尻持しりもち)” の例文
甲野さんはただああと云ったばかりで、いきなり蝙蝠傘をほうり出すと、その上へどさりと尻持しりもちを突いた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貧乏動びんぼうゆるぎと云ふ胴揺どうゆすりで、ふてくされにぐら/\と拗身すねみに震ふ……はつと思ふと、左の足がもものつけもとから、ぽきりと折れて、ポンと尻持しりもちいたていに、かかとの黒いのを真向まむきに見せて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それもきたから、寝られないまでもとこへはいろうと思って、寝巻に着換きがえて、蚊帳かやくって、赤い毛布けっとねのけて、とんと尻持しりもちいて、仰向あおむけになった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けると、ぶるりとした、貧乏動びんばふゆるぎと胴搖どうゆすりで、ふてくされにぐら/\と拗身すねみふるふ……はつとおもふと、ひだりあしもゝのつけもとから、ぽきりとれて、ポンと尻持しりもちいたてい
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
野だはよっぽど仰天ぎょうてんした者と見えて、わっと言いながら、尻持しりもちをついて、助けてくれと云った。おれは食うために玉子は買ったが、つけるために袂へ入れてる訳ではない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うやつて何時いつにやらうつゝともしに、う、不思議ふしぎな、結構けつこうかほりのするあツたかはななかへ、やはらかにつゝまれて、あしこしかたえりから次第しだいに、天窓あたままで一めんかぶつたから吃驚びツくりいし尻持しりもちいて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およねはあるうらにゐる下女げぢよけるよう出來できたので、井戸流ゐどながしそばいたたらひ傍迄そばまでつてはなしをしたついでに、ながしむかふわたらうとして、あをこけへてゐるれたいたうへ尻持しりもちいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御米はある日裏にいる下女に云いつける用ができたので、井戸流いどながしそばに置いたたらいの傍まで行って話をしたついでに、ながしむこうへ渡ろうとして、青いこけの生えているれた板の上へ尻持しりもちを突いた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人共跣足はだしになって、手桶ておけを一杯ずつ持って、無分別に其所等そこいららして歩いた。門野が隣の梧桐ごとう天辺てっぺんまで水にして御目にかけると云って、手桶の底を振り上げる拍子に、滑って尻持しりもちを突いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)