幻燈げんとう)” の例文
玩具屋おもちゃやの主人は金属製のランプへ黄色いマッチの火をともした。それから幻燈げんとううしろの戸をあけ、そっとそのランプを器械の中へ移した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川のきしすすみました。こうの方のまどを見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
昼過ぎになると和やかな秋の日が、幻燈げんとうの如くあかあかと縁側の障子しょうじに燃えて、室内は大きな雪洞ぼんぼりのように明るかった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ランプの青やかな光のもとでは、人々のこうした生活も、物語か幻燈げんとうの世界でのように美しくなつかしく見えた。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
断片的に、幻燈げんとうのように、記憶が飛び飛びになっているが、それも夢といった方が早い。手をたたいて、子分たちと歌ったり、踊ったりしたようである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
立派な人達がまるで幻燈げんとうの中の人物のやうにあんたの前を飛び過ぎて行くあそこの部屋に坐つてゐる間中、あんたの心にはどんな思ひがいそがしく往來してゐたのぢやらう。
田中たなか正太しようた可愛かわいらしいをぐるぐるとうごかして、幻燈げんとうにしないか、幻燈げんとうに、れのところにもすこしはるし、たりりないのを美登利みどりさんにつてもらつて、ふでやのみせらうではいか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
後の世の幻燈げんとうで、享和きやうほ年間には、江戸の寄席よせ藝人都樂とらくなる者が興行用に使用したことが武江年表に記されてをり、それが近代に及んで、淨瑠璃じやうるりなどをもちひ、劇的な筋を持つた影芝居
いづこにかうちはや幻燈げんとう伴奏あはせ進行曲マアチ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みんなみんな幻燈げんとうの様に通りすぎた昔よ
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川の岸を進みました。向うの方の窓を見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
剣舞の次は幻燈げんとうだった。高座こうざおろした幕の上には、日清戦争にっしんせんそうの光景が、いろいろ映ったり消えたりした。大きな水柱みずばしらを揚げながら、「定遠ていえん」の沈没する所もあった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あゝ面白おもしろくない、おもしろくない、ひとなければ幻燈げんとうをはじめるのもいや伯母おばさん此處こゝうち智惠ちゑいたりませぬか、十六武藏むさしでもなんでもよい、ひまこまると美登利みどりさびしがれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幻燈げんとうのぼかしのごとも
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これは一体何のために誰のつけたしるしであろう? 保吉は幻燈げんとうの中にうつ蒙古もうこ大沙漠だいさばくを思い出した。二すじの線はその大沙漠にもやはり細ぼそとつづいている。………
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先頭の百姓が、そこらの幻燈げんとうのようなけしきを、みんなにあちこち指さして
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
手品てじな剣舞けんぶ幻燈げんとう大神楽だいかぐら——そう云う物ばかりかかっていた寄席は、身動きも出来ないほど大入おおいりだった。二人はしばらく待たされたのち、やっと高座こうざには遠い所へ、窮屈きゅうくつな腰をおろす事が出来た。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
間もなく次の電光は、明るくサッサッとひらめいて、にわ幻燈げんとうのように青くうかび、雨のつぶうつくしい楕円形だえんけいの粒になってちゅうとどまり、そしてガドルフのいとしい花は、まっ白にかっといかって立ちました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈げんとうです。
やまなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黄金キン幻燈げんとう くさの青
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)