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屋根瓦
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やねがわら
ふりがな文庫
“
屋根瓦
(
やねがわら
)” の例文
いま、秋の日が一ぱい金堂や講堂にあたって、
屋根瓦
(
やねがわら
)
の上にも、
丹
(
に
)
の
褪
(
さ
)
めかかった古い円柱にも、松の木の影が鮮やかに映っていた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
西の
屋根瓦
(
やねがわら
)
の並びの上に、ひと幅日没後の青みを置き残しただけで、満天は、
紗
(
しゃ
)
のような黒味の奥に浅い
紺碧
(
こんぺき
)
のいろを
湛
(
たた
)
え、夏の星が
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その隣には寂光院の
屋根瓦
(
やねがわら
)
が同じくこの
蒼穹
(
そうきゅう
)
の一部を横に
劃
(
かく
)
して、何十万枚重なったものか黒々と
鱗
(
うろこ
)
のごとく、暖かき日影を射返している。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お
午
(
ひる
)
がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、
六地蔵
(
ろくじぞう
)
さんのかげにかくれていました。いいお天気で、遠く向うには、お城の
屋根瓦
(
やねがわら
)
が光っています。
ごん狐
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そこの
欞子窓
(
れんじまど
)
の
閾
(
しきい
)
に腰をかけてついこの春の初めまでいた赤城坂の家の
屋根瓦
(
やねがわら
)
をあれかこれかと遠目に探したり、日本橋の方の人家を眺めわたしたりして
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
全色彩の根調となるべき緑と黄とに対照して倉庫の下部に
淡紅色
(
たんこうしょく
)
を施し
屋根瓦
(
やねがわら
)
に濃き藍を点じたるが如き
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
藁店の吉田屋は、おもてにも、瀬戸物一式をならべて売っている古い店だが、それより、諸大名のやしきへ、
屋根瓦
(
やねがわら
)
などを手広く納めているので有名な家である。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
三
重
(
じゅう
)
の
屋根瓦
(
やねがわら
)
から
塔
(
とう
)
の九
輪
(
りん
)
のまっ先へ、
雷獣
(
らいじゅう
)
のごとくスルスルとはいあがった
和田呂宋兵衛
(
わだるそんべえ
)
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
壁土
(
かべつち
)
のようなものがバラバラと落ち、ガラガラと
屋根瓦
(
やねがわら
)
が墜落すると、そのあとから、冷え冷えとする
夜気
(
やき
)
が入ってきた。漢青年はその
孔
(
あな
)
からヒラリと外に飛び出したのだった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は窓を開けて、無風の真夏の夕暮の空の下に、どこまでもつづいて行く東京の漂流物のような
屋根瓦
(
やねがわら
)
の海をながめた。それは平凡で、おそろしく単調な猥雑さにみちた景色だった。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
前に
怪
(
あや
)
しい病気に
罹
(
かか
)
り、そのとき蝶子は「なんちう人やろ」と
怒
(
おこ
)
りながらも、まじないに、
屋根瓦
(
やねがわら
)
にへばりついている
猫
(
ねこ
)
の
糞
(
ふん
)
と
明礬
(
みょうばん
)
を
煎
(
せん
)
じてこっそり飲ませたところ
効目
(
ききめ
)
があったので
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
とりあえず半蔵は身軽な
軽袗
(
かるさん
)
をはいて家の外へ見回りに出た。自分方では
仮葺
(
かりぶ
)
きの
屋根瓦
(
やねがわら
)
を百枚ほども吹き落とされたと言って、それを告げに彼のところへ走り寄るのは隣家伏見屋の年寄役伊之助だ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は石垣の上から遠くに見える
屋根瓦
(
やねがわら
)
の
融
(
と
)
けつくした
霜
(
しも
)
に
濡
(
ぬ
)
れて、朝日にきらつく色を眺めたあと、また
家
(
うち
)
の中へ引き返した。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
駈ける背中を
凩
(
こがらし
)
が吹き
拯
(
すく
)
って、てっぽう
笊
(
ざる
)
の紙屑を、蝶か千鳥かと、
黄昏
(
たそがれ
)
の空へ吹き散らした。やがて高く舞ったのが、どこかの屋敷の
屋根瓦
(
やねがわら
)
へ、気永にヒラ——と白く落ちてくる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし
屋根瓦
(
やねがわら
)
しか見えない。支那流の古い建物で、廻廊のような段々を
藉
(
か
)
りて、余のいる部分に続いているらしく思われる。あれは何だいと聞いて見た。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし、それは彼女の目には見えないで、ただ、
翼
(
つばさ
)
の音にそう感じたのであるが、やがて、もっとはっきりした音が、バサッと、
屋根瓦
(
やねがわら
)
を打つように聞えて、あとはシンとしずかになった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敬太郎
(
けいたろう
)
は三階の
室
(
へや
)
から、窓に入る空と樹と
屋根瓦
(
やねがわら
)
を
眺
(
なが
)
めて、自然を
橙色
(
だいだいいろ
)
に暖ためるおとなしいこの日光が、あたかも自分のために世の中を照らしているような愉快を覚えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
提唱のある場所は、やはり一窓庵から一町も
隔
(
へだた
)
っていた。
蓮池
(
れんち
)
の前を通り越して、それを左へ曲らずに
真直
(
まっすぐ
)
に突き当ると、
屋根瓦
(
やねがわら
)
を
厳
(
いか
)
めしく重ねた高い軒が、松の間に
仰
(
あお
)
がれた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
石を
甃
(
たた
)
んで
庫裡
(
くり
)
に通ずる一筋道の右側は、岡つつじの
生垣
(
いけがき
)
で、垣の
向
(
むこう
)
は墓場であろう。左は本堂だ。
屋根瓦
(
やねがわら
)
が高い所で、
幽
(
かす
)
かに光る。数万の
甍
(
いらか
)
に、数万の月が落ちたようだと
見上
(
みあげ
)
る。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
屋根瓦
(
やねがわら
)
に
徹
(
とお
)
るような
佗
(
わ
)
びしい色をしばらく
眺
(
なが
)
めていた
敬太郎
(
けいたろう
)
は、田口の紹介状を机の上に置いて、出ようか止そうかとちょっと思案したが、早く会って見たいという気が強く起るので
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余は特に余のために造って貰った高さ一尺五寸ほどの偉大な
藁蒲団
(
わらぶとん
)
に佇ずんだ。静かな庭の
寂寞
(
せきばく
)
を破る
鯉
(
こい
)
の水を切る音に佇ずんだ。
朝露
(
あさつゆ
)
に
濡
(
ぬ
)
れた
屋根瓦
(
やねがわら
)
の上を
遠近
(
おちこち
)
と尾を
揺
(
うご
)
かし歩く
鶺鴒
(
せきれい
)
に佇ずんだ。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
根
常用漢字
小3
部首:⽊
10画
瓦
常用漢字
中学
部首:⽡
5画
“屋根”で始まる語句
屋根
屋根裏
屋根葺
屋根板
屋根越
屋根普請
屋根船
屋根廂
屋根部屋
屋根囲