ゆすぶ)” の例文
旧字:
とせい/\、かたゆすぶると、ひゞきか、ふるへながら、をんな真黒まつくろかみなかに、大理石だいりせきのやうなしろかほ押据おしすえて、前途ゆくさきたゞじつみまもる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『これ。』と背中の児をゆすぶつて、相不変あひかはらずニタ/\と笑つてる。子守をするので学校に出られぬといふのだらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
保太郎氏は愚者のむれからおいてきぼりにされた図体を小刻みにゆすぶりながら「僕の画を買つておくのは、田地を持つてゐると同じで、屹度孫子まごこ利益ためになるよ。」
あれは遠い丸の内、それでも天気のいい時には吃驚びっくりするほど座敷の障子をゆすぶる事さえある、されば、すぐ崖下に狐を打殺うちころす銃声は、如何に強く耳を貫くであろう。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
私はグッタリしている静子の肩に手をかけて、軽くゆすぶった。だが、彼女は恥と後悔の為に顔を上げることが出来なかったのか、身動きもせず、一ごんも物を云わなかった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、ゆすぶるとたんにがらりと転げた音がする。飛び込んで見ると藤川庄三郎は何時いつの間にか合口を取って、立派に腹一文字に掻切って死んで居りました。びっくりしたのはお美代。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つねに必ずかのアリエルの如く、玲瓏れいろうとして澄明なる一物が軽くわたしの背をゆすぶるのです。即ち知る、あなたと凡ての造物との間には、不思議な連鎖がつながっているのです。そうです。
彼のたましいはゆすぶられ通しに揺られた。ずっと以前に岸本もまだ若く友人も皆な若かった頃に、彼には青木という友人があったが、青木は中野の友人なぞを知らないで早く亡くなった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
思わずこう勢いつけて前後左右にゆすぶったら、フイと提灯の灯が消えてしまった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
それでも正体がなかったから、肩に手をかけてゆすぶった。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まへまたなんだ、つてゞもゆすぶつてゞもおこせばいのに——しかしつかれた、わたし非常ひじやうつかれてる。おまへわかれてから以来このかた、まるで一目ひとめないんだから。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして便所の中で体をゆすぶつて一人で笑つた。苦り切つた××の眇目かためな顔と其の話した事柄との不思議な取合せは、何うにも斯うにも可笑しくつて耐らなかつたのだ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そうで無いにしても表で暴れて家をゆすぶると家が潰れるでしょう、奴の力は大した者だから、やアというとうちに地震がって打潰ぶっつぶされてしまいます、なんにしてもうちにいると面倒だからげて下さい、え
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今松は、伯水老人の傘持つ手をば、上からギュッとゆすぶって握った。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
目敏めざとそうな人物が、と驚いて手をかざすと、すすきの穂をゆすぶるように、すやすやと呼吸いきがある。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これで分ったろう、放したまえ、早く擦抜けようと、もじつくのが、おんなせなを突いてゆすぶるようだから、慌ててまたすくまりましたよ。どこを糸で結んで手足になったか、女の身体からだがまるで綿で……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
算を乱して仰向あおむけにどたりと倒れ、畳を蹴立けたて、障子をゆすぶり、さア殺せ、くるしいわい、切ないわい、死ぬぞ、のたるぞ、と泣喚なきわめくに、手の附けようもあらざれば、持余したる折こそあれ、奥にて呼ぶ声
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あれ、見や、島田をゆすぶってら。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と火鉢をぐいぐいとゆすぶって。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)