-
トップ
>
-
大輪
>
-
おほりん
肩を
斜めに
前へ
落すと、
袖の
上へ、
腕が
辷つた、……
月が
投げたるダリヤの
大輪、
白々と、
搖れながら
戲れかゝる、
羽交の
下を、
輕く
手に
受け、
清しい
目を、
熟と
合はせて
甚之助とて
香山家の
次男、すゑなりに
咲く
花いとヾ
大輪にて、
九つなれども
權勢一
家を
凌ぎ、
腕白さ
限りなく、
分別顏の
家扶にさへ
手に
合はず、
佛國に
留學の
兄上御歸朝までは
其の
四ツの
端を
柔かに
結んだ
中から、
大輪の
杜若の
花の
覗くも
風情で、
緋牡丹も、
白百合も、
透きつる
色を
競うて
映る。……
盛花の
籠らしい。いづれ
病院へ
見舞の
品であらう。
其の
惱ましさを、
崖の
瀧のやうな
紫陽花の
青い
叢の
中に
突つ
込むで
身を
冷しつゝ、
且つもの
狂はしく
其の
大輪の
藍を
抱いて、
恰も
我を
離脱せむとする
魂を
引緊むる
思ひをした。
順を
譲つて、
子爵夫人をさきに、
次々に、——
園は
其の
中でいつちあとに
線香を
手向けたが、
手向けながら
殆ど
雪の
室かと
思ふ、
然も
香の
高き、
花輪の、
白薔薇、
白百合の
大輪の
花弁の
透間に