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ふてぶて
ふりがな文庫
“
太々
(
ふてぶて
)” の例文
妙に
太々
(
ふてぶて
)
しく、度胸をすえて人生を達観しているようなところもあり、腹の中に何を企らんでいるか見当がつかないような感じであった。
淪落の青春
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
にも拘らず、国府金弥老人は、
太々
(
ふてぶて
)
しい寛大さで、森川森之助を家庭に近づけ、相変らず自分の秘書のように使っておりました。
奇談クラブ〔戦後版〕:08 音盤の詭計
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、静かに、
曲
(
ま
)
がった
烏帽子
(
えぼし
)
の
緒
(
お
)
をむすび直すあいだに、薄い自嘲と度胸をすえた
太々
(
ふてぶて
)
しさとを、どこやらにたたえていた。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おや、
恐
(
こわ
)
い、恐いこッた。へん、」と
太々
(
ふてぶて
)
しい。
血眼
(
ちまなこ
)
でもう
武者振附
(
むしゃぶりつき
)
そうだから、
飽気
(
あっけ
)
に取られていた円輔が割って入った。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兄弟達に食物を
頒
(
わ
)
けるとき、お島だけは傍に突立ったまま、物欲しそうに、黙ってみている様子が
太々
(
ふてぶて
)
しいといって、何もくれなかったりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
そして反動から、より
頑強
(
がんきょう
)
な心を持った、神経の
太々
(
ふてぶて
)
しい、大胆無法な勇気をもった、真の英雄的なものに憧憬している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
義太夫は飽くまで
太々
(
ふてぶて
)
しく徳川時代趣味に執着しているところが、到底
傍
(
そば
)
へも寄りつけないように思えたのであった。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「はッはッはッ」と「右足のない梟」は
太々
(
ふてぶて
)
しく笑って、「
儂
(
わし
)
に聞くことはないでしょう。御覧のとおりですから、勝手にお読みになったがいいでしょう」
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おかみは
行々
(
ゆくゆく
)
彼をかゝり子にする
心算
(
つもり
)
であった。それから自身によく
肖
(
に
)
た
太々
(
ふてぶて
)
しい容子をした
小娘
(
こむすめ
)
のお銀を、おかみは実家近くの
機屋
(
はたや
)
に年季奉公に入れた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
なんてまあ
太々
(
ふてぶて
)
しい爺だったろう! こんな悪党とは夢にも知らず、あんまり様子が可哀そうだったので、金貨一枚投げ出して、この合宿へ入れてやったのが
死の航海
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
哥薩克の拳を怖れぬとは
太々
(
ふてぶて
)
しい野郎だ! 万に一つ俺の配下の哥薩克で、ほんの心持だけでも、これに関係してをると分つたなら……俺はそ奴にどんな刑罰を加へてやつたらよいか
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そこでアンポンタン、大成した彼の舞台を見、舞台の悪党ぶりを見、息をひいて、白い眼をむいて、
顎
(
あご
)
でしゃくった
太々
(
ふてぶて
)
しさを見ると、ウフッという笑いが、表面へ出ずお腹の底の方で笑う。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
太々
(
ふてぶて
)
しいというのか、それとも
羨
(
うらや
)
ましいというのか、
呆
(
あき
)
れ返ったものだ。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その流れのなかに、飛躍もあれば墜落もある。だが、昔の女は何の変化もなく
太々
(
ふてぶて
)
しくそこに坐っている。田部はじいっときんの眼をみつめた。眼をかこむ
小皺
(
こじわ
)
も昔のままだ。輪郭も
崩
(
くず
)
れてはいない。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
今までの少し
太々
(
ふてぶて
)
しい態度は、一瞬にして消えると、五体の骨を抜かれたように、よろりと下っ引の四本の手の中へよろけ込んだのです。
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「やあ、それはわが輩から盗み取った名馬
烏騅
(
うすい
)
。
太々
(
ふてぶて
)
しい盗賊めが。よくも
洒
(
しゃ
)
ア
洒
(
しゃ
)
アと出て来おッたな。覚悟しろ、人民の敵」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はたゞ、生死の覚悟をかためることが大事であり、その一線を越したが最後鼻唄まじりで地獄の道をのし歩く頭ぬけて
太々
(
ふてぶて
)
しい男であつた。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
さんざんに銀子とやり合った果てに、
太々
(
ふてぶて
)
しく席を
蹴立
(
けた
)
てて
起
(
た
)
ち、
段梯子
(
だんばしご
)
をおりる途端に
裾
(
すそ
)
が足に絡み、三段目あたりから転落して、そのまま気絶してしまった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ものを壊すにしても、良心にとがめるといったような
菩提心
(
ぼだいしん
)
を出さないで、こんな壊れ物を扱わせるから壊れるんじゃないの……ぐらいの
太々
(
ふてぶて
)
しさでやってください。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
トひょいと
頭
(
こうべ
)
を下げた、小田原無宿の
太々
(
ふてぶて
)
しさ、昔の
状
(
さま
)
こそしのばるれ。あら、面白の街道や。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悪の性根がいよいよますます、彼に
太々
(
ふてぶて
)
しく
甦
(
よみがえ
)
って来た。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
東作の
太々
(
ふてぶて
)
しさと、その企みの深さに圧倒されて、彦兵衛は燃ゆる眼に宙を見たまま、血の出るほど唇を噛みました。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
憎むべき
太々
(
ふてぶて
)
しさ。そして憎むべき冷酷さ。他人へ報ゆるに残忍無残な冷めたさと、自分勝手があるばかりなのだ。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「エエ、
太々
(
ふてぶて
)
しく
白
(
しら
)
を切る浪人だ。女はあのように怖れ入っているのに、思い寄りがないとは、人をばかにした奴」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何のことだか
解
(
わか
)
らなかった。北山や史朗にきいてみるのも無駄であった。庸三は煙草をふかしながら、しばらく横になって目を
瞑
(
つぶ
)
っていたが、
太々
(
ふてぶて
)
しくも思えて、やがてそこを出て来た。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「行く処が無えというんだよ。」「や、
此奴
(
こいつ
)
太々
(
ふてぶて
)
しい、
乞食
(
こつじき
)
非人の分際で、今の言草は何だ。
夫人
(
おくさま
)
の御恩を忘れおったか、
外道
(
げどう
)
め。」と声を震わし、畳を叩きていきまけば、ニタニタと
北叟笑
(
ほくそえみ
)
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
桝形は
太々
(
ふてぶて
)
しく言い放った。
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それを女の
太々
(
ふてぶて
)
しさと云つてよいのだか、悲しさといふのだか、それまでを、馬鹿々々しいと言ひ切る自信が私にはないので、私は尚さら、せつないのだ。
二十七歳
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「やあ、お耳に
触
(
さわ
)
りましたかの」と、賀相も
太々
(
ふてぶて
)
しいところがある。年からいえば秀吉の親ぐらいな
甲羅
(
こうら
)
も
被
(
かぶ
)
っているので、びくともする様子ではなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一つは、商人の家の空気の中に住むと、六郎は全く始末の悪い存在で、その荒々しい気風と、喧嘩早い
太々
(
ふてぶて
)
しさは、皆んなから反感を持たれるのも無理のないことだったのです。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いや
太々
(
ふてぶて
)
しい野郎だなあ。」
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
太々
(
ふてぶて
)
しい若者
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それを女の
太々
(
ふてぶて
)
しさと云ってよいのだか、悲しさというのだか、それまでを、馬鹿馬鹿しいと言い切る自信が私にはないので、私は尚さら、せつないのだ。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
名だたる三婆娑羅の一人といわれるだけあってさすが
太々
(
ふてぶて
)
しく、一戦も辞せずのつらがまえであり、幕府も大事をとってか、この日には何らの沙汰もしていない。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次もツイ、この女のあまりの
太々
(
ふてぶて
)
しさに、日頃にもない
叱咤
(
しった
)
を浴びせます。
銭形平次捕物控:093 百物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
時代をおれの時代のように振舞ってゆくぞ、と、いつの時にか腹をすえたような
太々
(
ふてぶて
)
しいものがあった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は当然のことを主張してゐるやうに断定的であつたが、女の笑ひ顔は次第に
太々
(
ふてぶて
)
しく落付いてきた。
いづこへ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
七平は
太々
(
ふてぶて
)
しく
唾
(
つば
)
を吐き散らします。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は当然のことを主張しているように断定的であったが、女の笑い顔は次第に
太々
(
ふてぶて
)
しく落付いてきた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
かく申せば、なお
太々
(
ふてぶて
)
しき虚構をと、お憎しみもございましょうが、あのときは、本心、あの通りな善心でありました。まったく悔い悩んでいったことに相違ございません。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そしてなお申すには。——いつかまた、きっと尊氏の命を狙うぞ、目的をとげるまでは、
所望
(
しょもう
)
してやむまいと、
太々
(
ふてぶて
)
しくも言い払い、どこへやら姿をかくし去ってござりまする」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの
太々
(
ふてぶて
)
しい親父の奴が、弱つたやうな様子はしても、どうして弱つてゐるものか! 今に東京へ現れてくる。まさかに女がアトリヱに待ちかまえてゐやうとは夢にも思ふことはあるまい。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
このままいつ死んでもそれでよし、さういふ肚の非常にハッキリした家康で、さういふ
太々
(
ふてぶて
)
しい処世の骨があつたから、野心家のやうにあくせくしないが、底の知れないやうなところがある。
家康
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると、もう度胸をすえて、
太々
(
ふてぶて
)
しくなっていた
強力
(
ごうりき
)
の兵たちが
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私と和解して後は凡そ死を平然と待ちかまへてゐる
太々
(
ふてぶて
)
しい老婆であつた。
石の思ひ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「とんでもねえや」と、船頭もまた
太々
(
ふてぶて
)
しい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このままいつ死んでもそれでよし、そういう
肚
(
はら
)
の非常にハッキリした家康で、そういう
太々
(
ふてぶて
)
しい処世の骨があったから、野心家のようにあくせくしないが、底の知れないようなところがある。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼は
太々
(
ふてぶて
)
しかった。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私と和解して
後
(
のち
)
は凡そ死を平然と待ちかまえている
太々
(
ふてぶて
)
しい老婆であった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
太々
(
ふてぶて
)
しい男……」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
太
常用漢字
小2
部首:⼤
4画
々
3画
“太々”で始まる語句
太々餅
太々神楽