手車てぐるま)” の例文
日の暮れ/″\に手車てぐるまの諸君も着いた。道具どうぐの大部分は土間に、残りは外にんで、荷車荷馬車の諸君は茶一杯飲んで帰って行った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ところが清にも別段の考えもなかったようだ。ただ手車てぐるまへ乗って、立派な玄関げんかんのある家をこしらえるに相違そういないと云った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おどしだに山間さんかんから、かわるがわるに手車てぐるまんで竹童ちくどうを助けだしてきた少女たちは、その松原の横へはいって、しきりと彼を看護かんごしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、おじいさんは、いろいろなものをって、それを手車てぐるまうえにのせました。南天なんてんはちものせました。そして、ガラガラといてはこりました。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
手車てぐるま荷馬車にばしゃに負傷者をつんでとおるのもあり、たずねびとだれだれと名前をかいた旗を立てて、ゆくえの分らない人をさがしまわる人たちもあります。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それは成程なるほどやはらかひ衣類きものきて手車てぐるまりあるくとき立派りつぱらしくもえませうけれど、とゝさんやかゝさんにうしてあげやうとおもこと出來できず、いはゞ自分じぶん皮一重かはひとゑ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京の市中で見ていると、多くの商人は手車てぐるまくようになったが、今でも天秤棒をかついでくるのは豆腐屋に金魚売り、その他液体のはいった容器をになう者に多い。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此時このとき白襟しろえり衣紋えもんたゞしく、いお納戸なんど單衣ひとへて、紺地こんぢおびむなたかう、高島田たかしまだひんよきに、ぎん平打ひらうちかうがいのみ、たゞ黒髮くろかみなかあはくかざしたるが、手車てぐるまえたり、小豆色あづきいろひざかけして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、乞食こじきじゃない。あちらにくるまいてある。」と、おじいさんが、いいました。なるほど、手車てぐるまいてあって、そのくるまうえにかごがっていました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
村には手車てぐるまやリヤカアが行きわたった今日こんにち、どうしてなおいくつも古風な方法、たとえば棒でいうならば、前からあった三通り以上のものが、今でもなお使われているのか
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ある、おじいさんはいつものように、ちいさな手車てぐるまきながら、そのうえに、くずかごをのせて、裏道うらみちあるいていました。すると、一けんいえから、んだのであります。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちいちゃんも、うれしかったのです。往来おうらいると、ひとがたくさんとおっていました。草花屋くさばなやが、手車てぐるまうえへ、いろいろの草花くさばなはちをのせて、「草花くさばなや、草花くさばな。」といいながら、いていきました。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)