しらはりの切籠は、ここへ来て、仁右衛門爺様じいさまに、アノ威張いばった髯題目ひげだいもく、それから、志す仏の戒名かいみょう進上しんじょうから、供養のぬし、先祖代々の精霊しょうりょう
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
素見ひやかし追懸おっかけた亭主が、値が出来ないで舌打をして引返す……煙草入たばこいれ引懸ひっかかっただぼはぜを、鳥の毛の采配さいはいで釣ろうと構えて、ストンと外した玉屋の爺様じいさまが、餌箱えさばこしらべるていに、財布をのぞいてふさぎ込む
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と照れたようにその頭をびたり……といった爺様じいさまなのである。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お手を取ります、お爺様じいさま、さ、私と一所に。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)