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思惑
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おもわく
ふりがな文庫
“
思惑
(
おもわく
)” の例文
「ね、お前さん、はつきり申し上げた方が宜くはありませんか。世間樣の
思惑
(
おもわく
)
より、今となつては、死んだ娘の敵を討つ方が大事で」
銭形平次捕物控:272 飛ぶ若衆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
下婢は自分から進んで一字でも多く覚えようと思うような娘ではなかったが、主人の
思惑
(
おもわく
)
を
憚
(
はばか
)
って、申訳ばかりに本の
復習
(
おさらい
)
を始めた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかも娘の
思惑
(
おもわく
)
を知ってか知らないでか、
膝
(
ひざ
)
で前へのり出しながら、見かけによらない
猫撫声
(
ねこなでごえ
)
で、初対面の
挨拶
(
あいさつ
)
をするのでございます。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もしこの事実を示したなら、哲学博士の断案も違ったかも知れぬけれど博士は、別に自分の
思惑
(
おもわく
)
が有る為に大事な論拠を隠しているのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
江戸の町人のあいだには今、熱病のように、土地売買の
思惑
(
おもわく
)
が行われているので、こんな風景は、随所に見られるのであったが
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
自分の腕一つで柳吉を出養生させていればこそ、苦労の
仕甲斐
(
しがい
)
もあるのだと、柳吉の父親の
思惑
(
おもわく
)
をも勘定に入れてかねがね思っていたのだ。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
素姓も知れない山の子とあっては殿の
思惑
(
おもわく
)
もいかがあろうか、これはいっそ知人に預け、その知人の子供として貰い受けるのがよろしかろう
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
話が大変
管々
(
くだくだ
)
しくなって煩わしいが、委曲話すだけは話しませんと自分の
思惑
(
おもわく
)
が通りませんから話して置きますが、ちょっと話しが少し戻って
幕末維新懐古談:55 四頭の狆を製作したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
これだけ、手を尽した猛運動にも
拘
(
かかわ
)
らず、ふたをあけてみると、それは、成親の
思惑
(
おもわく
)
をはるかに通り越したものであった。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
それにだんだん話してみると苦労もしているし、相当にわけも解っているようなんだ。本人の考えも、僕らの
思惑
(
おもわく
)
とちっと違ったところもある。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お待ち下さい、私の方ではたあいのないことなんですが、先方様の
思惑
(
おもわく
)
のところはわかりません、ただちょっとした縁で道づれになって、その道筋の案内を
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なにがさて、気の短い金博士のことであるから、身の危険も、相手方の
思惑
(
おもわく
)
も考えないで、その足でつかつかと某国大使館の玄関から押し入ったものである。
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鬼頭の
思惑
(
おもわく
)
をちよつと気にしたが、それを無視する快感のやうなものが案外強く、黙り込んで下を向いてゐる彼の肩先へ、時々悪戯ッ児のやうに微笑を投げた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
下手な真似して蜻蛉に手出ししてみろ、片っ端から三次が相手だ——退け、俺あ帰る。
思惑
(
おもわく
)
があるんだ。
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
智惠子の方では、信吾の足繁き訪問に就いて、多少村の人達の
思惑
(
おもわく
)
を心配せぬ譯にいかなかつた。狹い村だけに少しの事も意味あり氣に囃し立てるのが常である。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
家庭の料理、実質料理、一元料理、そこにはなんらの
思惑
(
おもわく
)
がはさまれていない。ありのままの料理。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
本当に返す積りであったのか、それとも他に
思惑
(
おもわく
)
があったのか、その辺はよく判りませんが、なにしろ追っかけて行ってみると、男は峠の中途に倒れて苦しんでいる。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
他人の
思惑
(
おもわく
)
など、すこしも気にしないで通してきたサト子だが、秋川だけには悪く思われたくない。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
これらは良い
思惑
(
おもわく
)
であろう。諸君はすべての細部は自分で監督すべきである。水先案内となり船長となり、所有主となり、保険業者となる。売り、買い、帳簿をつける。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
僧侶社会の
思惑
(
おもわく
)
それから私がインドのブダガヤ及びネパール地方を遍歴して来たということを知って居る学者、博士達はいつもよく私に英領インドの事を尋ねたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
立派なのれんを持っていなさるお方——
思惑
(
おもわく
)
の米商いが少しばかり痛手を負うたとて、世帯に何のかかわりがあるではなし——それに、今度の米の値上りでは、これまでに
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
安斉さんの
思惑
(
おもわく
)
がはずれて、曇っていたから、そう明るくない。物が
朦朧
(
もうろう
)
と大きく見える。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だから、あの子の好きにさせてやりたくなったり、そうかと思うと、それが
却
(
かえ
)
って当人の為にならない気がしてみたり。少しは親の
思惑
(
おもわく
)
でも押し切るほどだったらいいんだけど。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
遠い
神仏
(
しんぶつ
)
を信心するでもなければ、近所隣の
思惑
(
おもわく
)
や評判を気にするでもなく、
流行
(
はやり
)
とか
外聞
(
がいぶん
)
とかつき
合
(
あい
)
とか云うことは、一切禁物で、
恃
(
たの
)
む所は自家の頭と腕、目ざすものは金である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「なるほど、
同意語
(
シノニム
)
⁉ そうすると君は、この悲劇を
思惑
(
おもわく
)
に結び付けようとするのかね」と法水はやや皮肉を交えて
呟
(
つぶや
)
いたが、いきなり、いきなり鋭くその言葉を中途で
截
(
た
)
ち切って
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
言葉を交わしたりするのも元はといえば唯ひとつ、彼女もそれと感づかずにはいられないある種の
思惑
(
おもわく
)
からばっかりだといった環境に、一人ぼっちで置かれたに相違あるまいとも考えた。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
だが、それまでしないでも、当時の日本はペリーなどの
思惑
(
おもわく
)
通り動いて行った。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「人の
思惑
(
おもわく
)
が気にかかるのは、まだどこか心に暗いところがあるからじゃ。」
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
家の恥なんだ! 父上の恥なんだ! 石ノ上は、貴様のように世間の
思惑
(
おもわく
)
ばかり気にしていたら何にも出来やしないぞって、よく云うけど、……それにしてもあいつのやることは少し乱暴だ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
ところがそれが全く
思惑
(
おもわく
)
違いとなったので、いつものさっぱりした気性にも似ず、ひどくそれを苦になすって、こちらでは忘れた頃になっても、まだ済まなかった、済まなかったとおっしゃる
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
法螺忠のそんな大業な見得に接しても至極自然な
合槌
(
あいづち
)
を打てる松どもも、また自然そうであればあるだけ心底は不真面目と察せられるのだ。彼らは、何か選挙運動に関する
思惑
(
おもわく
)
でもあるらしかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
K・S氏が今後むす子に対する
思惑
(
おもわく
)
にも影響しまいものでもない。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「駄目、駄目、今日は
思惑
(
おもわく
)
計画、一切手違いというところだ。」
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そして私の
思惑
(
おもわく
)
通りでした。あの場合にはね。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
隱居山右衞門は金持らしく人の
思惑
(
おもわく
)
などを考へずに、自分の言ひたいだけのことを言つて、そのまゝ路地の闇に引返しました。
銭形平次捕物控:133 井戸の茶碗
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ウーム……?」と、やがて万吉が
思惑
(
おもわく
)
に疲れてうなっていた。お綱もそれにつりこまれて、深い息をホッと洩らして
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で、若い武士の
思惑
(
おもわく
)
としては、たかが安手の芸人である。どこかみすぼらしい露路の奥の、
棟割
(
むねわり
)
長屋の一軒へでも、はいって行くものと思っていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
叔父の顔を見ると、正太は相場の
思惑
(
おもわく
)
にすこし手違いを生じたことから、
遣繰
(
やりくり
)
算段して母を迎える
打開話
(
うちあけばなし
)
を始めた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
けれど、単に外見の上から形が少し気に入らないというので、……それは、つまり
思惑
(
おもわく
)
が西洋の人と日本の人と違うのです。というのは、こうなんです。
幕末維新懐古談:26 店初まっての大作をしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「手前たちの
思惑
(
おもわく
)
は
先様
(
さきさま
)
御承知でよ。真鍮と見せて、実は金無垢を持って来たんだ。第一、百万石の殿様が、真鍮の煙管を黙って持っている筈がねえ。」
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その日双方の
思惑
(
おもわく
)
ちがいで、要領を得ずに帰って来た笹村の傍へ来てお銀は心配そうに言い出した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何れ何事かやり出すだらう! それは、その一箇年の間の、四圍の人の渠に對する
思惑
(
おもわく
)
であつた。
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
右近と
肝胆相照
(
かんたんあいて
)
らす間柄になり、喬之助の秘密にも関与して、一
臂
(
ぴ
)
の力を
藉
(
か
)
すことになっているのだが——その晩は別に、そんな
思惑
(
おもわく
)
があって歩いていたわけではない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
芸妓
(
げいしゃ
)
の福松は、人情を立てれば身が立たない
思惑
(
おもわく
)
から、兵馬を促し立てました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
娘はしきりに辞退したが、ほかに
思惑
(
おもわく
)
のあるおきぬ母子は無理に一緒に付いて行って、娘の親にも逢った。母は先年世を去って、当時は父の小左衛門と娘お節の二人暮らしであることも判った。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
明日からの近所の
思惑
(
おもわく
)
も
慮
(
おもんぱか
)
っておかねばならないし、頼みもせぬのに世話を焼きたがるおきみ婆さんの口も
怖
(
こわ
)
いと、生みの母親もかなわぬ気のよさを見せるつもりも少しはあったのだろう——と
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
宗三
思惑
(
おもわく
)
があるのでいつもよりも少し早いのだが、
早速
(
さっそく
)
床につく。
接吻
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
事前には、あれほど手を尽して将監の内応を誘致しておきながら、
思惑
(
おもわく
)
のつぼが
外
(
はず
)
れたとなると、まるで厄介者を遇するような
口吻
(
くちぶり
)
に一変していた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その時になって見ると、郷里の方にいる
旧
(
ふる
)
い
弟子
(
でし
)
たちの
思惑
(
おもわく
)
もしきりに寛斎の心にかかって来た。彼が
一歩
(
ひとあし
)
踏み出したところは、
往来
(
ゆきき
)
するものの多い東海道だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
併
(
しか
)
し平次は何か
思惑
(
おもわく
)
があるのか、別にそれを
悔
(
くや
)
む風もなく、暫らく腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考へて居りました。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“思惑”の意味
《名詞2》
思 惑 【しわく】
(仏教)現象的な物事に迷う貪瞋痴などの煩悩のこと。
(出典:Wiktionary)
思
常用漢字
小2
部首:⼼
9画
惑
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
“思惑”で始まる語句
思惑投機
思惑資金