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ふる
ふりがな文庫
“
戦
(
ふる
)” の例文
旧字:
戰
「
余
(
あんま
)
り
酷
(
ひど
)
すぎる」と
一語
(
ひとこと
)
僅
(
わず
)
かに
洩
(
もら
)
し得たばかり。妻は涙の泉も
涸
(
かれ
)
たか
唯
(
た
)
だ自分の顔を見て血の気のない
唇
(
くちびる
)
をわなわなと
戦
(
ふる
)
わしている。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
平田は上を
仰
(
む
)
き眼を
合
(
ねむ
)
り、
後眥
(
めじり
)
からは涙が頬へ
線
(
すじ
)
を
画
(
ひ
)
き、
下唇
(
したくちびる
)
は噛まれ、上唇は
戦
(
ふる
)
えて、帯を引くだけの勇気もないのである。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
そう思って、この痩せ衰えた
盲人
(
めくら
)
を見ると、何となくこの盲人が怖しいように感ぜられた。二人はその後無言であった。私の手は
折々
(
おりおり
)
戦
(
ふる
)
えた。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし自分も貧乏が
大好
(
だいすき
)
だとも
云兼
(
いいかね
)
る。貧乏神の渋団扇で
煽
(
あお
)
がれて
戦
(
ふる
)
えながら、ああ涼しいと顎を撫でるほど納まりかえっている訳にも行かぬ。
貧富幸不幸
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
女のかおり——書中の主人公が昔の恋人に「ファースト」を読んで聞かせる段を講釈する時には男の声も烈しく
戦
(
ふる
)
えた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
としきりに彼らを
呑
(
の
)
んでかからんとつとめたが、なかなか
呑
(
の
)
めない。いかに心中では豪傑を
衒
(
てら
)
わんとするも、
真底
(
しんそこ
)
よりの豪傑でないから、ますます
怖気
(
おじけ
)
てガタガタ
戦
(
ふる
)
える。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
無理やりに葡萄酒の
罎
(
びん
)
を
握
(
つか
)
ませて、男の手の上に御自分の手を持添えながら、茶呑茶椀へ注ごうとなさいました。御二人の手はぶるぶると
戦
(
ふる
)
えて、酒は
胡燵掛
(
こたつがけ
)
の上に
溢
(
こぼ
)
れましたのです。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
といいながら、
銚子
(
ちょうし
)
の裾の方を器用に支えて、渡瀬の方にさし延べた。渡瀬もそれを受けに手を延ばした。親指の股に仕事
疣
(
いぼ
)
のはいった巌丈な手が、不覚にも心持ち
戦
(
ふる
)
えるのを感じた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
自分の前に寒さと一種の畏敬の念に
戦
(
ふる
)
えて立っている子供を見下した——その眼には涙が
湛
(
たた
)
えられて、顔には
神々
(
こうごう
)
しい柔和な光りが輝いていた。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
まだ
温気
(
あたたかみ
)
を含まぬ朝風は頬に
砭
(
はり
)
するばかりである。窓に顔を
晒
(
さら
)
している吉里よりも、その後に立ッていた善吉は
戦
(
ふる
)
え上ッて、今は耐えられなくなッた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
いや、番頭の白い顔がちらとこっちを振り返ったのが見えた。てっきりその身の罪を告げている! とお作は思った。お作は顔を
蒼青
(
まっさお
)
にしてぶるぶると
戦
(
ふる
)
えた。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
と
眉
(
まゆ
)
を
皺
(
しわ
)
むる折も折、
戸外
(
おもて
)
を通る納豆売りの
戦
(
ふる
)
え声に覚えある奴が、ちェッ
忌々
(
いまいま
)
しい
草鞋
(
わらじ
)
が切れた、と打ち
独語
(
つぶや
)
きて行き過ぐるに女房ますます気色を
悪
(
あ
)
しくし
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
八千円ばかりの金高から百円を
帳面
(
ちょうづら
)
で
胡魔化
(
ごまか
)
すことは、たとい自分に為し得ても、直ぐ
後
(
あと
)
で
発覚
(
ばれ
)
る。又自分にはさる不正なことは思ってみるだけでも身が
戦
(
ふる
)
えるようだ。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
私は頭から冷水を浴びせられたよりも
戦
(
ふる
)
い上ったが、
此処
(
ここ
)
だと思って、度胸を据えて、戦える指頭で皺になった薄青い袋から小さな紙包を
摘
(
つま
)
み出して
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「吉里さん、
献
(
あ
)
げるよ、献げるよ、私しゃこれでもうたくさんだ。もう思い残すこともないんだ」と、善吉は猪口を出す手が
戦
(
ふる
)
えて、眼を
含涙
(
うるま
)
している。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
荒れわたる海の怒濤の中で惨めに
戦
(
ふる
)
へてゐる私を発見した。孤独と戦ふために歯を喰ひしばつてつとめて忍耐してゐる私を発見した。次第に私はいろ/\なものを捨てた。
心の階段
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
延喜
(
えんぎ
)
でも無いことを云ふ、と眉を皺むる折も折、
戸外
(
おもて
)
を通る納豆売りの
戦
(
ふる
)
へ声に覚えある奴が、ちェッ忌〻しい草鞋が切れた、と
打独語
(
うちつぶや
)
きて行き過ぐるに女房ます/\気色を
悪
(
あし
)
くし
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
吉太はさも大事そうに、自分の心臓でも
掌
(
てのひら
)
に載せているように、雪焼のした汚らしい手を
戦
(
ふる
)
わしていた。で、私の言ったことなどに耳を傾けていなかった。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
赤児は火のついたように
間断
(
ひっきり
)
なしに泣く。それを聞くと、母親というものは総身の血が
戦
(
ふる
)
えるほどに苦しく思った。で、お作もその身の食物を求めるよりもまず赤児の乳を尋ねまわった。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
また折々子供の時分に聞いた三味線の調子を思い出して、耳に、
戦
(
ふる
)
い付くその怨めしいような歌の声を考えた。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼は、見つかった! と頭の上で言われる時には、身がぶるぶると
戦
(
ふる
)
えるように、ぞっとするのを覚えた。
過ぎた春の記憶
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「あっ、幽霊だ!」と一人は覚えず叫んで、其処に腰を
抜
(
ぬか
)
した。同じくこれを見た一同は満身に水を浴せられたようにぶるぶると手足が
戦
(
ふる
)
えて
竦
(
すく
)
んでしまった。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「私は家へ帰るよ。」と半分周蔵に
気兼
(
きがね
)
をして、——この
儘
(
まま
)
彼の苦しむのを見捨てて帰るのが不人情のようで心に
咎
(
とが
)
めたから——声が
戦
(
ふる
)
えたのである。すると周蔵は私の名を呼んだ。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
寒さに
戦
(
ふる
)
えている、力のない姿が、この衰えた声で目に見るように分った。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
太郎は少し言葉が
戦
(
ふる
)
えて
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
戦
常用漢字
小4
部首:⼽
13画
“戦”を含む語句
戦慄
合戦
戦闘
戦争
戦々兢々
大戦
戦場
挑戦
戦袍
戦人
打戦
戦車
戦死
勝戦
戦線
戦争中
一戦
復讐戦
戦争後
戦巧者
...