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小坊主
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こばうず
其時小犬ほどな
鼠色の
小坊主が、ちよこ/\とやつて
来て、
啊呀と
思ふと、
崖から
横に
宙をひよいと、
背後から
婦人の
背中へぴつたり。
かうして
襷掛で
働いてゐる
所を
見ると、
何うしても一
個の
獨立した
庵の
主人らしくはなかつた。
納所とも
小坊主とも
云へた。
坊さんは
思ひ
掛けない
好いお
客と
見たらしく、
俄に
手を
叩いて
小坊主を
呼び
茶と
菓子とを
持つて
来させた。
遠く
離れた
寺からは
住職と
小坊主とが、
褪めた
萠黄の
法被を
着た
供一人連れて
挾箱を
擔がせて
歩いて
來た。
小坊主は
直に
棺桶の
葢をとつて
白い
木綿を
捲くつて
窶れた
頬へ
剃刀を
一寸當てた。
「お
頼み
申します」といふと、
小坊主が出て
取次ぎますから、「
私は
本所相生町二
丁目の
塩原多助の
縁類のものでございますが、まだ
塩原の
墓も知らず、
唯塩原のお
寺は
此方だといふことを
聞伝へて、 ...
キツヽヽといふて
奇声を
放つた、
件の
小坊主は
其まゝ
後飛びに
又宙を
飛んで、
今まで
法衣をかけて
置いた
枝の
尖へ
長い
手で
釣し
下つたと
思ふと、くるりと
釣瓶覆に
上へ
乗つて