天平てんぴょう)” の例文
天平てんぴょう十五年聖武しょうむ天皇親しく鋳造のみことのりを発し、天平勝宝四年開眼供養かいげんくようの盛儀が行われてより、現在にいたるまでおよそ千二百年になるが
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
すなわち大化の改新においては主として社会的経済的制度の革新として、天武朝より天平てんぴょう時代へかけては精神的文化の力強い創造として。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
天平てんぴょう四年八月、藤原宇合うまかい(不比等の子)が西海道節度使さいかいどうのせつどし(兵馬の政をつかさどる)になって赴任する時、高橋虫麿たかはしのむしまろの詠んだものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
大和の国を訪ねる人たちは、あの三月堂や唐招提寺とうしょうだいじの屋根の美しさに見入るでしょう。天平てんぴょうの国宝として誰も忘れることが出来ないものです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
いずれにしても天平てんぴょうのころからあったということは光明皇后から東大寺へ御寄進なされました御物ぎょぶつを拝見いたしましてもうなずけることでございましょう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしはあなたのお顔を、天平てんぴょう時代の豊頬ほうきょうな、輪廓のただしい美に、近代的知識と、情熱に輝きもえひとみを入れたようだとつねにもうしておりました。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
やがてその中から小肥こぶとりの仏蘭西フランス美人のような、天平てんぴょうの娘子のようにおっとりして雄大な、丸い銅と蛾眉がびを描いてやりたい眼と口とがぽっかりと現れて来る。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
因陀羅いんだらか、梁楷りょうかいか、大分近づいたが、さらにさらに進むべきだ。然らば白鳳はくほうか、天平てんぴょうか、推古すいこか、それそれ。すなわち推古だ。推古仏。法隆寺の壁画。それでよい。
河豚のこと (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
笠井さんより九つも年下のはずなのであるが、苦労し抜いたひとのような落ちつきが、どこかに在る。顔は天平てんぴょう時代のものである。しもぶくれで、眼が細長く、色が白い。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
また、奈良朝以前から見られる唐草からくさ模様は蕨手わらびでに巻曲した線を有するため、天平てんぴょう時代の唐花からはな模様も大体曲線から成立しているため、「いき」とは甚だ縁遠いものである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
黄金産出のことを記録してある最も古いものは『しょく日本紀』であろうと思いますが、それによりますと、聖武しょうむ天皇の天平てんぴょう二十一年の二月、百済くだらの王敬福という者が、今の
これは天平てんぴょう十一年冬十月に光明こうみょう皇后の営まれた維摩講ゆいまこうにおいてうたわれたもので、終日大唐楽だいとうがく高麗楽こまがくのような舶来の大管絃楽の演奏される間にまじって、うたわれたのであった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
白鳳天平てんぴょうに至るまでのその推移のあとをたずねると面白いが此は問題が別になる。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
もう一つ「出雲風土記」にも余戸あまべの説明があります。それには、「神亀しんき四年の編戸へんこによる、天平てんぴょうさと」ということが書いてある。神亀しんきというのは奈良の朝、聖武天皇の御代の初めの年号です。
さいわいにも、私の生れ合せたこの時代位動くものの無数が発達し発明された事はあるまい。天平てんぴょう時代から徳川末期に至る年月において、日本では雲助くもすけ以上に動くものを発明されてはいなかったようである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
東大寺の大仏開眼かいげんの日からかぞえると七年目、天平てんぴょうもすでに末期の宝字三年、鑑真がんじん聖武しょうむ天皇の御冥福めいふくを祈りつつ草創した寺と伝えられる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
おおかた、天平てんぴょうの昔のようにしょう篳篥ひちりきの楽器をならべて、その清女たちが、神楽かぐらの稽古をしているのであろう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聖武天皇の天平てんぴょう十八年正月の日、白雪が積って数寸に至った。左大臣橘諸兄たちばなのもろえが大納言藤原豊成ふじわらのとよなり及び諸王諸臣をて、太上天皇おおきすめらみこと(元正天皇)の御所に参候して雪をはろうた。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
自分の考察は、白鳳はくほう天平てんぴょうの仏菩薩像を眼中に置いて、これらの像の作者がいかなる人体の美を生かせて彼らの「仏」と「菩薩」とを創作したかについての、一つの落想から出発する。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今の工藝界を見る時、いかに方向が区々まちまちであるか。そこにはなんらの統一がない。ある者は天平てんぴょうの模倣に一生を献げる。ある者は伝統の無視に専念かかる。ある者は折衷の工案に腐心する。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大分だいぶ近づいたが、さらにさらに進むべきだ。しからば白鳳はくほう天平てんぴょう推古すいこか。それそれ、すなわち推古だ。推古仏。法隆寺の壁画。それでよい。ふぐの味を絵画彫刻でいうならば、まさにそのあたりだ。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そこに一見学問的にしてしかも無意味な比較研究が起る。白鳳はくほう天平てんぴょうの諸仏に比して、飛鳥仏の稚拙と固定性は美術家のすべてが論ずるところである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
その点、平安朝や天平てんぴょうの文化に育てられて来た公卿たちとは、同じ国土の人間でも、血の鍛錬がちがいます
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人はあの欧州全土に行き渡るおびただしいゴシックの作に悪作を見出そうとしてもただ困却するばかりであろう。あの卓越した天平てんぴょうの布に、俗悪な色や模様を捜そうとするならただ倦怠けんたいを感じるであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
天平てんぴょう六年、海犬養岡麿あまのいぬかいのおかまろが詔にこたえまつった歌である。一首の意は、天皇の御民である私等は、この天地と共に栄ゆる盛大の御世に遭遇そうぐうして、何という甲斐がいのあることであろう、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ちょうど鰹魚節かつおぶしつかい削ってしまうように、与えられた天平てんぴょうの古材も、いつか八寸に縮み、五寸ほどに痩せ、もうわずかに、三寸角ぐらいまで、小さくしてしまっていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやそれよりも愉快なのは、当時(約千二百年前)——聖武天皇の天平てんぴょう勝宝何年のころ、すでに今でいう公務員であったそれらの写経生たちが、ストをやっていた事実である。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町中なら平凡なワンピースやスラックスの色が、何か、天平てんぴょう風俗のや袖のように見えた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)