御在ござい)” の例文
「どうも申訳が御在ございません。どうぞ御勘弁を……。」とばかり前髪から滑り落ちるかんざしもそのままにひたすらひたいを畳へ摺付すりつけていた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
左様さよう御在ございます。身体からだは病後ですけれども、今歳ことしの春大層たいそう御厄介になりましたその時の事はモウ覚えませぬ。元の通り丈夫になりました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
されば家塾かじゆく放任主義はうにんしゆぎおこなふのは畢竟ひつきやう獨立心どくりつしんやしなためであつて、このせまちひさな家塾かじゆく習慣しふくわんをつけてくのは他日たじつおほひなる社會しやくわいひろ世界せかいことけない仕度したく御在ございます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「お話したい事が御在ございますの。わたくし、お父さまよりほかには、お話したいと思いましても、誰もお話する方が御在ませんから。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
成程なるほど是れは結構な原書で御在ございます。迚もこれよん仕舞しまうと云うことは急な事では出来ません。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それをすこ御話おはなしして大方たいはうをしへはんとほつするので御在ございます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「その節はいろいろ御厄介になりました。是非一度御機嫌伺いに上らなくっちゃならないんで御在ございますが、申訳が御在ません。」
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
唯今ただいま御指図おさしずの通り早々帰国しますが、御隠居様に御伝言は御在ございませんか、いずれ帰れば御目おめに掛ります、又何か御品おしながあれば何でももって帰りますといって、ず別れて翌朝よくあさいって見ると
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「そう先廻りをしちゃアずるいよ。先日はどうも、すっかり見せつけられまして。あんなひどい目にった事は御在ございません。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一歩ひとあしちがいで、まア御在ございました。不用心ですからかぎをかけて、お湯へ行こうと思ったんですよ。お君さんも今夜はお早いんですか。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「相変らず何も御在ございません。お目にかけるようなものは。そうそうたしか芳譚ほうたん雑誌がありました。そろっちゃ居りませんが。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一寸ちよつとうかゞひますが、アノ、アノ、田村たむらをんなのおはか御在ございますが、アノ、それはこちらのおてら御在ございませうか。」と道子みちことゞこほちにきいてた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
葬式とむらひをしたのは五ねんばかりまへで、お正月しやうぐわつもまださむ時分じぶんでした。松戸まつど陣前ぢんまへにゐる田村たむらといふ百姓家しやうやひとがお葬式とむらひをしてくれたんで御在ございますが……。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
水上すゐじやうバスへ御乗おのりのおきやくさまはおいそくださいませ。水上すゐじやうバスは言問こととひから柳橋やなぎばし両国橋りやうごくばし浜町河岸はまちやうがしを一しうして時間じかんは一時間じかん料金れうきんにん五十ゑん御在ございます。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「ありがとう御在ございます。お酒はどうも……。」と出方でかたは再びエヤシップを耳にはさんでもじもじしている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その時むこうから歩いて来る断髪洋装の女が、春子の友達と見えて、「今あすこの横町でルンペンが仁義をやっていたわ。銀座といっても広う御在ございます。はははは。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おかみさん。いろいろありがとう御在ございました。何か御用がありましたら、どうぞ葉書でも。」
羊羹 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「先生、とにかく境内を一まわり奥山辺おくやまへんまでお供を致そうじゃ御在ございませんか。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いいえ。自分の家では御在ございませんけれど、方々へ出張いたしますから。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そんなにいろいろ戴いて行かなくってもよう御在ございますよ。この頃の子供は戦争から馴れてしまいましたからね。わたし達の子供時分のように食るものも着るものも、あんまり欲しがりませんからね。」
老人 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ええ。御在ございますよ。本堂の裏です。」
墓畔の梅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
毎度御乗船ありがとう御在ございます。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ありがとう御在ございます。