たすく)” の例文
苦労の中にもたすくる神の結びたまいし縁なれや嬉しきなさけたねを宿して帯の祝い芽出度めでたくびし眉間みけんたちましわなみたちて騒がしき鳥羽とば伏見ふしみの戦争。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また宴席、酒たけなわなるときなどにも、上士がけんを打ち歌舞かぶするは極てまれなれども、下士はおのおの隠し芸なるものを奏してきょうたすくる者多し。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分の足音を聞いただけでさいは飛起きて迎えた。たすくを寝かし着けてそのまま横になって自分の帰宅かえりを待ちあぐんでいたのである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さては我をたすくるならんと心大におちつき、のちは熊とせなかをならべてふししが宿の事をのみおもひて眠気ねむけもつかず、おもひ/\てのちはいつか寝入ねいりたり。
安達君がたすくと書いたら、そんな変な字じゃないと言って、たすくという字を教えた。安達君はその次に試験をされた時、直ぐに書けなかったものだから
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
母親の手足たそくにはならずとも責めて我口だけはとおもうよしをも母に告げて相談をしていると、捨る神あればたすくる神ありで、文三だけは東京とうけいに居る叔父のもとへ引取られる事になり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
たづぬるに武州埼玉郡さいたまごほり幸手宿さつてじゆく豪富がうふの聞え高き穀物こくもつ問屋とんやにて穀屋こくや平兵衞と言者あり家内三十餘人のくらしなるが此平兵衞は正直しやうぢき律儀りちぎ生質うまれつきにて情深なさけぶかき者なれば人をあはれたすくることの多きゆゑ人みな其徳そのとく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
妻のお政はすやすやと寝入り、そのそば二歳ふたつになるたすくがその顔を小枕こまくらに押着けて愛らしい手を母のあごの下に遠慮なく突込んでいる。お政の顔色の悪さ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いのちのかぎりなれば夫婦ふうふこゑをあげほうい/\と哭叫なきさけべども、往来ゆきゝの人もなく人家じんかにもとほければたすくる人なく、手足こゞへ枯木かれきのごとく暴風ばうふう吹僵ふきたふされ、夫婦ふうふかしらならべて雪中にたふしゝけり。
「イイえどう致しまして」とお政は言ったぎり、伏目ふしめになってたすくの頭をでている。母はちょっと助を見たが、お世辞にも孫の気嫌を取ってみる母では無さそうで、実はそうで無い。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
たすくる人はなくとも雪さへきえなば木根きのね岩角いはかどとりつきてなりと宿へかへらんと、雪のきゆるをのみまちわび幾日といふ日さへわすれ虚々うか/\くらししが、熊は飼犬かひいぬのやうになりてはじめて人間のたふとき事を