まるで厖大な腕に力をこめて、馬鹿騒ぎに騒ぎ立てながら、水沫を四方八方へ投げ飛ばしているような観があった。難儀な航海だった。
トニオ・クレエゲル (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
旅行後二年半ほどして、厖大な報告書『サガレン島』が出来あがった。いわゆる「冷厳なること重罪裁判所の公判記録のごとき」
チェーホフ序説:――一つの反措定として―― (新字新仮名) / 神西清(著)
お恥かしいが、曹操の堅陣に対し、その厖大な兵力を眼のあたりにしては、まったく手も脚も出ないというのが事実ですから仕方がない。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その厖大な蒐集や展観は松坂屋の服部氏や高島屋の川勝氏等の経済的応援があったためで、今も想い出して感謝している。
四十年の回想:『民藝四十年』を読んで (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
三悪人物語:忍術千一夜 第二話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小山の如く厖大なタウイロ夫人が素晴らしく良い声なので一驚する。その途中、又スコール。母もベルもタウイロも私も海亀も豚もタロ芋も鱶も瓢箪も、みんなびしょ濡れ。
頭ばかり厖大になって、シネマとシャアローとエロチックか、顔を鏡にてらしあわせてとっくりとよくお考えの程を……ところで浅草のシャアローは帽子を振って言いました。
ウェストミンスター寺院 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
随筆銭形平次:15 捕物小説は楽し (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
船旅 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて私が報知新聞社時代、懸賞小説の選をしたことがあったが、三〇〇〇篇という厖大な作品のうち九九%までが、全く同じような筋を持ったものであった。
芸術としての探偵小説 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
厖大な幾層かの建築の中に何万という蒐集品がぎっしりとつまっている。木工、金工、染織、陶器の類、凡てにわたって北方の民族が有つ美への官能の優れたしるしである。
イギリスの紳士は、厖大な親族をもっていて、しかも財産は少ししかないとなると、よくこういうことをするのだ。彼の気質は賑かで、浮き浮きしており、いつもそのときそのときを楽しんでいた。
クリスマス・イーヴ (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那の民藝を解するにはまずその自然の悠大さを考えに浮べねばなりません。御承知のように支那は厖大なる大陸であります。仮りに、山東から足を踏み入れるとしましょう。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旧北条領の全国にわたる厖大な土地が、自分も入れて、誰にどう分け与えられるのか、それの発表がないうちは落ちつき得ない風であり、それの運動や猟官のうごきには
私本太平記:09 建武らくがき帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)