かひ)” の例文
旧字:
天晴あつぱ一芸いちげいのあるかひに、わざもつつまあがなへ! 魔神まじんなぐさたのしますものゝ、美女びじよへてしかるべきなら立処たちどころかへさする。——
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
この火歌ひつゝベアトリーチェの周邊まはりをめぐること三たび、その歌いと聖なりければ我今心に浮べんとすれどもかひなし 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
女弁護士はその弁護を引請ひきうけて、法廷に立つた。そして色々の方面から熱心に喋舌しやべつたかひがあつて、黒人くろんぼうまく無罪になつた。
人間として生れて来たかひに、その歓楽を甞めて見たいやうな気もした。「どうだえ? そしたらお前死ぬかえ? 一緒に?」
モウタアの輪 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
唯それだけの事に失望して了つて、その失望の為に、いやしくも男と生れた一生をなげうたうと云ふのだ。人たるのかひ何処どこに在る、人たる道はどうしたのか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
丹精こめたかひもなく、しろがねの月をつて御足みあしの台とすることがかなひませぬならば、わたくしのはらわたを噛むくちなはかかとの下に置くでござりませう、いとさはに罪を贖ひたまふ、栄光さかえある女王さま
用ゐざるにはやかひもおもひ遣らるゝまでなり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
学問や研究は対社会的には好いかも知れないが、自己といふ上には何のかひもないといふことを考へて来るであらう。
初冬の記事 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「これでまあ大連まで来ただけのかひはあつたといふもんだ。それに値段がやすいや、矢張目が利くと損はしないよ。」
もつとも年寄だから嫌ふ、若いから一概に好くと申す訳には参りませんでございます。いくら此方こつちから好きましても、さきで嫌はれましては、何のかひもございませんわ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「どのくらゐ程度ていどであつたか、それを懺悔ざんげさしてやらう。」とかひない手段しゆだんめぐらしてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こゝろみだれて、よもやにかされ、人間にんげんさい使つかつたので、かひなくかたきけました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでなければ宝石であるかひがないと思つて、他の宝石をも宝石としないやうな態度は私は取らない。
通俗小説 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
ひとり宮のみは騒げるていも無くて、そのすずし眼色まなざしはさしもの金剛石と光を争はんやうに、用意深たしなみふかく、心様こころざまゆかしく振舞へるを、崇拝者は益々よろこびて、我等の慕ひ参らするかひはあるよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)