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抜衣紋
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ぬきえもん
ふりがな文庫
“
抜衣紋
(
ぬきえもん
)” の例文
旧字:
拔衣紋
が、争われないのは、
不具者
(
かたわ
)
の
相格
(
そうごう
)
、肩つきばかりは、みじめらしくしょんぼりして、
猪
(
い
)
の熊入道もがっくり投首の
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
で居たんだよ。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一人は五十ばかりの梅干婆、毛の薄い頭に小さな髷を乗せ、一楽かなんぞの大時代な衣裳を
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にし、長火鉢の中に顎を突入れんばかりにして
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お妾は
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にした
襟頸
(
えりくび
)
ばかり驚くほど真白に塗りたて、浅黒い顔をば拭き込んだ
煤竹
(
すすだけ
)
のようにひからせ、
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しの
両鬢
(
りょうびん
)
へ
毛筋棒
(
けすじ
)
を挿込んだままで
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
色まちの女が
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にするのは天然自然の智慧である。恋する女に向って最後の決心をする動機の一つが其の可憐な首すじを見た事にあるという話をよく聞く。
人の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
火の気を消してしまった火鉢の上に手をかざし、張子の虎のように
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
した白い首をぬっと突き出して、じじむさい
恰好
(
かっこう
)
で坐っているところを、豹一は立たされ、人力車に乗せられた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
▼ もっと見る
背中の見えるまでグッと
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にして、真白に塗った
頸
(
くび
)
にマガレットに結って、
薔薇
(
ばら
)
の
簪
(
かんざし
)
を挿したり、
結綿
(
ゆいわた
)
島田に結って、赤と水浅黄の鹿の子をねじりがけにしたりして、お酒をのんでいた。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
被布の
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
で、ぐたりとなった、尼婆さんの形が、散らかった杯盤の中に目に見えるようで、……二階でまだ唄っている。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……「ああ、お有難や、お有難い。トンと苦悩を忘れました。お有難い。」と三味線包、がっくりと
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……「あゝ、お
有難
(
ありがた
)
や、お有難い。トンと苦悩を忘れました。お有難い。」と
三味線包
(
しゃみせんづつみ
)
、がつくりと
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
隣座
(
となりざ
)
に、どたりと
真俯向
(
まうつむ
)
けになった、百姓
体
(
てい
)
の
親仁
(
おやじ
)
は、
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
の背中に、
薬研形
(
やげんがた
)
の穴がある。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悪く
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
で、胸を折って、横坐りに、
蝋燭火
(
ろうそくび
)
へ
紙火屋
(
かみぼや
)
のかかった
灯
(
あかり
)
の向うへ、ぬいと半身で出た工合が、
見越入道
(
みこしにゅうどう
)
の
御館
(
おやかた
)
へ、
目見得
(
めみえ
)
の雪女郎を連れて出た、
化
(
ばけ
)
の慶庵と言う
体
(
てい
)
だ。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
扁平
(
ひらった
)
く、薄く、しかも大ぶりな耳へ垂らして、
環珠数
(
わじゅず
)
を掛けた、鼻の長い、
頤
(
おとがい
)
のこけた、小鼻と目が窪んで、飛出した形の八の字眉。大きな口の下唇を反らして、かッくりと
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょこなんと坐って
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
で、客の
懐中
(
ふところ
)
を上目で見るいわゆる
新造
(
しんぞ
)
なるもので。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
麦稈帽
(
むぎわらぼう
)
を
鷲掴
(
わしづか
)
みに
持添
(
もちそ
)
へて、
膝
(
ひざ
)
までの
靴足袋
(
くつたび
)
に、
革紐
(
かはひも
)
を
堅
(
かた
)
くかゞつて、
赤靴
(
あかぐつ
)
で、
少々
(
せう/\
)
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
に
背筋
(
せすぢ
)
を
膨
(
ふく
)
らまして——
別
(
わか
)
れとなればお
互
(
たがひ
)
に、
峠
(
たふげ
)
の
岐路
(
えだみち
)
に
悄乎
(
しよんぼり
)
と
立
(
た
)
つたのには——
汽車
(
きしや
)
から
溢
(
こぼ
)
れて
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
胴づまりで肥った
漢子
(
おとこ
)
の、みじめなのが
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
になって、路地口の
肴屋
(
さかなや
)
で、自分の見立てで、その
鮪
(
まぐろ
)
を刺身に、と
誂
(
あつら
)
え、塩鮭の切身を竹の皮でぶら下げてくれた
厚情
(
こころざし
)
を
仇
(
あだ
)
にしては済まないが
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人懐
(
ひとなつッ
)
こいといったような調子で、光起に
背
(
せな
)
を
捻向
(
ねじむ
)
けると、
頸
(
うなじ
)
を伸して
黒縮緬
(
くろちりめん
)
の羽織の裏、
紅
(
くれない
)
なるを片落しに背筋の
斜
(
ななめ
)
に見ゆるまで、
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
に
辷
(
すべ
)
らかした、肌の色の
蒼白
(
あおじろ
)
いのが、殊に干からびて
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見た
体
(
てい
)
は、
褪
(
あ
)
せた
尻切
(
しりきり
)
の茶の
筒袖
(
つつッぽ
)
を着て、袖を合わせて、手を
拱
(
こまぬ
)
き、紺の
脚絆穿
(
きゃはんばき
)
、
草鞋掛
(
わらじがけ
)
の細い脚を、車の裏へ、
蹈揃
(
ふみそろ
)
えて、
衝
(
つ
)
と伸ばした、
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
に
手拭
(
てぬぐい
)
を巻いたので、襟も隠れて見分けは附かぬ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
矮小が、心得、
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
の
突袖
(
つつそで
)
で、据腰の露払。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“抜衣紋”の解説
抜衣紋(ぬきえもん)は、女性の和服の着付け方のひとつである。
後襟(衣紋)を引き下げて、襟足が現れ出るように着ること。
(出典:Wikipedia)
抜
常用漢字
中学
部首:⼿
7画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
紋
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
“抜”で始まる語句
抜
抜刀
抜擢
抜身
抜足
抜萃
抜目
抜出
抜手
抜打