愈〻いよ/\)” の例文
都ではかねてより阪東が騒がしかつた上に愈〻いよ/\謀反といふことであるから、容易ならぬ事と公卿くぎやう諸司の詮議に上つたことであらう。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其處そこその翌日あくるひ愈〻いよ/\怠惰屋なまけや弟子入でしいりと、親父おやぢ息子むすこ衣裝みなりこしらへあたま奇麗きれいかつてやつて、ラクダルの莊園しやうゑんへとかけてつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と、思返おもひかへしたものゝ、猶且やはり失望しつばうかれこゝろ愈〻いよ/\つのつて、かれおもはずりやう格子かうしとらへ、力儘ちからまかせに搖動ゆすぶつたが、堅固けんご格子かうしはミチリとのおとぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
未だ売出さない所の新旧約全書が神保町辺の本屋で盛に販売されるので愈〻いよ/\確実になったと云うのだった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
此の急な場合に、あわてるせいか愈〻いよ/\則重の云うことは聞き取りにくゝなるのであったが
彼等が心血を瀝尽れきじんして其の見証の内容を説くや、時に発して煌煌くわうくわうたる日星の大文章をなすことあれど、而かも其の辞愈〻いよ/\しげくして、指す方のいよ/\天上の月を離るゝがごとき観あるは如何にぞや。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
まして事跡から心理を即断して、そして事実を捏造ねつざうし出すに至つては、愈〻いよ/\以て不都合である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
愈〻いよ/\平地へいちはなれて山路やまぢにかゝると、これからがはじまりとつた調子てうし張飛巡査ちやうひじゆんさ何處どこからか煙管きせる煙草入たばこいれしたがマツチがない。關羽くわんうもつない。これを義母おつかさんおもむろたもとから取出とりだして
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『いやわたくし貴方あなた朋友ほういうぢやいです。』と、イワン、デミトリチはまくらうちかほ愈〻いよ/\うづめてふた。『また甚麼どんな貴方あなた盡力じんりよくやうが駄目だめです、もう一ごんだつてわたくしくちひらかせること出來できません。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うぢやいです。貴方あなた愈〻いよ/\ふか考慮かんがへるやうにつたならば、我々われ/\こゝろうごかところの、すべての身外しんぐわい些細さゝいなることにもならぬとおわかりになるときりませう、ひと解悟かいごむかはなければなりません。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)