トップ
>
引抱
>
ひっかか
ふりがな文庫
“
引抱
(
ひっかか
)” の例文
彌作も
魂消
(
たまげ
)
て息を殺していると、𤢖は
鶏舎
(
とや
)
の中から一羽を
握
(
つか
)
み出して、ぎゅうと
頸
(
くび
)
を
捻
(
ねじ
)
って、
引抱
(
ひっかか
)
えて
何処
(
どこ
)
へか行って
了
(
しま
)
ったと云いますよ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と天幕に入ると、提げて出た、卓子を
引抱
(
ひっかか
)
えたようなものではない、千
仭
(
じん
)
の重さに堪えない
体
(
てい
)
に、大革鞄を持った胸が、
吐呼吸
(
といき
)
を浪に
吐
(
つ
)
く。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ヘンデルはいきなりスターの
胴中
(
どうなか
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えると、窓から往来へ放り出そうとした。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
七つの
歳
(
とし
)
であったが、
筋向
(
すじむか
)
いの家に湯に招かれて、秋の夜の八時過ぎ、母より一足さきにその家の戸口を出ると、不意に
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした屈強な男が、
横合
(
よこあい
)
から出てきて私を
引抱
(
ひっかか
)
え、とっとっと走る。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
気にかけないものだというと、
瞽女
(
ごぜ
)
が
背負
(
しょ
)
った三味線箱、たといお前が
藁
(
わら
)
づつみの短刀を、
引抱
(
ひっかか
)
えて
歩行
(
ある
)
いた処で、誰も目をつけはしないもんだが。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
斯
(
こ
)
うして置けば
手懸
(
てがかり
)
も付くまいと、今度は
其
(
その
)
死骸を
引抱
(
ひっかか
)
えて行って、一
町
(
ちょう
)
ばかり先の小川の
畔
(
ほとり
)
へ捨てて来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
黒婆
(
くろばば
)
が家に馬を繋いだ
馬士
(
まご
)
で、その馬士、二人の姿を見ると、
遁
(
に
)
がすなと
突然
(
いきなり
)
、私を小脇に
引抱
(
ひっかか
)
える、残った奴が三人四人で、ええ! という娘を
手取足取
(
てとりあしとり
)
。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、たとえば地蔵様の前に地獄の絵の生首を並べた
状
(
さま
)
に、
頸
(
うなじ
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えた、多津吉の手を、ちょっと
遁
(
に
)
げて、背いて
捻
(
ひね
)
った女の唇から、たらたらと血が
溢
(
こぼ
)
れた。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつ散る
紅
(
くれない
)
、
靡
(
なび
)
いたのは、夫人の
褄
(
つま
)
と軒の
鯛
(
たい
)
で、鯛は
恵比寿
(
えびす
)
が
引抱
(
ひっかか
)
えた処の絵を、色は
褪
(
あ
)
せたが
紺暖簾
(
こんのれん
)
に染めて掛けた、一軒(
御染物処
(
おんそめものどころ
)
)があったのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
源助、宮浜の児を遣ったあとで、
天窓
(
あたま
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えて、こう、風の音を忘れるように
沈
(
じっ
)
と考えると、ひょい、と火を
磨
(
す
)
るばかりに、目に赤く映ったのが、これなんだ。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
膝を
極
(
き
)
めて、——
起身
(
たちみ
)
の娘に肩を貸す、この意気、
紺絣
(
こんがすり
)
も
緋縅
(
ひおどし
)
で、
神
(
しん
)
のごとき名将には、勿体ないようですが、北の
方
(
かた
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えた
勢
(
いきおい
)
は
可
(
よ
)
かった、が、いかに思っても
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
コオトの背中を
引抱
(
ひっかか
)
えて、
身体
(
からだ
)
を
圧
(
おし
)
にグサと刺した。それでも気が上ずったか、頭巾の端を切って、咽喉をかすって、剃刀の
尖
(
さき
)
は、紫の半襟の裏に留まったのである。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(さあ、私に
跟
(
つ
)
いてこちらへ、)と件の
米磨桶
(
こめとぎおけ
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えて
手拭
(
てぬぐい
)
を細い帯に
挟
(
はさ
)
んで立った。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引抱
(
ひっかか
)
えて立った、小脇の奉書包は、重いもののように見えた。宗参の脊が、すっくと伸びると、
熨斗
(
のし
)
の紫の蝶が、急いで包んだ風呂敷のほぐれめに、霧を吸って高く
翻
(
ひるがえ
)
ったのである。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
直
(
じ
)
きそこだ、直きそこだ。)と、いかさま……川端の料理屋ででも飲んでおいでなさったという御様子で、直ぐ、お
引抱
(
ひっかか
)
えになりますとな、可なり持ちおもりがするんでやすから
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かの石の鳥居まで、わが家より赴くには、路のほどいと
遥
(
はるか
)
なりと思いしに、何事ぞ、ただ鼻の先なる。宮の境内も
実
(
まこと
)
に広からず、
引抱
(
ひっかか
)
えて押動かせし
百日紅
(
ひゃくじつこう
)
も、肩より少し上ぞ
梢
(
こずえ
)
なる。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小脇に威勢よく
引抱
(
ひっかか
)
えた
黒塗
(
くろぬり
)
の
飯櫃
(
めしびつ
)
を、客の膝の前へストンと置くと、
一歩
(
ひとあし
)
すさったままで、
突立
(
つった
)
って、
熟
(
じっ
)
と顔を
瞰下
(
みおろ
)
すから、この時も
吃驚
(
びっくり
)
した目を遣ると、両手を引込めた布子の袖を、上下に
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時お妙は、主税の蝙蝠傘を
引抱
(
ひっかか
)
えて
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
抱
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“引”で始まる語句
引
引込
引摺
引返
引張
引掛
引籠
引立
引緊
引出